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禅の道(115)エールとルール

自分へのエールとマイルール

 昨日の早朝、雪に凍りついた地面を必死に掘り進めていたせいか、右の腰に痛みを覚えました。これまでにも寝違えが続いていたのですが、ようやく快方に向かいはじめたところに重なってしまい、どうにもこたえます。友人も右足のかかとを痛めているとのことで、二人揃って近くの温泉へ。じんわりとした温かさが身体を芯からほぐし、改めて「無理は禁物」と心に刻むことになりました。

 私たちは同い年、ちょうど満70歳。ここまで病気やケガで死んだりせずに来られたのは有り難いことですが、今後もできるだけ無理を避けて、楽しみながら身体を動かそうと日頃から言い聞かせています。何か「楽しみ」があると、人は自然と前を向きます。たとえば、ゆったりとした温泉に浸かるのも、その一つかもしれません。こうしたシンプルな道理こそが、私のマイルールです。

 ルールというと、堅苦しい規律や型にはめて捉えられがちですが、私にとってのルールはもう少しゆるやかなもの。むしろ「自分へのエール」と言ったほうが近いかもしれません。これを守れば健康になれる、これを続ければ心が落ち着く──そんな「自分から自分へ送る励まし」を、日常のなかにちょっとずつ取り入れています。

 その日常は、毎日が変化の連続。同じ日は二度とやってきません。たとえば、昨日は朝から、長年の夢だった参禅堂を建ててくださった棟梁からいただいたクサマキの板でつくられた障子を、庫裡(くり)の私の部屋の窓に取り付けました。友人と二人がかりで行った作業は、棟梁の指導で思いのほかスムーズに進み、ようやく庫裡が完成。窓に向かって合掌し、手伝ってくれた人や材料を提供してくださった棟梁、そして訪れるすべての方への感謝が胸に満ちてきました。そんな思いを分かち合ったあと、友人と記念のお祝いとして食事をし、いざ温泉へ。身体も心もさっぱりとほぐれて、今日の朝を迎えています。

 いま、私には今月中に京都の家を明け渡し、私物をすべてマキノの家に運び込むという大仕事が待ち受けています。決して大げさな話ではなく、関係者の都合もある中での約束ですから、何としても履行しなければなりません。こうして日程に追われると、どうしても気持ちが焦りがちになります。しかしそんなときこそ、「楽しみ」を伴った自分なりのルールを大切にしたいと思うのです。腰が痛いなら無理はしない、気持ちが落ち込んだら温泉や散歩でリフレッシュする──シンプルであっても、自分に優しく、そして鼓舞するルールは、年齢を重ねるうえで大きな支えになると実感しています。

 振り返れば、今から10年ほど前も、新しい挑戦を前に「どうやって乗り越えようか」と戸惑いながら、結局は自分を励まし、応援することで一歩を踏み出してきました。その時の気持ちと今の私の思いを重ね合わせると、「自分にエールを贈る」という行動自体が、どれほど力強いものだったかがよくわかります。

 これから先も、無理なく身体を動かし、ささやかな楽しみを大切にしながら、毎日を味わうように生きていきたい。そのために、私は私のルールを守り続けます。大きな声で叫ぶ必要はありませんが、「よし、やろう」と自分に語りかける小さな言葉が、確かなエールとなり、少しずつ背中を押してくれるのだと信じています。

ルールとエール、そしてゴールへ。

友人いわく「いきものがかり」の𠮷岡 聖恵さんの歌声には1/fのゆらぎがあるとか。どおりですごいわけだ。それとこの歌、ひさびさに聴いたけど動画のなかの子供たちのメッセージに、泣けてしかたなかった。ちかごろ涙もろくなっていかん。少年たちよ。どうか、どうか自分にこそエールを。


ご覧いただき有難うございます。
念水庵 正道


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