Apple Musicで聴けるジャズ : Trio in Tokyo - Michel Petrucciani
https://itunes.apple.com/jp/album/trio-in-tokyo-live/1191909587
ハッピージャズの何が悪い
Pf - Michel Petruccianiという人は、難病を抱えて生まれてきて身長が1mなかったりし(手のほうはむしろ人より大きめで、そのことは本当に誰にとっても幸運だった)、99年に36歳で亡くなってるんだけど、途方もなく優れたコード感覚を、強烈ですらある明快なタッチで叩きつける、90年代最高のピアニストの一人であるのと同時に、しばしば作品に変なシンセで余計な音をぶっこんで我々をずっこけさせる困ったちゃんでもある。なおジャズピアノの先達であるBill Evansの影響を指摘されている——んなもん「日本人はラーメン食って生きてる」程度の意味しか持たないが——のはまあいいとして、Keith Jarrettの影響もあるとか言われると誰が言ってんねんという感じではある。
このアルバムはトリオでのブルーノート東京のライブを録音したもので、そのメンバーがBa - Anthony Jackson、Ds - Steve Gaddとなっているが、どっちもジャズってよりフュージョン畑の人という印象が強く、二人並べると余計にそんな感じがする(Al Di Meolaとかと組んでたりするし)のだが、Petrucciani自身がスタンダードよりオリジナルの人なので、むしろ良かったのかもしれない。選曲から言ってもストレート・アヘッドな4ビートはないし、なんといっても息が合うというか、なんかこの3人、ずいぶん楽しそうなのである。まあ4. Little Peace In C For UのGaddについてはかなりどうかと思うけどね!
で、3. Homeのソロが最高なんだ
いきなり結論を言ってしまうけどそういうことで、4:07~のピアノソロがこのアルバムで最高のポイント。Petruccianiのコードに対する異常に鋭敏かつ繊細な感性がコーラス進む度に加速するのを存分に味わえる。ソロまで長いのは確かなんだけど、そこまで単純でもないコード進行をきちんと覚える猶予を貰ったということなので前のめりで聴きましょう。おれはもう飛ばすけど。あとなぜかソロから跳ねるけどソロは跳ねたほうが楽しいということを教えてくれます。それは嘘だけど。嘘というか半分しか正しくない。
最高のポイントを挙げてしまったのであとは聴けと言うしかないが、ほかのポイントだと6. Cantabileのアンサンブル(っていうかGaddのデキ)が異常に達者だとか、1. Training 、 2. September Second の楽曲としての完成度が高すぎるとか、4はGadd以外も闊達すぎて面白いとかそういうのもあります。そこまで行ったらどうせ7. Colors も8. So What も聴くし、つまりいわゆる捨て曲なしと言っていいくらい。でもPetruccianiって演奏内容は完全にバップの人だからSo Whatを好んで演奏するのは(してるんだけど)なんとなく不思議な感じがするし実際モードっぽくはない。それがどうしたと言われても困るが、単に好きだったのかもしれません。
おすすめは小編成
Apple MusicはPetruccianiがヤケクソみたいに充実しているが、ベスト盤とかCompleteとか多くてどれから手を出したものかわかりづらく、おまけに同じようなジャケットが多くて困る。なにしろタッチが強くリズムが明確なので小編成のほうが演奏が面白いのだが、オリジナル曲を抑えておくにはフルバンドのほうが都合がよくてなかなか悩ましい。まあどれ聴いてもたいがい後悔しなくて済むんだけど。シンセ入ってるやつ以外の話だけど(確かPlaygroundとかヤバかったと思う)。
つまりスタンダード曲の多いデュオのMichel Petrucciani & NHOPやConversationなどが入りやすいということになる。NHOPとは人の名前で、略さず言うとNiels-Henning Orsted Pedersen。略したほうがよかったでしょ。なおベースの人で、基本かなり音符詰めまくって譜面真っ黒系だけど、こいつうるせーなって嫌になるのはたまにしかないので、そこがワザである。もう一つのConversationは父であるギタリストTony Petruccianiが全然有名じゃないのにやたら上手くて凄い。あれのAll the things you areはみんな真似して玉砕しましたね。それとオルガンのEddy LouissとのデュオアルバムConférence de presseも面白いんだが、聴いてるとなぜかItunesがバグるんですがなぜですか?
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