レグレット
実は世界征服を目論んでいるという噂のある、世界規模のコーヒーショップチェーンで待ち合わせと聴いて、何故、自身の事務所で打ち合わせないのか不思議に思っていたが、社員さんに聴かれたら恥ずかしいやんという言葉を聴いて合点がいった。少し憔悴した様にも見えるその姿には、吝嗇でふてぶてしい何時もの面影は無く、こんなんなると思わへんかったという自嘲とも思える言葉に、如何に彼が今、後悔しているかが窺い知れた。
「せやからな、恥を忍んでまぁ一回せんせにお願いしたいねん。あかんやろか。」小さな穴からコーヒーを飲む事が無かったらしく、幾度もあつっと言いながらすする様を観て、少し哀れに思った洋三は、今月分からのゴーストを承諾する事にした。
「ほんでな、ほんまは自分で書いてるんやけど、ゴーストに頼んでる設定ちうことにしたら、斬新なんちゃうかなぁと思て、詫び入れてもう一回せんせに頼んで、文章がうもうなったちゅう感じでいかへんか?」
はいそんな感じで行きましょう。洋三は応えた。
〈掲載…2017年9月 週刊粧業〉