AIアプリ"Moises"とジャンク・ミュージック
この文章は、スマホアプリ"Moises"について述べたものです。
【Moisesってナンダ?】
Moisesは、音楽データをパート毎に分割する機能を持っている、スマホのアプリです。主な用途は、”モノホンカラオケ”で、歴史的な名演でも、プライベートな録音でも、好きな音源のマイナスワンがサクッと出来てしまうものです。
分割は、AIでやっています。
人間だったら、知っている楽器の音を聴き分ける能力がありますが、MoisesはAIに音声パターンを学習させる事で、それと似た事を実現している訳です。これは、いかにもAIが得意そうな処理ですね。
【やばい性能】
実際に使ってみると、かなり想像を超えて来ます。
無課金枠だと、基本的な楽器編成向けのアルゴリズムで5分間まで処理できますが、小編成の音源ならば、これでも驚愕のレベルでパート分けしてしまいます。キーやテンポも変えられます。
こんな事が、その気になればすぐにできる世の中になってしまった訳です。
【このアプリの使い道】
主な用途は、最初に述べたように、モノホンカラオケだと思います。
ボーカルのボリュームを下げれば、いわゆるマイナスワンが出来ます。
歌に限らず、楽器でも同じです。
フロントの楽器を消す。
それ以外でも、ベース抜きマイナスワン、和音抜きマイナスワンとか。
練習用として、めっちゃ使えそうですね。
【やばい影響力】
倫理的に、使い方は個人用、練習用に限るべきだと思うのですが、これはどう考えても気持ちよくなっちゃいます。公開しちゃう人が絶対に出てくる、これは止められないんじゃないかと思います。
例えば、Moisesで作ったカラオケを使って公開した輩がいたとして、著作権侵害で取り締まるにしても把握と立証が困難ですね。まあ、カラオケまるまるパクリだったら、聴いた人間が認識できるのかもしれないけれど。
もっと面倒くさいのは、単一パートだけパクった場合。
ドラムだけエルビン・ジョーンズだったとして、わざわざ聴き分ける人、聴き分けられる人がどれだけ居るかという問題です。
パートだけの抽出でも、アーティストに利益が還元されれば良いんですけど、現状では到底無理でしょう。
これは未来のAIにしか出来ないんじゃないだろうか。
その視点からは、やばいのが出て来たと思います。
【クォリティ】
すぐにパート分割できて驚愕〜!
なんですが、音色、音質については劣化も存在します。でも、多分これは音響のプロなら絶対分かるけれど、普通の人だったら半数は気にならない程度には、良いセン行ってる気がします。
まだ試してみた位の段階なんですが、正直なところ若干の違和感があります。特に音の反響(リフレクション)が減って、全体的に尖ったような印象です。これはもう、現状では無理な注文で、元からそういうコンセプトなのだと思います。
リスニング用途で聴いてしまうなら、レコーディングエンジニアの仕事はズタズタ状態と言って良いでしょう。
いや、絶対的に凄いサービスだとは思います。AIのノイズ除去サービスでさえ、何じゃこりゃ、と言う所もある中で、このクォリティですから、やっぱり驚愕です。
【何だか気になる事・・・】
ここから、ちょっと話が逸れるんですが、最近気になるんです。
こう、キャッチーだけれど、微妙に劣化した音源。
今回のパート分割だったら、例えばギターなら、これが弦楽器の音であるという学習結果をベースに分けた音。そこには壁に反射した音や、スタジオの天井の響きは入るかどうか不明で、この辺のアルゴリズム自体も発展途上。
で、ちょっとだけ不自然にゆがんだ音。
これ、憧れとかトキメキの対象そのものにしちゃうとまずいと思う。
そういうのが積み重なって行き、人の心のトキメキの居所が、そうした音になって行くと、、、、
どうも、ジャンク・フードみたいな事になりゃしないかと。
ジャンク・ミュージック、ですかね。
それは、体ではなくて、心に効いてしまいます。
【だから】
結局、使い方なんだと思います。
音質・音色が変わったとしても、タイムと旋律は変わらないでしょう。
音の強弱も大きく劣化しない筈です。
多分、そういう物だと見定めて使うのが正解なんでしょう。
コピー機が良い例です。
最初のコピーはそっくりだと思っても、それをまたコピーすると、はっきり判る位に劣化します。
でも、文章だったら書かれた文字は伝わる。
絵だったら、線は変わっても輪郭は伝わる。
アニメの黎明期に、東映動画が日本で最初にコピー機の原理を使った機械(Xerox4024)を入れて、セルに直接輪郭をコピーする方法でフルアニメの制作が可能になったんです。
そんな使い方、見定め方が必要なんだと思います。
【これが当たり前な未来】
余計なお世話かもしてませんが、考えておきたいのが、「これの程度のサービスが当たり前になってしまった、これからの地球」です。
人類の大半は真贋を見分けられないクオリティのパクり、人力では把握出来ない著作権侵害、これが津波のように押し寄せる近未来です。
そして、それがパクりとしても、現行法の保護期限を過ぎればOK。
その判定は、AIにしか出来ない。
そして、人類は作詞も作曲も演奏もAIを使う、そういう惑星になる(笑)。
どうでしょう、これって、嫌な世の中に思えますか?
大丈夫です。元々ゼロからの創造って、人間はやっていません(笑)。そういうもんですから(笑)。
それに、付け加えておきたいのは、「著作権侵害の原因は、今の所、AIではなく人間にある」という現実です(笑)
・・・何だか、あちこちで散々語られていそうな、AI概論みたくなってしまいました(笑)
【結論】
さて、結論は、もうこの一言。
すげー!、オモロ www
最後まで、有難うございました。
おわり。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?