不安定な柱、強固な鎖
ー君はいつも、寂しそうに笑うね。
そう言う彼の顔もどこか寂しげで、わたしの頬を撫でる彼の手もどこか冷たくて。
ーどうして…そんなに悲しげな顔をするの?
ーああ、わたしがそうさせてるんだ。
そう気づいたとき、わたしは逃げ出したくなった。でも逃げられない。わたしがどんなに離れたいと言っても、彼は決して許してくれないだろう。
ー大丈夫。全部、吐き出してごらん。
そんな言葉をかけて、わたしをそっと抱き寄せる。
わかってる。彼は優しさのつもりで言っているってこと。
でもわたしには、その言葉が怖くて怖くてたまらない。さっきまで悲しげだった彼の顔が、ひどく恐ろしいものに見えてきてしまう。
…はずなのに、なんで。
…なんでわたしは…少しほっとしているんだろう?
…ほら、離れた足をまた彼に引き寄せて。
ー彼が愛おしい。
ーだって、こんなにもわたしを大切にしてくれている。
わたしはぎゅっ、と彼の胸に抱きついた。
鎖に繋がれている彼の言葉が、彼の体温が、わたしという存在を薄めていく。
最後までお読みいただきありがとうございます✽ふと思い出したときにまた立ち寄っていただけるとうれしいです。