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父のグランドセイコーのこと4

メダリオンの取り付けとメタルバンドの溶接を引き受けてくれた時計店へ送付してから2週間ほど経ったころに、作業が完了した旨の連絡があった。

数日後に荷物が届き、開封してみると、すっかり元通りになった父の時計が。
裏蓋のメダリオンがしっかりと取り付けてあり、メタルバンドもしっかりと繋がっている。

before
after

思えば僕は、壊れた父のグランドセイコーした見たことなかった。そんなことないのかもしれないが記憶にない。

改めてまじまじと眺めてみると、装飾品ではなく時間を知るための道具として無駄を省いたようなとてもシンプルなデザインで、やはりかっこいい。細かいキズも父が使い込んできた証拠なので、魅力的に見えた。

自分が普段使っている腕時計にキズが入ってしまったとしたら、何十年かするとそれもかっこよく見えるのだろうと思うと少し気が楽になる。
とはいえキズが入ったその瞬間はとんでもなく落ち込むだろうし、これからもキズが入らないように気をつけながら使うのだろうけれど。
キズも歴史だ! アジのうちだ! なんて気にせず雑に使う日は来ないだろう。

父に渡す前に2度ほど自分の腕につけて買い物に行った。とてもシンプルな見た目なので誰も気に留めることはないだろうけれど、いい時計をしているというのはそれだけで自分の気持ちが高揚する。

妻と一緒に僕の実家へ行き、父へ渡しに行った。
あまり大きく感情を出すような人じゃないけれど、多分すごく喜んでくれたに違いない。

数日後に母からLINEで、ほぼ毎日つけて喜んでいると連絡がきた。

目に見えて親孝行できたのは嬉しい。
自分が腕時計をするようになって、ずっと気にかかっていたことなので、本当にやってよかった。

2022年にやってよかったことの筆頭は、父のグランドセイコーを直したことだ。

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使用して二週間ほどで止まってしまった。
再び父から預かり、セイコーお客様相談室へ送付した。

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