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「みずのした」中川正子さん

全力の白鳥を見たことがある。(略)
壁に突き当たっては、またターン。
前傾姿勢の上半身はアスリートのよう。
あまりの勢いに、水面にちょっと脚が浮き出たりしていた。(略)
ふと、私の目には、その豪速で動きまくる白鳥の姿が、自分のように見えた。(略)
水面下の脚の動きは、想像以上のバタ足だろう。
なぜ、そんなにがむしゃらに進む必要がある?
横で笑いながら、観光客が動画を撮っている。
きっとね、そうせずにはいられないの、彼女は。
わたしも似た体質だから、よくわかるよ。

「みずのした」中川正子著

以前から中川正子さんが綴る言葉が好きで
Voicyを聴いたりInstagramを繰り返し読んでいたり
そんな中川正子さんが初のエッセイ集を出され
さらに直接お会い出来るとは。
トークショーにお伺いしてきました。

正子さんから直接紡がれる言葉一つ一つが
やさしく温かくでも力強く
こんなにも心が動き
自分に置き換えられて
自分で自分を感謝したくなるのはなんでだろう。
それを直接、伺いたかったんです。

正子さんはご自身のことを

 
「繊細な冒険者」であると。

私はこうであると頑固でありたくない。
好奇心を持って
自分がなぜそう思ったか。
自分で自分を徹底的に見たい。
そして
「自分のことを決めつけない」で正直でいたい。


だって
なるようにしかならないのだから。

かさぶたを剥がすように
「自分でなかったことにしていたことが
今の自分にどういう意味を与えているか」
一つひとつ向き合った

と正子さんがご自身のこれまでの生き方を
一つ一つ繊細に丁寧に大切に向き合われたことを
話してくださいました。

私たちにそっと寄り添いながら
一緒に頑張ろうってエールを送ってくださるような。そんな優しさと強さをいただく所以なのだなと
心が揺さぶられました。


自分に向き合うとは覚悟がいること。
そして私自身日々時間とパワーを掛けている。

良かったことには向き合えるけれど
自分の見たくない部分
その部分をなかったことにするのではなく
自分で自分を肯定していくこと

それがこれからの生き方に繋がり
これまでの生き方と、今にも繋がり

そしてそんなあり方がまだ誰かの
勇気や安心にも繋がる。

改めて自分自身のあり方に
向き合うきっかけとなりました。

過去に綴った自身の言葉を、50歳になったいま
改めて振り返ってみる。
甘くて、情けなくて、狂おしく、そして
純粋な記憶の連続。
みずのしたで必死にもがく白鳥に苦笑いしながら
小さな声で「がんばれ」と応援するように、
脇目も振らず走り抜けた自分に
そっと言葉を投げ返してみよう。

「みずのした」中川正子著

この表紙の写真
そして言葉一つ一つと

正子さんのこれまでが
まるで自分に語りかけられているようで読むたびに涙が出ます。

ママになる前のこと
ママになった時のこと
仕事をしている自分
一人の人間としての自分
これからのことを思う自分。

がむしゃらだけど頑張ってきたね。
頑張ってるね。そしてこれからも。

自分に置き換えて
どんな自分も愛おしく思うことができる
本当に出会えて良かった一冊です。

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