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右松たかひろ宮崎県議会議員のセクハラ事案に見る、国語力と議員の資質について
2023年3月22日(水)、宮崎地方裁判所は、現職の宮崎県議会議員・右松隆央(みぎまつたかひろ/以下「右松県議」)が、当該議員事務所に勤務していた女性に対してセクハラ行為を行った事案について、右松県議のセクハラ行為を認め、77万円を支払えという判決を出しました。
判決内容はメディアの報道によれば以下の通りです。
上記の中から判決に関するものを下記に抜粋します。
22日の判決で宮崎地方裁判所の後藤誠裁判長は「抱きついた行為は原告の明確な同意もなく行ったもので恐怖感や性的不快感を与える行為だ。ホテルへの継続的な誘いは優越的立場を背景にしたもので、それまでの経緯も踏まえるとホテルで身体的接触を受ける不安感を抱かせる」などと指摘しました。
そして「親愛・感謝の情を表現したもので社会通念上、許容される」などとする議員の主張は認められないとしたうえで「これらの行為は原告の性的な自由や人格権などを侵害する違法なセクハラだ」として議員に対し77万円の支払いを命じました。
2023年4月に統一地方選挙を控え、現職の右松県議は自由民主党公認で出馬する予定になっています。
このエントリーは、これまで3期務めてきた右松県議が、4期目を務めるに相応しい県議会議員候補かどうかを皆さんに判断していただきたいと思い、情報をまとめさせていただきました。
双方の主張
この裁判は2022年6月、宮崎県議会の右松隆央議員の事務所で働いていた元職員の40代の女性が、2019年から2021年までの3年間、議員から抱きつかれたり、ホテルに継続的に誘われたりするなどのセクハラ行為を受け、就労ができなくなったため、右松県議に対して220万円の損害賠償の支払いを求めていたものです。
この訴訟について右松県議は、同年7月20日下記の通り、ご自身のWEBサイトで主張されています。
上記ブログより下記を抜粋します。
この件におきまして、私の元事務所員の代理人弁護士である成見暁子氏から、真実とは異なる言い分に基づいた金銭要求がありました。私としましては、これは断じて受け入れられず、本行為は極めて憂慮すべきことと認識いたしております。元事務所員の言い分は真実とは全く異なるものであり、私の担当弁護士から提出された答弁書と準備書面が唯一の真実であります。
裁判所に提訴された以上、セクハラがあったのかなかったのか、真実か虚偽かの判断は宮崎地方裁判所とその裁判官が行うものです。原告、被告が判断することではありません。
しかし、右松県議は提訴された事実について、訴えられている被告の立場であるにもかかわらず、自分の主張こそが唯一の真実だと述べられています。
この時点で少なくとも冷静ではないということ、なおかつ自分は正しいという強い固定観念をお持ちのようであるように見受けられました。
上記の文章を、公職にある者としてのコメントとして出すならば、以下のような文章で発せられるべきものではないかと思いました。
ブログの表題の通り、私の元事務所員から訴訟の提起がありました。県民の皆様、支持者の皆様にご心配をおかけする事態となってしまい誠に申し訳ありません。
この件については、私の元事務所員の代理人弁護士である成見暁子氏から、私の認識とは異なる言い分に基づいた金銭要求がありました。私と致しましては認識が異なるため、これを受け入れることはできませんでした。
報道されている元事務所員の言い分は、私の認識とは全く異なるものであります。当然、私の担当弁護士から私の主張に基づいた答弁書と準備書面を提示しております。
本件は訴訟提起されている以上、司法の判断に委ねたいと考えておりますが、現在報道されている内容は私の認識とは全く異なるということは明言させていただきます。
いかかがでしょうか?
宮崎県議会副議長を辞任
しかし同年9月1日、右松県議はそれまで務めていた宮崎県議会副議長の職を辞任しました。
これは前述の訴訟提起があり、その裁判が続いている中、訴訟を抱えた者が副議長を務めているのはよろしくないと一部の県議会議員からの声があがったためとされています。
裁判結審
当該裁判は2023年1月11日に口頭弁論と尋問があり、結審しました。
その時の報道内容は読売新聞によれば次のとおりです。
訴状では、女性は2019年2月から事務所に勤務。右松県議から県議選の祝勝会名目でホテル内のレストランでの食事誘われ、食後に客室まで呼ばれて抱きつかれるなどしたと主張。
その後も21年7月頃までの間、温泉旅行に誘われたり、部屋番号が記された付箋を貼ったホテルのパンフレットを渡されて一緒に行くように求められたりしたとしている。
女性は尋問で、事務所での勤務を続けた理由について「嫌だったが生活もあった。事務所には(県議の)妻もいるので(セクハラ)はもうしないのでは、と思った」などと証言した。
一方、右松県議は尋問で女性側が性的な目で見られていたとの主張に対して「自意識過剰だと感じた」と主張。客室で抱きついた行為については「軽い抱擁で(女性には)事前に確認していた」と主張した。
裁判官から「(女性が)断りにくいのではという心配はしなかったのか」と問われると「警戒心を感じていたらお声がけしかった。その場の雰囲気ではそう感じられなかった」とした。
判決報道で初めてわかったこと
2023年3月22日、宮崎地方裁判所は判決を出しました。
その内容は前述の通りですが、MRT宮崎放送はもう少し踏み込んだ報道をしています。
22日の判決で宮崎地裁の後藤誠 裁判長は、女性がセクハラと訴えていた9つの行為のうち、右松県議が、ホテルで、女性に抱きつくなどした、3つについてセクハラと認定。
その上で、女性が、「精神的苦痛を被った」として右松県議に対し、77万円の支払いを命じました。
MRT宮崎放送女性が訴えていたセクハラが9件あったこと、そして今回、宮崎地裁がセクハラと認定したのが3件であったと公表しています。
