【272球目】合理的かどうか
仕事をしていると、これは合理的なのかどうかという判断を迫られることがあります。
そういった時は、ほとんどが合理的ではない判断をしている自分がいます。経営者はよく想いとソロバンの両方を持てと言われます。まさにその通りで、どちらかに偏ってしまっては上手くいかない時もあります。今日はそんなお話です。
サンテックという子会社
2018年6月に三陽工業の子会社としてサンテックという会社をM&Aしました。
サンテックは三陽工業のM&A第一号になります。このM&Aが合理的判断であったか?と聞かれると答えはNOです。もし、当時のサンテックの状況を今の私たちが調査を行い、買収をするための方法を考えたとしても、その買収金額には到底たどり着けません。そして、金額が合わずにきっと成立しなかったでしょう。それを想いだけで買いました。
そんなサンテックは最初の1年は厳しかったですが、2年目以降は黒字化に成功し、今では三陽工業グループとして、胸を張って良い業績を出してくれています。三陽工業の生産推進グループ社員もそこで活躍し、子会社になってからの2人の社長もそこで成長し、業績にも寄与してくれている優良な会社に生まれ変わっています。買収に踏み切れた想い、その想いを紹介していきます。
想い①
サンテックを買収する際に、まず始めに誰が社長をするかを考えました。
その際に、適任者がいました。現在、三陽工業で役員をしている木下さんですが、彼は当時、三陽工業と取引のある会社を1人で経営しており、そういった人材がサンテックの社長をすることで間違いなく成長に繋がると確信していました。M&Aを進めていくにつれて、手を引くタイミングもありましたが、彼を社長に置く=三陽工業の仲間になってもらう、そんな想いで突っ走っていきました。
それが1つ目の想いです。
想い②
もう1つの想いは三陽工業の隣地であること。
実はサンテックの今の敷地は、数年前に入札が行われ、三陽工業としても札を入れた場所になります。結果、サンテックが最も高い金額でしたので、サンテックが購入へと至った訳ですが、それ位良い立地になります。三陽工業の隣地です。
それだけでもプレミアがついていますよね。
経済合理性
経済合理性で考えると、あの時のあの金額でサンテックを買うことは否です。今の私たちならまずは否と判断するでしょう。
しかしながら、その金額でしか買えなかった。金額折り合わなければ、M&Aが成立しませんでした。想いが先行していたので、その金額でも買いに行った。結果、今のサンテックがあります。経済合理性のみで考えた時にM&Aをやろうとするととても簡単です。数字のみで買う買わないを判断する。とても簡単ですし、誰にでもできます。数字以外のプレミアをいかに見つけていくのか。もちろん、できる範囲の金額ではありますが。
そこで経営者が育つことができる、生産推進グループ社員が育つことができる、既存の社員も以前より環境が整った会社で働くことができる。経済合理性だけで判断をしてはいけない。今でも強くそう考えています。サンテックをM&Aした約4年前と今では様々な経験を積んだ分、見る目も養われています。
しかしながら、M&Aに最も大切なことは想い。もっと言うと事業に最も大切な事は想いです。
経営者が想いを持つことは当然として、その想いを経営者以外でどれくらいの仲間が持つことが出来ているか。それが大切なことです。企業活動は原則数字で判断をされます。想いも結果が伴わないとただの綺麗ごとです。しかし、結果を出す為には想いが必要ですし、その想いがあるからこそ仲間が増えてくると考えています。
経済合理性を全く無視する訳ではありません。
経済合理性を重視して、撤退した拠点もあります。赤字拠点の撤退は経営者が収益を上げるためにできる1つの行動です。年間で500万の赤字の拠点があるとするならば、撤退の意思決定を行うと次の時は500万の赤字が消えます。プラス500万の意思決定になります。
想いとソロバン。そして、自分は想いが強いと自覚しているからこそ、経済合理性を大切にしますし、大切にしている上でそれでも譲れない想いは出すようにしています。
三陽工業のM&A。
そのほとんどが事業承継者不足、技能承継者不足です。そんな製造業における大きな問題も解決していきながら、日本の製造現場を元気にしていきます。
本日もありがとうございました。明日もよろしくお願いします。