こんにちは。santas代表の宮崎です。
今回の記事は、前回記事『AIは名建築をデザインできるか』に引き続き
AI検証の第2段です。
今回は建築系のプロジェクトマネジメントに関してです。
私は10年以上建築業界に関わっており、デザインから企画、プロジェクトマネジメントまで幅広く担当してきました。今回は、どの職種でも必要なプロセスである『ゴール設定』と『タスク整理(Work Breakdown Structure)』がAIでどこまで可能かを検証してみます。
条件設定
今回は特にAIが活躍しそうなプロジェクト立ち上げ期のゴール設定とタスク管理がうまく機能するか検証してみます。プロジェクトはオフィスの空間コンセプト立案までとします。AIはすべてChat GPTを使用します。
先に結論
今回はテキストベースの検証で、分量も多くなってしまったので、先に結論をお伝えします。
ゴール設定に関しては、ゴールを設定していく中で、検討しなければいけない課題が見えてくるのが魅力的でした。そこで見えてきた課題の検証商法をタスクに落としこむプロセスは比較的スムーズに出来たと思います。但し、これはあくまで私が比較的マネジメントの経験がある上で検証したものなので、ある程度自分の頭の中で仮説を持ちながら、AIに指示を出していたから出来たことなのかもしれません。次のトライとしては、私が全く経験のない業界のプロジェクトマネジメントが出来るかどうかを試してみたいと思います。
検証1:ゴール設定
ゴール設定を支持するためのプロンプトは、KANAIさんの記事で紹介されていたゴールシークプロンプトを拝借しました。私からはゴールシークプロンプトを記入した後、以下のやり取りを行いました。AIから質問をされて、答えていくことで、ゴールがどんどん具体的になっていく流れが分かって頂けるかと思います。
私:
新しいオフィスのコンセプトを提案するプロンプトを作成したい
私:
目的:多様な働き方を実現するため
対象:本社で働く従業員
予算:あります
期限:3か月
私:
制約や条件:敷地は渋谷、オフィス面積は500㎡、従業員数は50人
事例や資料:イノベーションを多く起こしている企業のオフィスを参考
重視したいポイント:従業員の幸福度、環境への配慮
こんな感じで、質問に答えていくとどんどんゴールが明確になっていくのは、自分の頭を整理するツールとしてとても有用だと感じました。
検証2:タスク整理
検証1のゴール設定を詰める中で、課題やニーズの整理を行う必要があることが分かってきたので、どの様に検討するかをタスクに落とし込む作業を試してみました。今回はまんじゅさんの記事で紹介されていたGTDプロンプトを拝借しました。私からはGTDプロンプトを記入した後、以下のやり取りを行いました。こちらはAIから個別のタスクに対して質問をされ、答えていくことで、タスクがどんどん具体的になっていく流れです。
私:
プロジェクト名:オフィスのコンセプト立案
タスク:ニーズ調査、課題抽出、プレゼンテーション
私:
ニーズ調査は非常に重要で、まだ始めていない。期日は7月末
私:
ニーズ調査に必要なアクションは以下のとおりです。- 社内の関係者にヒアリングする- オフィスの現状を観察する- 他社のオフィスデザイン事例を調べる
私:
課題抽出は重要で、まだ始めていない。期日は7月中旬
私:
課題抽出に必要なアクションは以下のとおりです。- ニーズ調査の結果を分析する- オフィスの問題点や改善点を洗い出す- 課題に対するゴールや指標を設定する
私:
コンセプト案の作成は非常に重要で、まだ始めていない。期日は8月下旬
私:
「課題抽出の結果をもとにコンセプトの方向性を決める」「コンセプトに沿ったオフィスデザインのアイデアを出す」「アイデアを評価し、最適なものを選ぶ」
私:
プレゼン資料の作成は重要で、まだ始めていない。期日は9月中旬
私:
「コンセプト案の内容を整理する」「プレゼンの流れや構成を決める」「スライドに情報や画像を入れる」「プレゼンの練習をする」
私:
プレゼンテーションは非常に重要で、まだ始めていない。期日は9月下旬
私:
「プレゼン資料の内容を確認する」「プレゼンの目的やメッセージを明確にする」「聞き手のニーズや反応を想定する」「プレゼンの時間や場所を確認する」
余談:仮のコンセプトを画像生成AIに指示したら
意外と素敵な画像が出てきました。通常はリサーチを経て空間モデルを検討しますが、いきなりビジュアルイメージから意見を引き出すことが出来るのも、AIの有効な活用方法かと思います。
■筆者
宮﨑 敦史 / Atsushi Miyazaki
慶應義塾大学大学院修了後、Speac、日建設計、Arupを経て2022年にsantas Inc.を設立。「クリエイティブ」「マネジメント」をコアスキルとして、主に建築・都市における企画、設計、プロジェクトマネジメント業務に従事。さらに、コミュニティ・エンゲージメント活動、環境建築に関する書籍の出版など、幅広く活動中。様々な専門家と協働し、社会に新しい価値を生み出すことを信念としている。
https://santas-inc.jp/