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日記~自由研究、生殺与奪
朝起きてアレルギーの薬をのむ。
これがあるから最近は使命感によって決まった時間に起きられている。
自分がこんなに朝起きられるとは夢にも思っていなかったが、年齢的なこともあるのかも。
いやだな、とか面倒だな、とか考える前に
半分寝たまま資源ごみをまとめて出しに行く。寒い。
パジャマの上にズボンと上着を着こんでゴミ出しができる季節がやってきた。
帰ってきて手を洗い、歯磨きをする。
歯磨きしながらベランダへ出て、生殺与奪の仕事。
我が家はマンションの5階だが、最近アゲハの訪問がすこぶる多く、
2本あるレモンの木が大繁盛である。
といっても不思議とひらひら飛んでくるアゲハの姿はまったく見たことがない。
私はアゲハが苦手(というか蝶・蛾・翅の黒いセミや黒い翅をみせつけてくるタイプのカマキリがおそろしい)なので
そのステルス感はありがたいのだが、
確実にそこにいたという証拠(新しい命)は残されている。
シーズンのいちばんはじめに孵化したおちび(5㎜くらい)を
見つけたときは、まだセンスオブワンダー的な気持ちが勝っていたので
こんな5階の鉢植えをよくみつけたなぁ!すごいなぁ!と感動した。
しかも蝶になる前のおちびは健気な感じでかわいく、
もしかして蛹になって羽化するまで見届けたら
長年のちょうちょ恐怖症も克服できるのでは…!?なんて思って
大切なレモンの葉っぱをわけてやるほどであった。
(そういえば小学校の授業で蚕を羽化させたがまったく克服できなかった)
ところが、はじめは鳥のフンみたいな黒っぽいイガイガ姿だったのが
レモンの葉の色にそっくりな大迫力の姿になるまで見届け、
そろそろ蛹になるかな?と期待と嫌悪感の入り混じった心境で見守るも、
気づいたらいなくなっていた。
おそらくめざとい鳥によりサークルオブライフに組み込まれたか、
台風でどこかに飛んで行ってしまった。いのち。
その後もぽつぽつ鳥フンレベルをみかけたので
気分によって放っておいたりしたが、こちらが介入しなくても
案外特大まで進化できるものは少なく、自然の厳しさを思った。
そんなふうに夏休みの自由研究的な面白がり方ができたのも
はじめのうちだけだった。
なんだかんだいっても都内のマンションの5階だし、
レモンも大して大きい木でもないし。
ちょこっと葉が虫食いになるくらいでしょうから、わけてさしあげましょう、どうだ、明くなつたろう、わっはっは。
……甘かった。繁殖のピークというものを舐めていた。
突如として5匹くらいが現れ、レモンの新芽が丸裸にされていた日から
毎日殺生を余儀なくされることになる。
朝、集団を排除したはずなのに、
一晩たつと必ずと言っていいほど3~5匹の新しい命が
葉をむさぼっている。いつ…?どこに卵を……???
不思議なことに集団はサイズ感もまちまち。
(単純に見落とし成長組が多いだけ)
鳥フンから極小→小→中→大→特大といったように
まるでポケモン(やったことない)のように進化していくが
たとえば今朝のメンバーは極小、極小、極小、小、中であった。
涼しくて葉の裏もじっくり見られたから、卵も見つけて退場してもらった。
今朝くらいの顔ぶれなら慣れてきたが、
進化の最終レベル、特大の迫力といったら。
ちょっとした哺乳類をしとめるくらいの”殺し”の手ごたえだ。
大きさによって命の重さが変わらないのはまったくその通りの大前提だが、
しとめる側としては単純にやはり手に残る感触が変わってくるので
自分が生きるため以外の無益な殺生はしたくないと感じる。
(しかもまた超個人的な差別感覚でしかないが、特大まで育った猛者たちは昆虫のような固い衣の命よりもむにむにすべすべしていて、どうにも同族殺し感が強めなこともためらう要因な気がしている)
日によってはシャベルでアーッてするのに耐えられなくて
ビニル袋にとじこめてごみの日に出しちゃうこともあるんだが、
そのほうがよほど残酷だ…ひと思いにやれよ!!!!!いくじなし!!!
そして銃はよくない。手ごたえなく命をうばえるもの。
刀で命のやりとりをしていた侍の覚悟のキマり方よ…
(コテンラジオの切腹回を思い出しつつ)
そんな、先住民や動物は必要のない狩りをしない、
やるなら一撃で致命傷を与えることが礼儀だ、みたいなことを
思わぬかたちで体感しつつも、誇張でなくレモンが丸裸になるし
アゲハ量産所みたいになるのは本当におそろしいので、
今日もせっせと殺生。