【算数】因数分解の「因数」って「約数」とはどう違うの?
【問題】「因数」と「約数」の違いとは何か?
中学受験では「素因数分解」を多用します。例えば「60=2×2×3×5」というように素数の積に分解し、複数の数の最大公約数・最小公倍数、約数の個数、約数の和、約数の逆数の和を求めたり、約分できる分数を調べたりすることができます。
ここで素朴な疑問です。「60=2×2×3×5」は素数の積なので「素因数分解」です。「60=4×15」は普通の「因数分解」です。つまり4や15は60の「因数」です。はて、ということは、「因数」とは「約数」と全く同じものなのではないか?なぜわざわざ呼び名を変えるのか??という疑問です。
実際、例えば30の「約数」を全て書き出す際には「1×30=2×15=3×10=5×6」というように積の形で効率よく調べる方法があります。これは因数分解そのものです。やはり因数=約数なのではないか?
この疑問について、市井では「素因数のことを因数と呼ぶ」とか「同じものだが定義が違う」とか好き放題言われています。この記事ではWikipedia先生の説明を信頼して私見をまとめます。
※忙しい方は本題は無視してよいです。これを読んでも中学入試の問題は1問も解けるようになりません。
【前提】Wikipedia先生のお話
以下、Wikipedia先生の「約数」のページ、「因数分解」のページの引用です。
以上を繙くと…
【結論】決定的な違いがあります
①形式上の最大の違いは定義です。因数分解は「かけ算に書き直すこと」ありきで、その際に出現する数のことを因数と呼びます。一方、約数はある数を「わり算で割り切れる」数のことであり、その結果として因数分解ももれなくできちゃうだけです。ある数の約数は最初から決まった個数だけ具わっているものですが、分解もしていないのに因数だけを数え上げるのは不自然なことです。
②内容的な最大の違いは、約数の方は整数に限定されるということです。割られる数・割る数・商の全てが整数となる綺麗なわり算の話しかしていないということです。これは分かりやすい違い。
※補足1:中学受験においては素因数分解以外で因数分解を口にする場面はなく、仮に言葉を混同していても特に問題は無いと思われます。
※補足2:より抽象的で全体的な数学の分野においてはこれら二つの機能が近しくなり、再び混沌としてゆくものと思われます。
【具体例】
例えば、「3+5=1×2×4」「3.14=2.5×0.8×1.57」など、ある数式を別の積の形に書き換えることを因数分解と呼びます。また、「12=3×4」という分解における3と4を因数と呼ぶ。よって、因数は無数に存在します。
約数とは「ある整数を整数で割り切ることのできる整数」のこと。例えば12÷3=4より、3は12の約数。そしてこのとき、わり算の性質より、12=3×4と因数分解することもできる。これが疑問の発端だったわけです。
【発展】入試問題のコーナー
ところでこういった疑問の類は、学んでいる人の側から出てきてほしいものです。「ひし形とは4つの辺の長さが等しい四角形のことですよ」と聞いて分かったフリをするのではなく、「それって正方形じゃないの?」と検討できる人の方が圧倒的に賢いです。
さて最後に、近年のトレンド(らしい)問題をご紹介しておきましょう。
うまく約数分解できましたか?解答&解説↓↓
駒東 (63,69)(37,47)(33,44)(12,32)(3,30)
筑駒 〈163~174〉〈504~507〉〈673~675〉
2023年11月30日