【火曜日更新】ピリカの荒ぶりエッセイ~⑩
フツーのがいいの!下着売場で荒ぶる火曜日
毎日毎日10時間は着用し、ある意味洋服よりも快適さが大事なアイテム、それは下着なのではなかろうか。
男性も素材などこだわりポイントがあるだろうが、女性に関してはもっとシビアなのでは、と私は思う。
この私、何を隠そうブラジャー迷走歴40年である。
今回はこのテーマで書いてみたい。
男性のフォロワーさんはコメントしづらいかもしれないが、全然遠慮はいらないのでばしばし書き込んでくれたら嬉しい。
うちはみな、胸板の厚さとボリュームの大きい乳をもつ家系であるらしく、みんな、こう、ばーん!どーん!とした体型である。母も叔母もいとこたちも、そのことには皆それなりに悩んできたように思う。
特にブラジャーには、いつも悩まされてきた。
ワイヤーのあとがつき、みみず腫れのようになったり、肩ひもが食い込んで、やたら肩がこったり。一週間に一度はマッサージにいかねば身体がもたない。
最近は皮膚が弱くなったのか下着で擦れたところが炎症をおこし、粉瘤ができるようになった。
いままでの人生、いろんな下着を試したが「100点!100点出ました!」と声を大にして叫びたいような商品には出会っていないのが現状である。
「ノンワイヤーブラ」は、楽ではあるが洋服を来た時にボワーンと胸が広がってカッコ悪いし、「小さく見せるタイプ」は高さをサラシみたいにぎゅうっと押さえつけられて苦しい。「フロントホック」は、ふとした動作の時にバチン!と外れるし「サイドをすっきり見せる着痩せタイプ」は、サイドから集められた肉が前にぎゅうぎゅうと集中して、谷間見せマンに変身してしまう。
私は首がつまっているデザインの洋服が苦手で、冬でもわりとVネックや首もとがあいた服を着る。50手前のおばさんのもりもりとした胸の谷間は、周囲にも迷惑であろう。
あと困るのが、ブラジャーのカップ部分のゴテッとしたレースである。色のついたトップスを着ていても、ブラの色までは見えねどレースの凹凸が表面に透けてしまう。
レースなんかいらん。胸にわざわざバラの花を咲かせんでもいいのだ。
つるんとした、ベージュのフツーのブラジャーはないものか。
私は百貨店の下着売場に探しにいった。通販は同じメーカーでも微妙にサイズが違うし何度も失敗しているので、面倒でもお店で買うようにしているのである。
売場をのぞくと「サマーセール30~50%off」の張り紙。
よっしゃ、いいときに来たぞと思いつつサイズをAから順にたどる。
いわゆる標準サイズは淡いピンクや水色、色も柄もかわいい。見ていてうきうきする。
だがサイズが大きい棚になると濃い茶色、濃い紫、濃いオレンジ…とどんどん色が迷走してくるのである。
私のサイズの棚にあったのは闇のようなパープルとワイン色の二つで、しかもカップ部分にはどーん!と蝶の意匠のレースがほどこされていた。
いや…蝶というか、ほとんど蛾に見えるのだ。
店員さんを呼び止め、レースがあまりついてないシンプルなものはないかと聞く。
店員さんは申し訳なさそうに、「セール品はもうぜんぶ出てしまいまして…」と正規の値段のコーナーを指差した。
大きいサイズは売れ線ではないため発注も多くはしておらず、さらにベージュや黒などのシンプルなものから売れていくので、これらのどぎついグループが残るのだという。
正価のタグをみると、ひとつでほぼ1万弱。
ものはいいのだろうが、これだけセール品が溢れ返っている中、なぜ私だけが正価で買わねばならぬのか。
私はセール品の「蛾ブラ」とその倍の値段のシンプルなブラを手にしばらく考えたが、私は「蛾ブラ」にはどうも抵抗があった。
ため息をついて正価のほうをフィッティングしてもらい、購入した。
ちゃんとしたものではあったが、なんだか損した気持ちである。
華美なデザインはいらないのだ。
普通のでいいから、セールの時期くらいお安く買いたい。
その願いすら私には叶えられないのか。
荒ぶる気持ちを抑えられず、私はとぼとぼと帰路に着いたのであった。