見出し画像

2024Novemberのhighlights

Nature Reviews Rheumatology (  https://www.nature.com/nrrheum/ )
2024, November issue, Research highlights
はい。流れていく情報を少しでも留めておきたいと足掻いている私の精一杯の記録です。
(いつまで続くかはわからない。でも週1で続けているので順調順調!と自分で自分を褒めるスタイル。)

普段からここは定期的に(大体?)チェックします。
全文読むかはさておき(全部は読まない)、タイトルと原著論文のテーマ・雰囲気?はチェックします。なんとなくトレンドをキャッチできるような気になるので(ほんとなんとなく、だ)。

少しでも自分の幅を広げるために簡単に今のトピックを説明できるくらいになっていたい、という個人なりの目標で書きますので悪しからず。
ちなみにpublish dateではなくて、発刊された雑誌の号を参考に分けています。気になるものや私の文章の意味がわからない場合(←ゴメンなさいね。私が完全に悪いですね(´-`).。oO)は原文のご確認をお願いします。
はい、早速。

1) The PU.1-IL-9 axis in Th9 cells promotes RA

(Th9におけるPU.1-IL-9軸はRA病態に寄与する)
元論文→ https://ard.bmj.com/content/83/12/1707

内容:
TH9は比較的最近に提唱されたT細胞サブセットであり、RA(や他の自己免疫疾患)で増加していることが報告されている。その役割としては、Th17IL-9の産生を増強させたり、Th9の産生するIL-9がTh17細胞の分化を促進するといった様なTh17細胞との相互的な作用を持つことが報告されている。加えて、Th9はTregの機能を抑制するといった報告もあり、疾患によってその機能は異なる様だがTregとの相互作用もあるのではないかと考えられている。

本研究では、まずヒトRApt検体を用いてIL-9発現と臨床マーカー(DAS28等)が有意な正の相関関係にあることを明らかにし、RAptの滑膜においてもIL-9の発現が増加していることを示した。また以前にこのグループは転写因子であるPU.1が同じようにRAの滑膜で発現があがっていることを示しており、両者の発現を解析したところ、同じ様に発現が上昇しており、PU.1+IL-9+CD4陽性T細胞の存在が確認できた。

そこでマウスを用いてさらに解析を行い、T細胞特異的にPU.1をKnock Outさせると関節炎が改善し、IL-9の発現も低下することを示した。さらに、PU.1が直接IL-9のプロモーターに結合し、IL-9発現を誘導することを示した。

ではIL-9をKOさせるとどうか?→IL-9をKOさせても関節炎が改善(重症度を軽減)させた。IL-9recKOでも同様。さらに、IL-9はJAK1-STAT3を介してPU.1の発現を上昇させることがわかり、IL-9とPU.1の間に正のフィードバックループが存在し、これらが関節炎の重症度と関連することが示された。

2) Combination therapy for Behcet uveitis

(ベーチェット病に伴うぶどう膜炎に対するステロイドとの併用療法について)

元論文:https://www.thelancet.com/journals/lanrhe/article/PIIS2665-9913(24)00194-2/abstract

Behcet病のぶどう膜炎再燃抑制に対するステロイドに併用する免疫抑制薬の有効性を比較検討した無作為オープンラベル試験、中国から。

*****
*ちなみに現在本邦のガイドライン(2020)がどうなっているかおさらい*
→まずコルヒチン、それでダメなら
→視機能低下リスクを評価する。(眼発作を頻発するか、後極部に眼発作を生じるか、視機能障害が著しく失明の危機にあるか)
→リスクなし:Step 2A シクロスポリン内服
→リスクあり:Step 2B  TNF阻害薬(IFX or ADA)
となっている。
参考:

*****

ただし再燃に対する有効性については、これら薬剤の比較データは乏しい。
ということで、
<方法>ステロイド使用に併用する、シクロスポリン vs インターフェロンa2a vs アダリムマブの比較。
<結果>プライマリーアウトカム(ぶどう膜炎再燃率)は、Least squire means(…知らなかったんですが、交絡因子を調整したアウトカムの違いを解析する時に使われるようです。)で、シクロスポリン1.84(95%CI 1.40-2.44)、IFNa2a 1.44(1.10-1.89)、アダリムマブ0.95(0.64-1.40)。年間再燃率はADAの方が有意にシクロスポリンよりも低かった

