新規設立法人 特定非営利活動法人Aimowlガーデンの施設外就労予定となるAimowlオーキッドガーデン潜入してみた
北九州市の所轄するNPO法人は約300件程度。
近年はそのうち年間約10数件が解散し、同数程度が新規に設立されています。
今回は、つい先日設立したばかりの特定非営利活動法人Aimowl(アイモール)ガーデンの施設外就労先となるAimowlオーキッドガーデン内覧会に招待され見学に行ってきましたので、その様子をご報告します。
特定非営利活動法人Aimowlガーデン
特定非営利活動法人Aimowlガーデンは平たく言えば就労継続支援B型事業所で、
障害や難病のある人が利用できる障害福祉サービスのひとつです。
この度、NPO法人の設立とともに小倉南区石田南に事務所と施設を構え、サービスの提供を開始していきます。
胡蝶蘭の栽培を軸に提供する作業の内容は多様。
配置転換によるリフレッシュを交えながら、利用者の個性や障害特性に応じて無理なく続けられる就労環境を提供していきたいとのことです。
Aimowlガーデンの提起している社会課題は大きく2つあります。
Aimowlガーデンの取り組む社会課題①
1つは、利用者側の視点から。
多くの障害者が就労して経済的自立を望んでいる一方で、
障害者に支払われる賃金が低く抑えられていることや
B型事業所と一般企業との就労環境が大きく異なるため就労が続かなくなること、
またB型事業所での就労が単純作業でスキルが身に付かないことなどが挙げられます。
障害者、特に精神や知的に困難のある方の就労自立は
非常に困難な道のりであることは想像に難くありません。
Aimowlガーデンの取り組む社会課題②
もう1つは、一般企業側の視点から。
従業員が一定数以上の規模の事業主は、
従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を
「法定雇用率」以上にする義務があります。
雇用義務を履行しない事業主に対しては、
ハローワークから行政指導が行われるほか、
障害者雇用納付金の納付、
行く行くはペナルティとして企業名が公表される可能性もあり、
少なからずダメージを受けます。
ある調査によると、約半数の企業が法定雇用率を満たせていない実態があるとのことです。
これらの課題を解決するために
Aimowlガーデンでは、
・販売価格の高い植物の栽培を通じて高賃金の得られるスキルを取得し、将来的に農園を運営しているような一般企業等への就労の足掛かりとする
・付加価値の高い胡蝶蘭を栽培・販売することで、障害者の処遇の向上を図る
・一般企業からの出向を受け入れることで一般企業の法定雇用率を高める
などを実施することを計画しています。
事業所の様子
さて、やっと本題。
出来たばかりの事業所(ビニールハウス農園)にお邪魔してきました。
最新のスマートアグリが導入された農園は、少々の台風ではビクともしそうにない頑強な造り。
室内には、温度、湿度、二酸化炭素の計測器があり、年間を通じて24時間自動で適切な環境になるよう管理されています。
既に多数の胡蝶蘭の苗が台湾から輸入され運び込まれ、開所準備が進められていきます。
これから順次苗がこの農園を埋めていき、将来的には年間約1万本の出荷を予定しているとのことです。
内覧会には他施設の事業者や特別支援学校の方などが続々と訪れていました。
障害者の育てた胡蝶蘭
胡蝶蘭の栽培は水やりだけでなく、
その生育段階に応じて、
美しく見える角度に曲げて支柱に固定する作業、
出荷に向けて花の向きを揃える作業、
3本立、5本立の鉢に仕立てる作業など、
細分化され、プロの指導のもと利用者が行うことになります。
農園は建設されたばかりということもあり、非常に衛生的。
花や緑に囲まれた就労環境というのは精神衛生的にも良いのではないか
(というより自分もたまにはそういうところで働きたい)
と感じました。
さらに、語弊があるかも分かりませんが、
一般に市場に出回っている胡蝶蘭と違い、
Aimowlの胡蝶蘭には、『障害者が育てた』というストーリー(付加価値)が付きます。
それは値段に反映されるかもしれませんし、
消費者の社会貢献意欲をくすぐって購買を後押しするかもしれません。
傷があって通常廃棄されるような花も、
それが逆に価値と見なされ、寛容に受け入れられるかもしれません。
多くの副次的な効果が隠されており、また今後の発展が楽しみなモデルだと思いました。
さいごに
Aimowlガーデンの取り組みそのものは、
マネしようと思って出来るものではありませんが、
各主体の特徴や課題を上手に組み合わせ、win-winの関係性を構築しています。
誰かが損を我慢するのではなく、それぞれの利益(効用)を伸ばしている
そういう意味で、近年求められている協働に近しい仕組みに感じましたので
今回ご紹介いたしました。
近いうちに市内のどこかの胡蝶蘭はこの農園で育った花となるかもしれませんね。
ではまた。
あんbe