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禅の道(117)時は巡り、車が変わり…
時代はめぐる
昨日、新しい軽トラックがわが家にやってきました。今までお世話になったレンタカーのジムニーは今月中に返却する予定です。同じシルバーの車体を見比べると、まるで私の人生のシルバー世代と重なるようで、不思議な感慨にとらわれます。古い友人と新しい友が入れ替わる――それはまさに“世代交代”という言葉がふさわしい情景です。
考えてみれば、新車は二十数年ぶりかもしれません。田舎暮らしの私にとって、軽トラはもはや必需品です。ちょっと買い物に出かけるだけでも、往復で一時間はかかります。DIY用の木材やパイプを運ぶとき、あるいはまとめたゴミを清掃センターに持ち込むときなど、軽トラは本当に助かる相棒です。これから少しずつ身の回りを整理して、必要なものだけを手元に残していこうと考えています。新しい物をあれこれ買うよりも、今ある物をどう生かすかに心を傾けたいと思うのです。
これまで私の人生には、いつの時代にも車が寄り添ってくれました。そのときどきの愛車の姿を思い出すたびに、共に過ごした時代や自分の心模様まで鮮やかに甦ります。車という存在はただの移動手段ではなく、私にとってはときに友人であり、伴侶のような役割を果たしてきたのだと思います。
昨日の夕方からまた雪が降り始めました。先日の寒波がゆるんでほとんど雪が消えたところでした。今度の雪もしばらく続きそうです。それでも、日差しのある時間は少しずつ長くなり、かすかな春の気配を感じ取れるようになってきました。こうして季節がめぐり、時代が変わっていくたびに、私たちは少しずつ形を変えながらも、同じように生き続けるのだと思います。
春はもう間近。あわただしさのなかにもほのかに感じる温もりや、新しい軽トラのエンジン音に耳を傾けると、こころが少し軽くなるような気がします。時代がめぐるその瞬間をしっかりと受け止め、これから先も軽やかに、そして丁寧に歩んでいきたいものです。
今日えらんだ楽曲は、中島みゆきさんの「時代」です。この歌を上白石萌音さんが、オーケストラをバックに歌っておられます。この人からは、ほんとうに性格のよさを感じます。人柄がにじみ出ている。ドラマだけではない多才ぶり。なによりその笑顔に癒されます。
時が代わる。人は生きる。
ご覧いただき有難うございます。
念水庵 正道
新旧交代。一抹のさびしさとともに、新顔との対面。雨雪の出迎えとなった。これからよろしく頼むと声をかけた。もちろん彼は何もいわない。けれども聞こえる気がした。針に糸を通すのではなく、糸を短くつまんで、針の穴のほうから糸に差すと、かんたんに糸がとおる、という。
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