eForestの全曲レビューと考察の話
どうも!さんぜです。
最近唐突にXで呟き始めたとはいえ、まだまだ本調子には程遠いと感じる今日この頃です。
という事で、復帰後初の記事として私がこれまで活動してきたメタバースともビジネスとも全く関係ないCDの全曲レビューをしたいと思います。
謎のパーカッショニスト
NARUKI SHIGEKIとは?
え、誰・・・?
正直そんなヤツ知らん。モテそうな経歴なのに未だに彼女の居ないような、そんな同姓同名の奴しか知らない。
なので、このアーティストが一体何者なのかの解説は私には出来ない。
しかし、少しでもイメージが出来るように、文章に様々な要素を散りばめてみた。
彼が何者なのか、彼と私の関係性とは何なのか。私の文章の端々から想像してみてほしい。
CD『eForest』とは?
1枚組の12cmCD。10曲入りであり、全楽曲がインストゥルメンタルで構成されている。再生時間41分51秒。
このアルバムの特筆すべき点は全楽曲が打楽器『エーフレーム』のみで構成されている事だ。
エーフレームとは簡単に言うと、様々な音を奏でる事が出来る電子打楽器であり、2017年に発売開始されたばかりの新しい楽器である。
パーカッションとは、いわゆる打楽器の事であり、主にドラムスティックを使用しない物を指している。
有名な物だとコンガやタンバリンのように手で叩く物、ティンパニやマリンバ(木琴)のようにマレットを使用する物、特殊な物だとトライアングルやウィンドチャイム、クッキーの空き缶等も該当する。
エーフレームはタンバリン等と同じく手で叩く楽器であり、叩く際の強度や擦る速度等によって音色が変化する。
つまり、まだ用途や認知が広まっていないこの楽器を世に知らしめるようなCDだと言える。
題名のeForestとは?
この頭文字eは小文字である事からして、賢い読者であるならネイピア数や離心率、単位ベクトルに使われるeかと思われる方も居るかも知れない。
だがアイツにそこまで考える脳が有るとは思えないので、素直にelectron、つまり電子の頭文字から取っていると考えられる。
次にForestだが、これはシンプルに『森』、もしくは『森林』で間違いないだろう。Fが大文字になっている為、『For』と『est』で別々の意味、なんて事は無い筈。
なので、直訳すると『電子の森』と読む事が出来る。
しかし、私はもう一つ、このタイトルに意味があると考えている。
というのも、このCDは先程も述べた通り全楽曲が電子打楽器『エーフレーム』のみで構成されているからだ。
エーフレームは英語で『aFrame』と表記される。つまり、このeForestというタイトルも、エーフレームの英語表記を意識した物ではないだろうか。
さて、ここからはそれぞれの楽曲について一つ一つ簡単に解説していきたい。ついでにポエムも書いたので、まだ届いていないなら想像してみて欲しい。
先に断りを入れておくが、題名の隣の意訳は楽曲を想像しやすいよう私が勝手に付けた物であり、公式の物ではないので悪しからず。
①『Arabian』(意訳:アラビアの)2:16
ファーストナンバーに相応しく、印象に残りやすいアップテンポの楽曲。
まるでアラビア楽曲のような上下に流れる音と、それに合わせた音圧の変化を楽しむ事が出来る。
君は砂漠に一人放り込まれた。砂の流れる丘から、オーロラのような色彩色が映える夜空を見る。しかし助けはやってこない。
走ったり、歩いたり、そこにラクダは居ないし、オアシスも見つからない。しかし、この空間に入り込んだら最後、砂漠を歩くしかないのだ。
少しすると、遠くで踊り子が一人で舞っているのが見えた。綺羅びやかな衣装をまとったそれは幻影か、それとも罠か。
②『Horror』(意訳:恐怖)1:53
まるで肝試しのような入りから始まるこの楽曲は、低く下がる音が多く、おどろおどろしい小刻みに揺れる音が特徴だ。
森の奥にある廃屋。ここは墓守の家だったのだろうか。中に入れど誰もおらず、何もなく。掲げたランタンの光が不安げに揺れる。
床板をギィと鳴らし、何を求めるでもなくひたすら前へと歩く。
しかし、ここには誰かが居ると、君の脳内は確信するだろう。何故ならば、それは、もう既に、君の背後に。
③『Space』(意訳:宇宙)6:48
序盤の山場。一つ一つ空へ昇っていくような音はまるで宇宙船の発進を思わせる。
この宇宙船は遠くから飛んできたデブリにぶつかったのか、軌道に上手く乗ることが出来なかった。
まるで前途多難な出だしだが、無事軌道修正を終えた宇宙船はひたすら経由地であるワームホールへと突き進んでいく。
ワームホールの中はひたすら静かであり、ねじれた時空が君を運んでゆく。
ワームホールを超えると、そこは深宇宙。星は既に見えず、ただ暗闇を突き進む。
④『Percussion』(意訳:打撃)1:58
まるで民族楽曲のようなリズミカルな前半と、逆再生による巻き戻りが特徴的な楽曲。
ここはジャングルの奥地にある集落。君はマデイラ川に浮かぶ小舟でここまでやってきた。
君を歓迎するは若い衆。太鼓を叩き、まるで今日が祭りかのように宣言する。”ベン、ビンド!”(ポルトガル語でようこその意)
しかし、祭りの途中、君は不意に目眩に襲われる。先程までの記憶が見える。君はどうやってマデイラ川の小舟でここまで来たのかい?
