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倶楽部サピオセクシャル日記59:知性は癒やしか刃か? 今夜はサピオの表裏を考えてみる

年末年始を経て、体重が増えた。もともと、変動幅を抑えるのは得意なのだが、油断大敵である。対策として、先週から最低5キロのラン&ウォークを自らに課している。

極寒の中で歩くと、最初は死にそうに気分が落ちるが、汗をかき始めると上がってくる。人体におけるこの仕組みを利用して自らを癒やすのは知性的な活動と言えるかもしれない。肥満を恐れるおっさんの散歩をそんな風に美しく修飾してみたりする今日この頃。

◆刃(やいば)として振りかざす人が跳梁跋扈

もともとこのテーマを設定したのは昨今、跳梁跋扈する「知識人」にいかがわしさを感じたのがきっかけだ。読み手の感情を意に介さず――というよりも、意図的に悪感情をあおって注目を集めようとする人がSNSでもてはやされ、一種のステータスを築くケースがしばしば見られる。

知性により他者を傷つける行為を一種のショーとして行うことが、SNS全盛の世界では経済的な利益や自己承認欲求の充足につながる。それゆえ知性を刃として用いる人が増えているのであろう。

Clubhouseという閉ざされた世界においても、同様の傾向が強い。言葉のみで自己表現できる場だけに、「攻撃性の強い小利口な人=知性のある人」という価値観がはびこりやすいとも考えられる。

そういった現状をどうとらえればよいのか、ルームを訪れる方たちと語ってみたかったのだが、今回も8時間強のロングランとなる中、さまざまな知見に触れることができた。

◆温かい知性の象徴 ミセス・ワムジェンス

自身の性癖を開陳するなら、ぼく自身には知性を得々と振りかざす鼻持ちならない面がある。時に人を傷つけるのではないか、と気にして生きている。若いころは気にすることすらできなかったので、多少は進歩したのだろう。

相方のつよぽんさんはそういった攻撃につながる知性を「冷たい知性」と呼んだ。一方、人の感情や考えを理解する能力を「温かい知性」と呼び、その象徴として『ミセス・ワムジェンス』なるキャラクターを紹介してくれた。

いつも穏やかで落ち着いており、自分を客観視できるため感情的になりにくい人。ジェンダーフリーに抵触するリスクを冒しつつ解釈するなら、彼女は母性の象徴といえるかもしれない。

ちなみに、ワムジェンスは「warm intelligence」の略語だという。とても素晴らしいので、商標登録をすすめたい。ミセス・ワムジェンス語録をKindleで出版したら売れそうだ。

◆フラットなオランダと低迷する日本

今回のルームでは……というか、今回のルームでも、なのだが、興味深い脱線がいくつかあった。その一つがオランダの国民性に関する情報だ。私たち日本人はよく「欧米人」をひとくくりにして異文化を語るが、欧州各国やアメリカにはそれぞれ個別の文化や国民性がある。

オランダ在住のスピーカーによると、オランダ人は非常に合理性を重視し、論において上下関係を設けないという。その国民性はイギリス人やアメリカ人から見ても驚くべきものなのだとか。上司が間違っていたら部下が指摘するのは当然。会議が予定より長引くことは悪とされる。礼儀や長時間労働を重んじる我々とは正反対だ。

少し調べてみたところ、オランダの国民一人あたりの名目GDPは5万8000ドル程度、日本は3万9000ドル程度である。かの国の2/3程度しか我々は稼げていないことになる。オランダでは週休3日が定着しつつあるらしく、時間あたりの生産性ではまったくかなわない。

彼らが効率の追求を絶対的な是とできるのは、もともと貿易や商業により栄えた国であり、プラグマティズム――すなわち利の追求を共通の価値基準としているためらしい。この話はとても面白く、学ぶべきことが多かった。

◆まとめ

万人に共通する利は「幸福」という言葉に置き換え可能だ。個々が知性を持って幸福を追求するなら、冷たい争いではなく温かい関係性の醸成を選択する方が賢明である。これは道徳の話ではなく、ゲーム理論においても立証されている定理なのだが、なかなか共有されないのはなぜなのか。

温かい知性とは結局、利を効率よく得るために己の感情をコントロールして合理的に行動できる能力なのかもしれない。

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