3) BiTE therapy for rheumatic diseases

元論文1:
Alexander, T. et al. Teclistamab-induced remission in refractory systemic lupus erythematosus. N. Engl. J. Med. 391, 864–866 (2024)

https://www.nejm.org/doi/abs/10.1056/NEJMc2407150

元論文2:
Hagen, M. et al. BCMA-targeted T-cell-engager therapy for autoimmune disease. N. Engl. J. Med. 391, 867–869 (2024)
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2408786

二重特異性抗体(BiTE)…T細胞の表面抗原(CD3)と結合する部位とB細胞の表面抗原(BCMA等、今回はBCMA)と結合する部位を有する人工的な抗体。これにより、T細胞が活性化し、パーフォリンやグランザイムが放出され標的細胞を傷害する。

MMでは米国で承認されている、CD3とBCMAに結合するBiTEであるテクリスタマブの、SLE1例に対する使用報告と、強皮症・SS・筋炎・RAに対する報告が2024年9月にNEJMに報告。

え、CARTでいいんじゃないの?という方のために→CARTはやはり製造などの壁が高く、実用化の側面からは難しい部分があるため、off-the-shelfの抗体製剤の開発は需要があると考えられる。

あともう一点、CD19をターゲットにするCARTでは抑えきれない細胞がいる。
参考:https://doi.org/10.1002/art.42784  ↓

B cell 分化

注)Plasmaの中でもCD19陽性と陰性はいるが。

この辺は興味深く、実際CARTで抑えられる自己抗体とそうでない自己抗体があり、SS-A/RoやPM-SclなんかはCD19-CARTで抑えられず、抗体産生細胞の種類(フェノタイプ)が抗DNA抗体産生細胞なんかと違う可能性があると言われている。
さて、BCMAを標的にすると、理論的にはPlasma cellとPlasmablastをターゲットにできる。実際に、今回の報告においても末梢血中Plasma cellの低下を認め、MDA5、SS-A、SS-B、PL-7、ds-DNAといった自己抗体価も低下と、疾患活動性の低下を認めた。
SLEに対する報告では、骨髄のB cell分画までみており、その低下を確認している。合併症として、軽度のサイトカイン放出症候群は出現したが、治療によりコントロールできる程度であった。

CARTと同じく、適応がどうか、という部分は議論が尽きないが、一部難治病態を考慮すると、やはり新たな治療戦略という点においてはさらなる発展に期待したい。

4) Downregulation of invariant chain causes autoreactive T cell expansion

https://www.cell.com/cell/abstract/S0092-8674(24)00913-9?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0092867424009139%3Fshowall%3Dtrue

これは、大阪大学よりプレスリリースが公開されているので、私の下手な文章よりリンクを貼っておきます。(←投げやりじゃないよ〜)


5) JAK inhibitors improve RA pain

RAの治療における、JAK阻害薬とbDMARDsの痛みに対しての有効性に関する研究。(いやーこの話題耳タコになっていらっしゃる先生も多いのかもしれないのではないかと…)
元論文→ https://acrjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/art.43014

背景:
RA-BEAM試験(バリシチニブとプラセボかアダリムマブの比較)やSELECT-COMPARE試験(ウパタシチニブとプラセボかアダリムマブの比較)において、アダリムマブと比較してJAKiにおいて疼痛の改善が良かったことが報告されている。疼痛は疾患活動性が改善しても残存することが知られる。
<方法>
後ろ向きコホート研究
JAKi (n=1827)、TNFi (n=6422)、IL-6阻害薬 (n=887)、ABT (n=1102)、RTX (n=1149)を開始するRAが対象。スウェーデンの全国登録レジストリー。
VASスケールで痛みを評価し、患者背景、合併症、併用薬といった要因で多変量解析を行った。
<結果>
治療開始から3か月後には、すべての治療群で平均痛みスコアが改善。
製剤間では、JAK阻害剤による治療は、TNF阻害剤よりも痛みの減少が大きかった。TNF阻害剤以外との比較(IL-6, ABT)では、解析的には同等。
(途中で変えたり、併用薬もあったりする場合で分けていて、解釈がやや複雑なので気になる方はきちんと読み込んだ方がよさそう。私は省略する。)
過去に少なくとも2種類のbDMARDで治療を受けた患者や、単独療法として使用された場合には疼痛に対してJAKiの方が少しよさそう。

はい、ちょっと不明瞭のところはありますが、2024年11月はこんな感じでした。
ほら、あんまり長いと疲れちゃうからね。
個人的には(3)が一番興味深いですが、(2)は一番ガイドラインを書き換える系の内容かと思いました。
ではーおわり。

いいなと思ったら応援しよう!