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禅の道(96)ゴミを捨てる

心と暮らしを整えるために

日々の生活を送っていると、気づかないうちにゴミ箱には「要らないもの」がどんどんたまっていきます。もちろん物理的なゴミそのものを放置すれば、やがて“ゴミ屋敷”と呼ばれるような状態になり、衛生面でも精神面でも大きな負担となるでしょう。実はこれは、私たちの心の中でも同じことが起こっているのです。


物理的なゴミと精神的なゴミ

1. 物理的なゴミ

  • 日々の暮らしで生まれる不要物
    食事の後のゴミや、買い物の袋、包装材など、生活しているだけで自然と出てくるものはたくさんあります。こうしたゴミは、溜め込まずこまめに捨てることで、家の中を清潔に保ち、心身ともにスッキリとした状態をつくり出します。

  • 溜め込むほどストレスになる
    もし捨てるタイミングを逃してしまうと、部屋にはモノが溢れ、管理が追いつかなくなります。その状態を見てイライラしたり落ち着かない気分になったりするなど、ストレスが増大してしまいます。

2. 精神的なゴミ

  • 情報過多の時代
    新聞、テレビ、ネット、SNS、雑誌や噂話など、私たちは日常的に膨大な情報にさらされています。しかし、その中身の大半は、実は自分にとって「本当に必要な情報」ではないかもしれません。むしろ心を乱すだけの不要物になりがちです。

  • 有益かどうかより、自分にとって本当に必要かどうか
    たとえ「有益」と言われる情報でも、自分の目標や生き方に照らしてみると、今は必要ないということもあります。必要ない情報に意識を持っていかれると、自分にとって大切なことを見失ってしまうかもしれません。


捨てることの大切さ

1. こまめに排出する

生き物としての私たちの身体は、不要な老廃物を排泄する機能をもっています。これは、生存のために不可欠なはたらきです。同じように、私たちの心や暮らしの中にも、定期的に「排出」しなければならないものが存在します。

  • 部屋の掃除や整理整頓: 毎日・毎週など一定のリズムで取り組むことで、不要なモノを先送りにせずにすみます。

  • 情報の整理・取捨選択: SNSやニュースをダラダラと眺める代わりに、必要なときだけ見に行くよう工夫する。もうフォローが不要と感じるアカウントを外すことで、情報量をコントロールする。

2. 心の中をクリアに保つ

モノや情報を捨てるだけでなく、悩みや不安などの「心のゴミ」も意識的に手放すことが大切です。

  • 思考の整理: 日記を書いたり、深呼吸をしたり、瞑想を行ったりすることで頭の中をクリアにします。

  • 不要な感情や考えを手放す: 過去の失敗や他人からの評価に囚われるのではなく、「今ここ」に意識を戻す練習をすることで、自分が本当にやりたいことや大切なことにエネルギーを注げるようになります。


ゴミを捨てる習慣を身につけるためのヒント

  1. 小さく始める
    いきなり大掃除をしようとすると、面倒くさくなって挫折しがちです。まずは目についた小さなゴミを捨てる、1日1カ所だけ片づけるなど、小さな一歩から始めましょう。「小掃除」がキーワードです。

  2. 定期的にチェックする
    「週に1度、部屋の棚を見直す」「月に1回、SNSのフォローアカウントを見直す」など、定期的に自分と周囲の状況を振り返り、不要なモノや情報が溜まっていないか確認します。

  3. 必要・不要の判断基準を明確にする
    自分にとって大切な価値観や目標が明らかになると、何が必要で何を手放せるのかが自然と見えてきます。たとえば「健康に暮らす」「この仕事を極める」といった明確な軸があれば、その軸に合わないものは手放す決断をしやすくなります。

  4. 捨てる行為をポジティブに捉える
    「捨てる=損失」と考えずに、「空間や時間、心の余裕を取り戻す行為」と考えてみましょう。ゴミを捨てると新鮮な空気が入ってきますし、必要なものとの出会いを受け入れるスペースが生まれます。


おわりに

「捨てる」という行為は、禅の考え方においても非常に大切なポイントです。身体と同じように、心や暮らしの中に溜まった“ゴミ”をこまめに排出していくことで、私たちは軽やかで清々しい状態を保てます。余計なものを手放すと、自分にとって本当に大切なことが、よりはっきりと見えてくるのです。

まずは身の回りの小さなゴミから捨てる習慣をつくってみましょう。それはやがて、心や意識の中で不要となった考えや情報を手放すきっかけになります。心と暮らしの両面において、ゴミを捨てるという行為を通じて身も心も整えてみませんか。結果として、自分が本当に求めるものが明確になり、より豊かで平穏な日々を送ることができるでしょう。

捨ててこそ


ご覧いただき有難うございます。
念水庵 正道


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