モディリアーニ展　〜描いたのは愛〜

大阪中之島美術館で開催されている
モディリアーニ展に行ってきました

モディリアーニが親密だった画家や
その時代に流行っていたポスター
絵画も紹介されていて
モディリアーニがどんな空気感の中
どんな風に人と関わり合いながら
独自のスタイルを見いだしていったのかが
伝わってくる展覧会

『髪をほどいた横たわる裸婦』は
時に挑むようだと表現されますが
強い意志を持った目
視線であることは確かだけれど
どちらかというと全体からは
リラックスしてる雰囲気や
全てを受け入れてるような包容力を感じます

モディリアーニは大声を出しながら描いて
モデルを怖がらせていたとも言われていますが
それはモデルを前にして
その本質に迫る過程で
自分の優しさや繊細さ、ナイーブさ
脆さや弱さが露呈するのが嫌で
そういう行動を取って
ごまかしていたんじゃないかと思うのです
もしくは頽廃的で感情の起伏が激しい
アーティストとしてのモディリアーニを
演じていたのではないかと

そしてそんなモディリアーニを
すべて分って受け入れているような
『髪をほどいた横たわる裸婦』の微笑みや
まるで見透かしているような
キスリングの妻『ルネ』の微笑に
つながってるような気がします

自画像が極端に少なく
自分と向き合うことを
避けていたのではと言われる
モディリアーニ

モディリアーニは絵を描くとき
目の前にモデルがいないと描けなかったそうです
対象と向き合い
モデルの本質を掴んで造形美を追求する
真剣で命を削るような行為だったといいます

人は自分のことだけは見ることが出来ない
（今のところ。。。。）
見るためには鏡を使ったり写真を見るしかない
そしてそれでは解像度が下がってしまう
目の前にいるのとは明らかに違う
だから自画像は描けなかったのではないかなって思うし

酒と麻薬に溺れて命を縮めてしまったイメージが強いモディリアーニですが
それはモディリアーニが芸術家とはこういうもの
こう見られたい芸術家としてのモディリアーニを
少なからずどこか演じていたのかなぁとも
そして周りの人の無意識の期待にも応えていたのかも
それがいいことではなかったとしても

酔っ払って醜態をさらすのは
いつもカフェ「ラ・ロトンド」や
モンパルナス大通りなど目立つところばかり
と指摘していたのはピカソ

仲の良かった藤田嗣治は
随分乱暴な格好をして
モデルを恐れさせた事だった。
反して出来る画は優しい美しものであった。
と語っています

最初のパトロンであり友人
ポール・アレクサンドル博士は
モディリアーニの本当の姿は
ばかげた噂話よりは
むしろ彼の作品の中にこそ存在する
諸々の肖像画を見るものたちは
そこに洗練された感性と優しさ
真実と純粋さへの情熱を持つ
ひとりの男を見いだすのだ
と言っています

モディリアーニの言動よりも
作品の中に彼を見いだす人がいたのは
モディリアーニが少なからず
画家でありアーティストである
モディリアーニのイメージをつくっていたからではないのかなぁなんて思います


『大きな帽子を被ったジャンヌ・エビュテルヌ』は
少し離れて見ると
アンニュイでどこか現実感のない感じが
自殺願望のあったという
ジャンヌの特長をよく顕わしていて
近くで見ると鼻筋から口元にかけてが
男性的にも見えて少し違う印象を受けます

ジャンヌはモディリアーニに出会う前から
絵を描いていて
モディリアーニの創作に
影響を与えていたとも言われています
そんなジャンヌの紡ぐ言葉は
とても理知的で知性溢れる
意志の強いものだったのかもしれません

献身的で美しく悲劇的な死を遂げた
モディリアーニの妻ではなく
画家としてのアーティストであった
彼女の側面にもっと光があたるといいなぁ
と思います


モディリアーニの絵の前に立つと
絵を通してモディリアーニの優しい眼差しを
感じられる気がして
絵の前で動けなくなってしまう
その謎が少しわかったような
モディリアーニを近くに感じることができる
素敵な展覧会でした


いつか個人蔵の
『肩をあらわにしたジャンヌ・エビュテルヌ』
(Jeanne Hebuterne aux Epaules Nues)
の実物を見てみたい


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自分に犠牲を強いてはいけない。
君の真の務めは、自分自身の夢を守ることだ。
美は、時として苦しい義務を伴うが、
そこから、魂の最も美しい働きが生み出されるのだ。

アメデオ・モディリアーニ（1884年〜1920年）から
友人　オスカル・ギーリアへの手紙

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