まさか9件もあったとは驚きです。
さらに毎日新聞は、適応障害の部分に踏み込んでいます。
一方、適応障害となり、就労不能になったとの女性の主張は「証拠によっても認められない」として退けた。
原告の就労不能が、この事案よって引き起こされたという因果関係を、この裁判で立証することは難しかったでしょうね。
判決後の原告の主張
判決後の原告は記者会見を開き、判決についてコメントしました。この主張もメディアによって違いがありました。
「議員のセクハラ行為について違法性があると認めてもらい感謝しているが、もっと踏み込んで認めてほしかった。また、県議会としてもセクハラやパワハラについて理解を深めるために行動してほしい」
「違法性があると認めてくれたのにはすごく感謝しているが、証拠がないものに関しては認められなかったので、それは残念に思う」
性的なことは密室で行われるもので、証拠がないと認められないと被害者が声を上げられなくなってしまう
証拠がないと認められないのは司法の常識であり、疑いだけで人を罰することはできません。だからこそ身を守る術が必要なのだと思います。
ちょっと過激な意見になりますが、私が女性が身を守るためにスタンガンとか持ち歩いていいと思いますね。
判決後の被告の主張
判決後、被告側である右松県議も会見を開き、ご自身の意見を述べられました。
「私の認識とそごが相当ある判決だ。訴え自体が虚偽と誇張の内容が占めていて悪質だと感じている。事実と違う点は今後、しっかりと争いたい」
「(抱きついたのは)親愛の情という意味でそれ以上のものは全くありませんし、そこは結審でも申し上げましたけれども非常に相手方が自意識過剰なところがあるのではないかと思う」
「事実とはあり得ないという判断ですので、断固としてしっかりと控訴をもって戦っていく」
まず、「自分の認識と齟齬がある」という主張ですが、裁判所は客観的な判断を下す場所です。従って右松県議の認識など正直どうでもいい話です。
ご自身が何をどう思うと、裁判所は9件のセクハラ事案について3つをセクハラだと認定したのです。それを受け入れられないという理屈は理解しますが、認識と齟齬があるというのはそもそも無関係な話です。
次にMRTの報道にあった「抱きついたのが親愛の情という意味でそれ以上のものは全くありません」という部分については、宮崎地裁の後藤裁判長が判決の中で
「親愛・感謝の情を表現したもので社会通念上、許容される」などとする議員の主張は認められない
とハッキリ否定されています。
判決で裁判長に否定されているものを、わざわざ判決後の会見で持ち出すとか、私には理解不能です。
右松県議が根本的に間違っているのは、議員がそのような思いであるのは間違いないでしょうが、それは議員からの一方的な思い入れであって、「原告が同じ思いとは限らない」というところ。すなわち、想像力が働かないところにあります。
それとも、議員は「自分がこう思っているのだから、相手もそう思うべき」とでもおっしゃりたいのでしょうか?
それとも「自分はこう思っていたのだから、わいせつなことではない」とでもお考えなのでしょうか?
このエントリーを書いている私は原告、被告いずれも無関係な第三者ですが、すくなくとも「思いの押し付け、押し売り」はご遠慮いただきたいと思いました。
また原告に対して「自意識過剰」とは行き過ぎた表現ではないかと思いました。本件は9件のセクハラ事案がありました、認定されたのは3件ですが、疑惑としてさらに6件あったとすれば、原告がそのように受け止めても致し方ないところはあるのではないかと。
ちなみに、私なら、上記3メディアのコメントは次のように改めます。
「私の認識と大きく違う判決が出てしまったことは誠に残念。本件については私自身認識していない部分が多く占めていて受け入れ難いのは変わらない。事実と違う点は今後、しっかりと争わせてもらいたい」
「(抱きついたのは)私としては親愛の情という意味でそれ以上のものは全くなかった、その主張が認められなかったのは残念。原告は「性的な目つきで見られていた」と主張されているが、私はそんなつもりは全くなく、やや独りよがりのお考えなのではないかと思ってしまう」
「今回の判決で出たことは事実として受け止めることはできないというのが私の判断ですので、しっかりと控訴をもって戦っていきます」
いかがでしょうか?
県議会議員としての資質
この判決は地裁判決ですので、控訴することができます。右松県議は即日控訴されたようです。
右松県議は現職の宮崎県議会議員であり、2023年4月9日に投開票される予定の統一地方選挙(宮崎県議会議員選挙)に自民党公認候補として立候補が予定されています。
この裁判の最終的な行方は控訴されれば高裁に、さらに上告されれば最高裁まで争われます。しかし、一審の宮崎地裁でセクハラが認定された事実に変わりはありません。
自民党宮崎県連は、一審とはいえ裁判所がセクハラが認定された候補を、どのような大義名分で公認されるのか、非常に興味があります。
また自民党公認候補として立候補した右松県議が、選挙の結果、県議会議員として再選した場合、それが県民の選択であると判断されます。
その際、国政選挙、知事選挙に続いて、県議会議員選挙もまた全国から笑われるような結果にならないように切に願って止みません。
次期県議会議員になられるのかどうはともかく、右松県議は言葉の取捨選択(言語運用能力)をもう少しお考えになられた方がいいのではないかと思います。
なぜならこのエントリーで右松県議のコメントを引用してきましたが、それぞれのシチュエーションで、適切な言葉の選択できていないように思えるからです。
議員は言葉を武器とし、話す内容、発する言葉によって、人に期待を抱かせて支持を集める存在だと考えています。そうであれば、少なくとも傲岸不遜と思われるような言葉の選択は止めるべきです。
議員だからこそ国語力が問われる存在なのではないでしょうか。
そしてそれこそ議員に求められる大事な資質ではないでしょうか。