筑波大学キャリプロ講座で半年間学んで気づいたこと
みなさまこんにちは。キャリコン人事のSaoriです。
ウープロWalkerで創楽さんからバトンを引き継ぎ、投稿します!
私は「自分らしく仕事で輝ける人」を増やすことを志し、企業で人事をしながらキャリアコンサルタントとしても活動しています。
私がキャリアカウンセリングで大切にしているのは、クライエントさんが言葉の力で新たな気づきを得て、「前向きに一歩を踏み出そう」と思ってくださることです。
今回のnoteも、読んでくださった方に気づきと前向きさをお届けできればいいなと思って書いています。
今回は、2023年4月~10月まで受講した、筑波大学キャリアプロフェッショナル養成講座について書きたいと思います。
講座はこちらです。
https://extension.sec.tsukuba.ac.jp/archives/lecture-list/2833
『キャリアの学びを深めたいと思った理由
この講座は国家資格キャリアコンサルタント以上の資格をもっていて指導者レベル方を対象にした講座ですが、私は事業会社のキャリコン人事として、企業の経営目標の達成と働く個人の自己実現をサポートすることを両立できる人になりたいという動機で参加しました。
ちょうど、会社がひとつ上のレベルに進化するために事業部組織の変化をお手伝いすることになり、所属する従業員の皆さんの変化や成長のターニングポイントに立ちあうことになりました。
今までのやり方を変える必要があることはもう明確なので、トップダウンでいきなり“合わない人は去れ”というような方法ではなく、一人一人が変化を進化として前向きに捉えられるようなモノの見方・考え方を理解していただくことが大切なのではないかと考えていました。世の中全体もどんどん変化することはもう明白ですし、持続可能なキャリアの積み方ができるようにサポートしていくこともキャリア支援に携わる立場としては重要だと思ったのです。
とはいえ、人事という立場で、キャリア支援的な観点でどう行動すべきか?がモヤモヤしていました。私が人事としてもキャリア支援者としてもスキルが未熟であるということも多いにあるのですが、果たしてスキルだけの問題なのか?という疑問がありました。同じキャリアを考えるとしても、人事の目的は”組織目標達成のため“だし、キャリア支援者の目的は”個人の人生のため“なのだから、目指す方向が違うわけです。もちろん理想はその2つが同じ方を向いていることなのですが、組織内で働く人の相談ケースは大抵そこにズレがあるはずで、とくにキャリア支援者としては、個人の人生だけにフォーカスしても本質的な意味での状況の好転には繋がらないのでは?と思っていました。
では、組織内でキャリア支援をする人の役割をどう捉えるか?というと、じつは明確な定義が見えていませんでした。なぜなら、キャリアカウンセリングの学びの場では、“私たちが提供しているのはカウンセリングなのだから、カウンセラーと名乗りなさい”と言われることも多かったからです。しかも、多重関係など避けられない状況で、どうすればいいんだっけ?となっていました。(一方で、プロティアン・キャリアを中心とした学びの場では、“カウンセリングだけでは問題解決にならないから、コンサルタントであれ”という意見を聴いていたこともあり、個人的には共感するものの、何が正解なのか分からなくなっていました。)
組織内でキャリア支援をする、という観点でもっと自分の考え方や知識をアップデートしたいと思って参加したのが、筑波大学のキャリアプロフェッショナル養成講座でした。
キャリプロ講座で学んだことでの気づき
そんな動機で約半年間にわたる講義を受けて、自分の中で気づけたことがありました。
(講義の内容そのものは個人で発信することはできないので、興味のある方はぜひ講座を受講してみてください!)
気づき1.キャリアは”仕事のため”だけじゃない
これはキャリア支援者としては当たり前のことなのですが、キャリアとは働くことだけにフォーカスするのではなく、人生全体を含む“ライフキャリア”として考える必要があるということ。
講義の中では、産業領域以外の分野(教育・福祉・医療)のインプットもかなりの量がありました。その中で、生活保護、介護、治療との両立といった分野の現実を知るにつけ、個人が持続可能な生き方をするためにキャリアという概念が必要であることを痛感しました。
この視点、“ビジネスパーソンとして成長しよう”とか“仕事のモチベーションを高めよう”といった文脈ではどうしても後回しになってしまいやすい気がしています。“キャリアアップ”とか“働きがい”とか“ワークエンゲージメント”といった考え方は人生100年時代に働くことを持続可能にするためにはとても大切なことです。ただ、前提として忘れてはいけないのは、私たちは“働くために生きる”わけではなく、“生きるために働く”ということです。
でも、職場の中で個人のキャリアを考えようとすると、どうしても仕事を回すことが優先ということになってしまいやすいのも事実です。最近では職場のウェルビーイングや健康経営なども言われるようになりましたが、厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概況」によれば、過去1年間にメンタルヘルス不調により、連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.6%(令和3年調査では8.8%)だそうです。
単純に仕事だけが理由の不調ではないにせよ、何かしら無理があるから休職に至るはずで、個人のキャリアを持続可能にするための取り組みが必要だと感じました。
仕事のパフォーマンスを高めたり、業績を上げることも、その土台になる“持続可能なキャリア”を考えることが大切だろうと思います。
