翼が生えた日(後編)
自分でも驚く程の痙攣を伴って洋三は目覚めた。「危なかった。小説や漫画では御法度の夢オチをしてしまうとこだったよ。」大きな声と痙攣から目覚めた洋三は、照れ隠しとして傍らにいた妻の真帆に要らぬ説明をしてしまった。
夫の夢の内容に全く関心の無い真帆は、うなり声に近い生返事をして洋三に背を向け、改めて夢魔の導きに従う様子だ。
地方の小企業からの瑣末な依頼の他は、これといった仕事の無い現状で、何のメッセージを込めてあの様な夢を観せたのだろうと、己の無意識と向き合おうとする無駄な努力は、「二度寝」という最高の誘惑に霧消して、又もや洋三は瞼の痙攣を伴う夢の世界へと誘われるのだった。
〈掲載…2009年 製品[エル]の配布用サンプル第2弾 袋〉