幾何学的美意識について
イスラム風モザイクタイルを踏みしめながら、洋三の思索は取り留めなく続いていた。
「幾何学的な美しさというと、アールデコ建築やフランス式庭園、そしてこのイスラム風モザイクタイル等、人工物が際立つ様に想えるが、実は自然界にも多く観られるよなぁ。そういえば此れもそうだよ。」
洋三の肩に舞い降りた今年初めての雪の一片は、将に幾何学的美意識を体現していた。
「砂漠に現れた風紋、アガットの断面、ヒョウモンガメの甲羅、時計草の花……実際、自然界は幾何学美の宝庫だな。」
自然が生み出す幾何学美で洋三が最後に思い浮かべたのは、もう結ばれて五年目を迎える最愛の妻の美しい姿だった。
洋三は未だ知らなかった。最愛の妻の自然美は、彼女自身の努力の結晶である事を……。
〈掲載…2007年 製品[ジオ]配布用サンプル袋〉