気づき2. 持続可能なキャリアのために出来ること
こうした前提に立って、個人の持続可能なキャリアを実現させようとした場合、キャリア支援者は誰をどのように支援するのが良いのだろう?と考えました。
企業の経営層や職場の自律自走できるハイパフォーマーといった人たちは、ヒトモノカネ情報、思考力・判断力・行動力といったリソースを十二分に持っているので、キャリア自律ができており、支援が必要なほどキャリアが大きな人生の課題になることは無いと思います。時代を先読みして計画的に自分のキャリアを考え、変化対応力も兼ね備えているので、瞬間的に悩むことはあれど、すぐにリソースを使って解決していることが大半です。(一部、事業継承が必要な二世の方などは違った課題があるかもしれませんが)
パーソル総合研究所 「従業員のキャリア自律に関する定量調査」(リンク:https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/career_self-reliance.html)によれば、キャリア自律度も自らの市場価値が高いと認識している人は全体の25%ほどいます。年収別でもキャリア自律度に有意な差があるので、やはり組織のトップ層ですね。
一方で、同じ調査の結果のうち、キャリア自律度が低く、かつ、自分は市場価値が低いと思っている人は全体の約43%です。また、いずれかの要素が低い人を合わせれば全体の75%程度になります。パレート的にみても、2:6:2の法則に当てはまりますね。
(データは、パーソル総合研究所 「従業員のキャリア自律に関する定量調査」からお借りしました。この調査は、筑波の講義をご担当くださった岡田先生と堀内先生の論文にあるキャリア自律尺度の概念が用いられています。)
キャリア自律度が高く市場価値も高いと自己認識している人は、どんどん挑戦して社会の変化をリードして欲しいと思います!
一方で、変化する社会の中で支援が必要となるのは、「キャリア自律度が低い」「自分は市場価値が低いと思っている」という人たちでしょう。
今後どんどん労働人口が減っていくなかで、ビジネスモデルの見直しやリスキリングなど、個人も企業も変わっていく必要があるのは明白です。だとすれば、四象限の右上以外の領域にいる人たちは、何等かの行動変容が必要な状態になっていくと思います。(とくに左下の領域!)
もしこのまま社会の変化についていけない状態だとすれば、働くことへ不満を抱え続けながらも組織にぶらさがることになります。さらに言えば、ローパフォーマーとして人員削減の対象になっていく可能性があります。こうなってしまっては、生活の土台が不安定にもなりますし、心理的にも健全な状態を維持することは難しくなるでしょう。“生きるために働く”という観点からも、このままではマズイことが見えているわけです。
キャリア支援者は右上の領域にいる人以外のすべてを支援の対象としつつ、個別の不満や悩みに向き合いながら1人1人の自己理解や自己概念の成長を支援するのはもちろんのこと、個人の行動や考え方を変えるための仕組みづくりの側にも回らなければならないだろうと思うのです。
キャリコン人事として、私はどうする?
ここまで考えてきて、組織の中でキャリア支援者として何をすべきかが見えてきたと同時に、私が疑問に思っていたことがクリアになりました。
個別にみると対立しているかもしれない状況だとしても、状況を社会レベルで俯瞰してみれば、組織も個人も“変化に対応する”という同じ課題を抱えていました。それぞれに“生き残る”という同じ目的を持ち、持続的な成長が求められている状況下でいかに持続可能な生き方ができるかを考える必要があったわけです。
組織の中でキャリア支援をしていくには、組織と個人を天秤にかけるのではなく、いかにお互いの成長サイクルを繋げていくかが重要なのでした。
そう考えていけば、キャリア支援者はカウンセラーであり、アドバイザーであり、コンサルタントであり、向き合うべき課題によって様々なスキルを発揮する存在で良いということも理解できます。1on1での面談はメンタル不全の恐れがあるクライエントさんや感情的なケアが必要な場合もあるので当然カウンセリングの技術も必要になるでしょうし、キャリアアップなどの相談内容ではコーチング的なことも必要です。また、(守秘義務は当然ですが)相談内容を記録・分析して職場の課題や傾向を抽出できれば、組織課題として研修や制度改定などのアプローチができますし、それが組織の成長にも貢献すると思います。
さらに言えば、経営の意思決定をするのは、組織の生き残りを課題としている、キャリアの問題にあまり悩んだことがないであろう自律自走型ハイパフォーマーさんが大半です。カウンセラー的に個人に寄り添いましょうという提案では何の課題解決にもなりません。コンサルタントとして、組織の持続的な成長にキャリアの観点で施策導入をすることや制度改定のメリットを納得感が得られるように説明する必要があります。
当然、人によって考え方は様々にあると思いますが、私は働く個人の視点に立ちながらも、“個人と組織の成長循環をまわすこと”が組織内でキャリア支援をすることの意義なのだろうと考えます。(筑波の講義でも、岡田先生から組織への働きかけの重要性を学び、吉武先生から組織と個人の関係性への気づきを得ました。そして、花田先生の講義では、まさにこの役割問題に切り込んで整理してくださいました。)
もし志を同じくする方がいらっしゃれば、繋がりを持てればうれしいです。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
次回のウープロWalkerはEiko Kurodaさんです。よろしくお願いしますー!