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その時が来たら…

世界で大きな注目を集めた、タイタニック号探索ツアー・潜水艇「タイタン」の事故。お亡くなりになられた方とご遺族の方に、心からお悔やみ申し上げます。
私もニュースを見て、生存可能とされるタイムリミットが刻一刻と迫るのを気にしながら、なんとか助けることは出来ないかと願っていました。
タイムリミットを過ぎても懸命の捜索活動が続く中、驚くべき事実が公表されました。なんとタイタンは、捜索が始まる前に深海の水圧によって爆縮(爆発のようなもの)を起こして一瞬で壊滅したと。様々な条件を考えなくても人が生き残れないのは明白で、即死だっただろうと言われています。

なぜ私は「潜水艇の中で乗客が生きている」と思い込んでいたのでしょう。(人間の心理として、きっとそう思いたかった)
潜水艇の中は驚くほど狭く、大人5人が半円筒形の空間の中に座れるだけ。装置もありますがとてもシンプルな造りです。
「えっ! 中はこんな感じなの !?」
そう思った人も少なくないのでは。そしてすぐに、外と連絡が取れない潜水艇内の様子を想像しました。海底4000mの、光の届かない世界。捜索可能範囲な山の中などの地上とは全く違う、完全に閉ざされた密室。
「私だったら、発狂しそう…」
真っ暗な深海の中で、酸素がない・連絡が取れない・助かる見込みは限りなく低い密室、絶望的な状況に心を痛めていました。しかし実際は違ったのです。

私は「死ぬこと」は怖くありません。でも、「死ぬまでの苦しみ」は非常に怖い。人は意外となかなか死なないものです。それは今までの歴史や事故が悲惨さを語っている。
だから「苦しまずに亡くなった」という点のみで言うなら救いがあるというか、不幸ではないと思うのです。

けれどツアー会社が責任を逃れられないのは明らかで、

「情報(リスク)を全て説明したか」

これが鍵になるようです。他の業種などでも言えることで、情報は顧客に正しく伝える必要がある。しかし世の常で、企業は利益を得るために時として誤った(誤って取られやすい)情報を説明する。もしくは公表しない。
だから自分で調べることが大事な訳ですが、(メリットデメリット含めて) 全ての情報を得ていないのに、被害を受ける事態は避けたいのです。会社が後から謝罪をしても、失われた命は戻ってきません。

今回の事件では、どこまで顧客が情報を得て、どれだけの覚悟で臨んだでしょうか。
「危険を犯してもいい」その覚悟には、個人差があります。現に今回の事故の責任者で亡くなった会社CEOの方は、危険を好む人だったようです。そして乗客も、もしかしたら「自分は大丈夫」等というバイアスがあった可能性もある。
これだけ科学が進歩しても法律が作られても、様々なことが絡むから簡単には説明出来ないし落とし穴がある。(事故が起きた潜水艇は、規制の対象外だった)

話は変わりますが、去年の夏友人のお母さんがその生を終えられました。その2年前に倒れて入院し、もう回復は見込めないと医師に言われたそうです。途中からは延命措置を取っていました。意識はあったのです。しかし意識はあると言っても、「自分で意思決定できるレベルではなかった」。
そういった場合、特別な事情がない限り大抵の親族は「延命措置」を取るそうです。自分の決定で人の生死が決まることに、躊躇うのです。これは裁判での死刑判決にも言えて、一審で死刑判決になった場合、裁判長は被告人に控訴を勧めることが多いと言います。

「いつ、どこで、どうやって死ぬか」

それは自分自身では殆ど決められません。だからこそ悔いのない人生を送りたいし、出来れば安らかに人生を終えたいと願います。

最後に。被害者と遺族の方に改めてお悔やみ申し上げると共に、まだどこかに潜んでいるであろう様々な分野でのリスク問題が、この事故によって改善されることを望みます。

                                                                2023.6.26



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