パフォーマンスいわれ17 サディスティクサーカス10<春>
2014年4月、春サディスカ。会場は前年度大好評だった大田区のスーパー銭湯。そして春サーカスの和気あいあい感に楽しみを感じ、予約開始と共に予約は殺到した。春バージョンは80名程しか入れない。
私は昨年同様フロアーショーバージョンの切腹を考えた。酒を呑み、肴をつまんでいる宴会場、しゃちほこばったショーでは気分も乗らない(腹切りシーンはしっかりと見せますけどね)。フロアーショーバージョンの時は、まず選曲から入る。どんな曲で楽しんでもらうか。温泉場といえばやはり「和」であり「演歌」である。
ちょっと話はずれるが、ストリップ劇場で選曲された演歌(または楽曲)はヒットする、というジンクスが1980年代頃まであった。昔の踊り子さんは、シングル盤のレコードを持ち歩き、小屋で編集(曲繋ぎ)をしていた。テレビ番組やラジオなどで聞いた気にいった曲を即座に使用していたからだ。そしてこれは、当時の状況も噛み合ってのこと。1970年代後半から1980年代中期までは「マナ板本番ショー」が全盛期であった。マナ板に上がっているお客人はともかく、男性客が野郎の本番している姿など見たくない。その間の曲は万人が聴きやすい曲を選曲していた。演歌や歌謡曲がここで選ばれるわけだ(外人の踊り子は当時のヒットディスコ曲である)。客席では鼻歌なんかも出たりして。
私はSMショーだったので演歌を選曲することはなかったが、聞いていて「いいなー、和むなぁ」と感じることが度々あった。演歌に対してこんなにじっくり「詞」と「曲」を聴いていなかった。1日4回10日間で40回その曲を聴くわけだ。そしてこのストリップ劇場で聴いた演歌で、しみじみ「演歌」という楽曲を、初めて「好き」と思ったのである。いや、もしかして、心が荒んでいたから「演歌」がしみいったのかもしれない。どちらもアリかな。
話を戻そう。何かの機会で演歌を選曲したいと考えていたので、こういった企画にはうってつけである。前回は堀内孝雄「恋唄綴り」であったが、今回は「夜桜お七」を踊りの曲として選んだ。 ・夜桜お七 ・EL TANGO DE ROXANNE ・愛の讃歌 この3曲の構成である。
和洋折衷なのは飽きさせないためである。ショー時間は15分。観たい人にはあっという間の時間だが、興味ない人には長い時間。ましてや酒が入っているので時間感覚が伸びる。聴いたことがある曲やテンポもそれぞれに違う曲で「曲」を聴いてもらう、という意識もある。そしてこういった選曲はストリップ劇場で学んだことだ。
それまで和んだ雰囲気が一変する時が腹切りシーン。曲は「愛の讃歌」である。激しいシーンであるが、曲は救いのある曲をあえて選んでいる。「死」の行為には救いがないとショーにはならない。いよいよ、と、短刀を取り出すと客席の空気が変わる。にこやかなお客人の顔がキリッと引き締まる。ご来場のお客様は、ほぼ常連様なので、私が切腹することは十分承知のはずだが、皆、怖いもの見たさのような顔つきになる(こういった場では照明もそれ程仕込んでないので、客席がよく見えるのだ)。
いやー、この春も楽しんだ!やりきった!春サディスカは皆が和気あいあいなのが本当に楽しい。これこそ真のショータイムだと思う。そしてここではフロアーショー形式で演じているため、記録をほとんど取っていない。写真も文章も少ないのはこのためだ。悪しからず。