そんな事を回想していると、気がつけば演奏はもうお終い。君は感嘆の声を上げ、惜しみない拍手をすることだろう。わーぱちぱち。
⑤『Dark』(意訳:暗闇)4:06
前半は一つ一つの音が離れて配置されており、音の歪みを楽しむ事が出来る。後半に入ると音が繋がるようになり、連鎖反応が起き始める。
五里霧中、視界は不良。まるでゾンビ映画に出てくるゾンビのように、君は両腕を水平に上げながら暗闇の中を歩いてゆく。
今日は新月であり、月明かりは見えない。そういえば星は何処に行っただろうか。必至に目を凝らしてみるが、シリウスもカノープスも見当たらない。
不安げに伸びて揺れる腕は確信を得ることはなく、ただ出口に続く風がすーっと通り抜けていた。
⑥『Scream』(意訳:悲鳴)1:41
転がるような音の繋がりが特徴の楽曲。タンタカタンタンタカタン。
貴方は叫んでいた。迫りくる。何が?何かが。タンタカタンタンタカタン。
カンッ!の音が増える度に君の鼓動は早くなっていく。何を焦る必要があるのだろうか。しかし心拍数は右肩上がりだ。カンッ!
さぁ、階段は下り道。おっと、そこは気をつけて。足を踏み外さないように。それと1段ずつ丁寧に降りるんだ。そうすれば、ほら。落ち着いた?
⑦『Diver』(意訳:潜水士)7:06
中盤の山場。鼓膜の側で揺れる音はまるで深海を思わせる。
潜水を続けていけばいくほど、、君の心には不安と期待が芽生えていく。大丈夫。まだ酸素は残っている。
そういえば、有機デトリタスにはもう見慣れたかい?そうさ、マリンスノーの事だよ。沈んでいく有機デトリタスの群れには感動を覚えるだろう?
海底にたどり着いた君が見たのは、深海魚の亡骸か、それとも昔沈んだ木造船か。まぁ、なんでも良いじゃないか。先に進もう。未知が僕らを待っている。
⑧『Scale』(意訳:尺度)0:56
音がねじれていく様子を観察出来る。『Arabian』を更にアップテンポにしたような、流れる音が癖になる。
上と下の距離が一定ではないということは、上と下の速度や反発係数も常に異なっているという事。
白い螺旋階段がぐるぐる。ぐーるぐる。
歩けど歩けど、そっちは上なのか下なのか分からない。
そこで問題。僕は今何処に居るでしょうか?
あーあ、残念だったね。僕は君の選んだ向きとは違う方向に居る。こっちだよ!
⑨『Mystery』(意訳:不思議)4:53
びよーん。音の震えが君の首を傾げさせる。これはどういう音楽なんだろう?
頭に浮かぶはてなマークがくるくると回転する。
びよーん。びよーん。あれってなんだろう。砂時計?
しかし流れる速度は一定にはならない。びよーん。
この砂時計は一体なんの時間を測っているんだろうね?ひっくり返したらどうなるんだろうね?あー、不思議だなぁ。謎だなぁ。よくわかんないや。
とりあえず、砂が全部落ちるのを待ってみよう。落ちたら、それから。
⑩『Villains』(意訳:悪役)10:17
終盤の山場。ノイズミュージックを軸に音をぐねぐねと変化させていく、10分超えの大作。
このカートゥーン調の悪役(ステレオタイプ)は常に単純明快な悪巧みをしている。
内容は洒落にならないのに、何処か抜けているし、その抜けが原因で、さも当然のように失敗する。
それを見て誰かがこう言った。「アイツは憎めない」。
果たしてそうだろうか?実は彼の計画は順調に進んでいるとしたら?今までの失敗は全て演技だとしたら?
さあさ可惜夜の金属工場。彼の取っておきの計画は成功したのか、それとも失敗したのか。果たして。
総評
個人的には、中々癖のある曲が揃っていると感じたこの一枚。
聞きやすさは重視されておらず、どちらかと言えばアーティスト本人の世界観に近づくための楽曲群となっている。
ただし断言するが、このアルバムの目的だったであろう「エーフレームの可能性を広げる」ということに関しては、大きく成功していると言える。
実際、このアルバムに収録された楽曲は、上記で解説した通りどれも毛色が違っており、『これらが全て1つの打楽器だけで作られている』ようには思わせない作りになっているからだ。
今後エーフレームがどのような発展を遂げるのか、NARUKI SHIGEKIが今後どのような活躍を見せてくれるのか、そんな期待を感じさせる一枚だったと言えるだろう。
amazon等で販売中なので全員買うように。
今日はここまで。また次回。