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力の指輪の画面が「とにかく暗い」理由とその対策〜海外ドラマあるある〜

『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』シーズン2がついに配信されました!

そこで今日の話題は……「配信話のレビュー」でもなく、「原作との参照」でもなく、「画面の暗さ」です。(なぜ

海外ドラマあるある:画面が暗い

せっかく新シーズンが始まったのに語るところがそこかよという感じですが、語らずにはいられません。というのも「画面が暗い!」という話題は、今や海外ドラマあるあるだからです。

実際に力の指輪の感想を眺めていると、さすが普段は海外ドラマをあまり観ない方々にもリーチしている注目タイトルゆえか「画面が暗い…」「なにも見えない…」という感想が多く見られます。本日は力の指輪の画面がなぜそんなに暗いのか、その理由と対策をお伝えします。このポストが皆様の疑問解消にお役に立てれば嬉しいです。

海外ドラマの画面が暗い理由:HDRという技術

近年の海外ドラマ、特に大作と言われる海外ドラマの画面が暗いのには理由があります。なにもいたずらに画面を暗くしたり、ましてや調整ミスという訳ではありません。

大作海外ドラマの画面が暗い理由は、ズバリ「HDR」という技術が関係しています。HDRの詳細な技術説明については私は専門家ではないので割愛しますが、簡単にいえば「映像をより色鮮やかに、かつ表現できる色合いの範囲を広げる技術」です。

そして、このHDRの技術の規格の一つに Dolby Vision というものがあります。Dolby Vision は映画館においてはドルビーシネマというパッケージで知られています。現在、日本では全国に10館しか対応映画館がありません。

この技術は先述した通り、本来は「映像をより鮮やかにより広い色合いを表現できる技術」なのですが、ただ色合いの鮮やかさの違いを視認するのはやや難しく、ドルビーシネマのデモムービーでも印象的にアピールされる要素が別にあります。それが「真の黒」です。

映画館で実際にこのデモムービーを観たことがある方は印象に残っているかと思います。しかし、このデモムービーをただ観てもイマイチよくわかりません。なぜなら Dolby Vision の「真の黒」は映像だけでなくスクリーンやディスプレイ側も技術的に対応している必要があるからです。

「暗い映像」がHDR技術を活かす

専門用語としては「黒浮き」と言われているようですが、真っ暗な部屋でTVで真っ暗な画面を流している場面を想像してみてください。TV画面がついているのかどうかわかるでしょうか?ブラウン管や液晶画面なら、まず間違いなくわかりますよね。なぜなら映像として色が黒であっても真っ暗ではなく光っている黒だからです。これを「黒浮き」と言います。

黒浮きの例(画像出典:VAとIPSの違いって何? 液晶テレビの基本動作を知る!

しかし「黒浮き」が HDR に対応した映像を HDR に対応した映画館orディスプレイで観ると映像が暗転した瞬間にテレビ画面の輪郭が視えなくなります。この視覚効果はかなり印象的で、映像体験として違いを非常に認識しやすいポイントです。ドルビーシネマがデモでアピールするのも頷けます。

つまり、海外ドラマ、とりわけ大作と言われる作品に関しては、この最先端技術であるHDRを作品に十分に活用しようという流れが前提にあり、それゆえにHDRを視覚的に1番体感しやすい「黒の表現=暗い場面」が増えているという背景があるのです。

ちなみにですが、あくまで私の体験した中での印象ですが、映画に比べて配信作品が中心であるドラマは、この黒の表現が圧倒的に攻めています。というのも映画作品の場合は先述した通りドルビーシネマに対応した劇場は日本全国に10館しかない状況ですから、HDR前提で映像を作ることは不可能に近いからでしょう。黒が作品のテーマになっていた『ザ・バットマン』も実際にドルビーシネマで鑑賞しましたが、HDR前提の映像とは言いがたく、技術をフルで活用した映像作りには思えませんでした。

一方で配信作品に関しては、とりわけ Apple TV+ 作品とAmazonオリジナルは本当にHDR前提で作品を制作していると感じます。もはや、HDRで観ないと観にくい。暗すぎる。作品が配信されるたびに「画面が暗い…」という感想が量産されることが日常となっています。

ここまで技術的な事情として海外ドラマの暗さをお伝えしましたが、実際に適した環境で視聴すると没入感が素晴らしいのも事実です。暗闇のシーンでは本当に部屋に暗闇が訪れ、登場人物と一緒にどこに敵がいるのかという臨場感を楽しめます。また、適した環境で鑑賞すれば観づらいということもありません

対策①:Apple と Amazon は HDR 対応機器を買わせたい。TVをLED系にしよう!

さて、海外ドラマの大作ドラマが必ずといってよいほど画面が暗い背景をお伝えしましたが、ここからは、その対策をお伝えします。

見出しが最悪なことになっていますが、つまるところはこれです。とりわけ Apple と Amazon は自社でデバイスを作っている or 売っているからか、本当に画面の暗さに容赦がありません。HDR対応ディスプレイで観てね!ということなんでしょう。

ディスプレイにおいて「暗い映像」の見え方が圧倒的に変わるかどうかの要因は「有機ELディスプレイもしくはLED系ディスプレイ」かどうかです。ぜひ皆様もご自身のTVが有機ELもしくはLED系TVかどうか確認してみてください。LED系ディスプレイというのは「ミニLED」や「マイクロLED」といったディスプレイです。

有機ELもしくはLED系のディスプレイが液晶画面とは根本的に「黒」が異なる技術的な解説はこちらをご覧ください。


対策②:TVが液晶画面の場合

では、あいにくTVが液晶画面であった場合にどうすればよいか。まず私が最もお勧めする方法は「iPhone で観る」です。

iPhone は iPhone X 以降は基本的にSEを除いて有機ELディスプレイが採用されています。iPhoneをお持ちの方はぜひ部屋を真っ暗にしてiPhoneで力の指輪やApple TV+を観てみてください。暗転するシーンや暗闇のシーンで素晴らしい体験をできるはずです。

もし液晶テレビでどうにか観やすくしたい!という場合には、二つのポイントを抑えることでHDRに限りなく寄り添って見え方を改善することができます。

部屋を真っ暗にする。有名な「部屋を明るくして離れてみてね」というフレーズは一度忘れましょう。電気を消すだけではなく、カーテンを閉じて真っ暗にすると効果的です。カーテンが遮光カーテンだとなおよし。
② TVディスプレイの明るさをMAXにしましょう!

海外ドラマの暗〜〜い映像を楽しもう!

海外ドラマが大作であれば大作であるほど、真っ暗な暗〜〜いシーンが出てくることは避けられないトレンドと言ってもよいでしょう。それならば、せっかくならばその暗さを楽しんでいきたいところです。

映像作品のiPhone視聴はオタク心とぶつかり合い批判されがちですが、iPhoneディスプレイの技術力の高さは折り紙つきです。ことHDRに関してはハッキリ言って大画面の液晶画面で観るよりもiPhoneでVR的に観た方が技術的に優れていると迷いなく明言できます。食わず嫌いせず、ぜひ一度体感してほしい素晴らしさです。

というわけで、力の指輪を始めとする海外ドラマの映像の暗さについてお話ししました。皆様の海外ドラマライフにお役に立てますように!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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