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今年中に何とか読みたい本|時間と知識のトレードオフ

これから読もうと思っている『課税と脱税の経済史』というみすず書房から発売される本がある。税金の歴史に関する本で「税金は払うより、読んだほうがずっと楽しい…」という魅力的なコピーで紹介されている。

普段は節税したり政府に文句を言ったり、しょうがなく支払ったりしているだけの税金だが、そこを敢えて歴史から知ることで見える景色が変わりそうな気がするので、どうにも興味を惹かれてしまってならない。装填も美しくて魅力的な一冊だと思う。

ただ、少し躊躇してしまうのが640ページという分量だ。課税と脱税というひとつのテーマで640ページを占めるとなると、読む側にも根気と時間が必要になる。忙しく生活しながら税金について640ページも読むことができるだろうか、と考えてしまっている。

今までもこういう分厚いけれど興味を惹いてくる本というのは何度もあった。結局読まなかったものもあるし、積読となり今も棚に眠っている本もある。

しかし中には読み切ったものもある。一番最近だとデイヴィットグレーバーの『万物の黎明』がそれにあたる。‎ 708ページの大著であるうえに内容も難しい。

『万物の黎明』は今まで語られてきた、人類が農耕を始めたことや集団認知の能力を得たことから繁栄が始まって現代に至っていく、というスティーブンピンカーやジャレドダイヤモンドが描いていた進化史のスタンダードなストーリーを根本から覆す物語を、考古学的な実証データを用いて証明していく。僕がここで簡単にまとめることは難しい内容なので、興味がある人は実際に読んでみてほしい。

これは1カ月以上の期間を掛けて何とか読み切った。休日はもちろん、仕事の時も休憩時間には『万物の黎明』を持参して休憩に行って読み、平日の仕事終わりも少しでも読み進めて何とか読み終えたのである。

読んでいる間に知的興奮を覚えたり、人類史の解釈がコペルニクス的転回を迎えたり、そういう瞬間も確かにあったけれど、さすがに長すぎて「早く読み終えて他の本を読みたい」という気持ちになっていたのが正直なところだ。

この経験がどうしても頭に残っていて、『課税と脱税の経済史』に手を出し切れないでいる。『万物の黎明』を読んでいた時より、今の方が仕事が忙しいし、きっと読み切れないんだろうなぁと思う。

ただ、読まずにいるモヤモヤ感は、これからも高まっていくに違いなく、この本を読み切った時の自分を想像すると、やはりチャレンジがしたくなってくる。

結局のところ、読書も他の趣味や他の本に費やす時間とのトレードオフなのだ。どちらかに時間を費やしたらどちらかは諦める必要がある。もちろん、睡眠や食事の時間を諦めるのもアリだが、身体にはよろしくない。

それでも、『万物の黎明』を思い出すと「頑張って読んで良かった」と未だに思うことができている。自分を価値観を変えてくれたのだから、そのためにたくさんの時間が費やされても、十分な見返りがあったのだ。

だから、とりあえず『課税と脱税の経済史』は買う。積読になることは覚悟のうえで。

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