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カヌレドボルドー と カヌレのメモリー
ティラミス、
クレームブリュレ、
マリトッツォ・・・
入れ替わりの激しい日本の洋菓子界において、
一度ならぬ二度までもブームを起こした魔性のお菓子。
それがカヌレ・ド・ボルドー
カヌレとは「溝のある」という意味。カヌレ最大の特徴であるその可愛らしい形を表している。
ボルドーはフランスのワインの産地。ワインのオリ(沈殿物)を取るためには沢山の卵白が必要で、余った卵黄を使ってカヌレが作られたそうな。
ちなみにカヌレは修道院で発明されたと言われている。修道院でワインを醸造するのはフランスでは普通のことらしい。日本でも寺で日本酒を仕込んだら人気がでるかもしれない(酒税法違反?)
そんなカヌレ、日本での1度目のブームは1990年代。
街の洋菓子店でこぞってカヌレが作られた。
空前の大ブームで、私が暮らす東北の片田舎でもカヌレが売られていたぐらいだ。
当時、まだ子どもだった私も母にねだって買ってもらった。実際食べてみると思ったような味ではなかったので、ものすごくショックだったのを覚えている。笑
ネチっとしていて、かたいし、洋酒がきいていて苦味もある。思ってたんとちゃう!!!
私とカヌレとの出会いは、文字通りほろ苦いものだった。
しかし、その30年後にまたカヌレのブームがやってくるとは誰が予測しただろう。
巷のお菓子屋には必ずと言っていいほどカヌレが並び、ミニサイズや、フレーバーのアレンジ、カヌレをイメージしたコンビニスナックまで発売された。
そして私は知ってしまったのだ。
カヌレは家庭でも意外と簡単に作れるらしい、ということを…!!!
今こそ、あの苦い思い出を晴らす時が来た!
カヌレ作りの最大のハードルは型の準備にある。
本来ならば銅製の型が熱伝導がよく最適なのだが、如何せん値が張る。シリコン製は安価だけどカリッと焼けないらしい。
悩んで買ったのはステンレス製だ。
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洗いにくいのだ。
材料は、牛乳、生クリーム、バター、砂糖、小麦粉。お菓子作りではお馴染みのラインナップだ。そして忘れていけないのは香り付けのラム酒とバニラビーンズ。
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作り方は詳しくは書かないけれど、牛乳と生クリームは温め、バターは溶かし、材料を混ぜていくだけ。
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え、これだけ?ってくらい簡単。シスターが本業の傍らで作るぐらいだから、単純なレシピなのだろう。
しかし、問題が発生する。
レシピには「型にバターを塗ってさらにスプレーオイルをする」となっているのに、直前になってスプレーオイルを買い忘れたことに気付く。
だめかな・・・と思いつつ、バターをこれでもかと塗ってみた。
オーブンは240℃
熱い。
家のオーブンをここまで高温にしたのは初めてかもしれない。がんばれ、オーブンちゃん。
最初の15分ほどでしっかり煮立たせ、その後は温度を下げて焼き固める。そうすることで生地の中にすが立って、独特のもちもちした食感を生む。
プリンや茶碗蒸しを作るとき入ってしまう嫌われ者の気泡=す。だけどカヌレを作るときは無くてなはならない存在なのだ。
待つこと40分、焼き上がり。
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やけどしないようにミトンの内側に手袋をして取り出す。
型を静かにひっくり返すと生地が出て…こない〜!
やっぱりくっついてる!泣
スプレーオイルしないとダメなんだなぁ。
※ちなみに本来のカヌレは蜜蝋を塗るそうですよ。
型をブンブン振っても出てこないので、仕方なく竹串で周りをあたって取り出した。難産。少し凹んだりしたけど、まあ、初めてならこんなもんでしょ。
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焼きたてのカヌレ。ドキドキしながら食べてみると、周りはカリッとして、中はもちもち。
お、美味ちい!
この焼きたてのカリッと感と控えめな甘さは手作りならでは。ほんとに美味しい。
初期投資はかかるけど、こんなに簡単にならもっと作りたくなる。日持ちするからちょっとしたお土産にももってこいだ。
なにより、カヌレを美味しいと思える日がくるとはね。ふふふ。
あの頃の自分に言ってやりたい。
「カヌレは大人の味なんだよ。お前には10年早い!」
私のカヌレのメモリー(記憶)は塗り替えられたのだった。
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