もはや裏アカではない
今年50才になる。
SNSと共に歩んでます、という世代ではないからか、どうしても身体に馴染んでいない気がしていた。
「写メール」というものが普及したのは私が20代後半だったし、それまではポケベルのメッセージを公衆電話で一心不乱に打ち込むのが最先端だった。
そして私は1998年から2010年くらいまで子育て全盛期だったので、そこだけポカン、と世の中の記憶がない。
「モー娘」のLOVEマシーンがあちこちから聞こえていた。一般人を芸能人に育て上げるような番組が多く放送され、チャンスは多いが付随する闇のようなものも浮き彫りにされた、ゴチャゴチャした時代。
いろんなものが画期的に進歩した。
日本のテクノロジーのすごさ。
1を3にし、5にし10にしていく力は本当に誇れるものがある。
黒電話が主流で、ブラウン管のテレビを家族みんなで見ていた時代から半世紀にもなっていないのに、ポケベルがPHSになり、ガラケーになりスマホになった。
パスポートサイズのビデオカメラは不要になり、デジカメもまた然り。
いまや新聞でテレビ番組表なんて気にしない。
見逃し配信でいつでも見れるし、ちょっと待てばダウンロードだってできる。
そのぶん、ここぞ、という時に自分を合わせる力は鈍ったと思う。若い人と話すのに、共通の話題を探すのにも困るようになった。「昨日のアレ、見た?」の一言でなんとかなるコミュニケーションは終わった。
しかし昭和が一番よかった、とは私は思わない。先に生きてる人が偉いんだから皆従え、という縛りから解放された人たちは、やはり楽しそうに見える。
私の世代は、ちょうど過渡期のような気がする。先人の教えを守って荒波を切り抜け、やっと自分が舵を動かせるポジションになったのに、あらどうでしょう。
世界地図が変わっている。
あるべき所に陸がなく、よくわからん浮島がぽんぽんできてる。おなじ日本語でも意味が通じない。そんな経験をされているのではないか。
前置きが長くなった。
背景を語りすぎるのは私の悪いくせである。
そういう時代を私は生きてきた。
SNSの話をしよう。
今までmixi、Facebookをやってきた。
mixiは招待制で、閲覧したら「足あと」がつく仕組み。その頃はフォロー、という言葉もなく「友達申請」と読んでいた。要するに、情報を見るには、「私たち、友達だよね」という前提があったのだ。
友達申請がない「足あと」は警戒されたし「何コイツ?」という不快な情報に変わる。良くも悪くも閉鎖的だった印象。
Facebookは実名も出すし、写真も出す。主に営業用に使ったがかなり疲れた。ちょっと大きなイベントで集合写真をとれば「タグつけ」され、ちょっと挨拶しただけの人から「心友」と呼ばれ「誕生日おめでとう!」のメッセージが届く。
疲れはてた顔でワイングラスを持ち、好きでもないピクルスをつまむ写真の私も、また心地よい私ではなかった。
そして今、私はnote以外のSNSはしていない。
発信のスピードでいえばXのほうが早く広く伝わるのだろうが、それもまた意図しないことが起きたときに自分を守れないからだ。
そんなnoteの生活は、心地が良いし刺激もある。そして時々、びっくりするくらい心を突かれることもある。
先日、ピリカ文庫で白鉛筆さんが書かれた
「可逆性セレナーデ弍號機」。
この作品に私は救われたのである。
ぜひ読んで頂きたいので多くは語らない。
作中で登場人物が話す「いっぱいあるわね、弍號機」という台詞を読んだとき、私の積年の肩の荷がさあっとほどけて楽になったのだ。
昭和生まれの私は、リアルな自分が表でSNSは裏。陽と陰。表のストレスをSNSで晴らしている、という歪んだ思い込みがあった。
SNSでいくら「ピリカ」が受け入れられていても、実体は日本のはしっこに住む中年である。ぱんぱんに浮腫んだ足を引きずり、愛想笑いをして日銭を稼ぐ疲れたおばさんだ。
そんな私が「ピリカ」だと知ったらがっかりさせるかな。
文フリにいく前は、それがうっすら怖かった。
でも、そうではないのだ。
弍號機なのだ。
壱號機がうまいこと機動しなくったって、弍號機がある。どちらがメインだろうが関係ない。性能についても、どっちが評価を得ようが別に構わないではないか。
それぞれが独立しているのだ。
今まで、いくらnote活動が楽しくてもリアルはそれを上回る充実感がないとダメだと思っていたし、それに縛られていた3年だった気がする。
それを白鉛筆さんが風のように取り払ってくれた。私よりふた回りは若いであろう(たぶんね)、若者にそれをやられるとは思わなかった。
これもまた年功序列の毒だろうか。
いつも引っ張ってくれるのは年長者、と決めつけていたのだろう。
私の価値観がガラガラと崩れたのだ。
本当に白鉛筆さんには感謝しているし、それを素直に言葉にできる私を誇りに思う。
白鉛筆さん、活動4周年プレデターございます。
音声配信では新たな魅力がほとばしってますね。note学園では生徒会長としてまだまだ現役を張らせていただきます。
筆が止まったら生徒会室にいつでも来てね。