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テーマソングを歌ってよ
会社帰りに、鈴虫が歌う声がした。
秋が好きだ。秋の空、空気、おいしい食べ物、うたかたの色合い。
もう夏に飽きたな、と思うと、ショートブーツを履く。服も、ダーク系を選んだり、少しシックなイメージにする。メイクも変える。夏の頃と色味を変えて、紅葉させる。
(無粋ですが、誤字じゃないです)
私にとって、人生ってものすごく難しい。もっと練習を積んでから生まれたかった。全然うまく生きられないよ。できないことも、知らないこともありすぎる。みんなはどうやって知ったのだろう。あんなに私はちゃんと真面目に学校行って、勉強して、成績もよかったのに。生徒会活動だってしたのに。もしかしたら、学校や勉強や委員会の活動よりも、大切なことを知らない間に、みんな学んでいたのだろうか。私だけバカみたいに、大人の言うことを聞いて、肝心なことを学ばなかったのではないか。
悔しさのあまり、そんなことを考えてしまう日がある。でも、今日は鈴虫の声が聞けた。私の耳は、季節の音を感じる感受性を持っていた。嬉しい。嬉しいな。生きてる。
The pillowsというバンドが好きだ。
彼らの言葉で、「We have a theme song」というのがある。オレたちはテーマソングを持っている。
私は、これまで本や文章、アートや絵画と同じくらい、音楽、歌に支えられてきた。
私の人生が困難だらけで、息苦しくて、辛くて。そりゃ、もっと大変な人はいくらだっているだろうけど、私は私の辛さだけで、抱えきれなくて。
それでも、誰かの優しさや、強さや、弱さや、厳しさに支えられてきた。会ったこともない人だったり、その人を知ったときには死んでいたり、向こうはまるで私を知らない人たち。
テーマソングって、なんだろう。
心のなかで、常に燃えている音楽。
魂と言ってもいい音楽。
そういう音が、音じゃない音が、音のない音楽があるように思う。
私たちはそれに突き動かされて、嫌でも無理でも今日も生きてる。
音楽を聴いたり、絵や彫刻を見たり、本を読んでいるときに、世界の全ては、彼の苦しみや彼女の涙も含めて、私のために用意されている、と思うことがある。
ありがたいことです。
私はあなたのために、世界のためになにができるだろう。
ああそうか、終わらせないことなのか。
嫌でも無理でも。