【算数】図形が図形の周りを回転するときの回転数の求め方まとめ<基本編>
平面図形の回転シリーズです。
今回は、算数の講師でも解き方・教え方が分かれる問題です。
要約すると「円が同じ大きさの円の周りを転がって1周するとき、最初と同じ向きになることは何回あるか」という問いです。※「最後の位置は含める」と条件を変えて説明します。
【誤答と正答】
転がる長さは、1円玉の円周分。同じ1円玉が転がるから、(1÷1=)1回転。
ではなく、正しくは2回転となります。なんだか不思議な感じがします。3種類の解法をご紹介します。
【解法①】バラバラにして調べる。
例えば下図のように「接地点ベース」で回転の様子をメモしていき、1回転した所をチェックしていくと、回転数を「調べる」ことができます。いくらか規則的な図形なら「30°動くごとに半回転だから…」とか「1回転するまでに2/5周だから…」のように工夫することもできるでしょう。
【解法②】中心の移動距離から求める。
「円の中心が動いた長さ÷回転した円の円周=回転数」という公式があるようです。センターラインの公式とか中心線の公式と言われており、公務員試験の参考書や算数系のWebページにはこの方法ばかり載っています。なぜこうなるかという説明を見たことはありませんが、感覚的に「たぶんそうだな」という感じはします。
【解法③】自転数と公転数を求める。
円は、自分の円周分だけ転がればもちろん1回転します。これ自体は正しく、直感的にこれを解答としてしまいやすいですが、実際には2回転しますから、どこかでもう1回転しているはずです。
この「転がる」ことによる回転をここでは「自転」と呼びます。そして次に説明することを「公転」と呼びます。地球と太陽のイメージです。自転と公転の合計が回転数となります。
図形が図形の上を「転がる」のではなく、ただ「地面との向きを保ったまますべって動く」ことを考えると、1周したときに当然同じ向きに戻り、このときちょうど1回転しています。なぜなら地面の向きそのものが1回転しているからです。鉄棒の周りをぐるぐる回るようなイメージでもよいでしょう。これが「転がる」以外の1回転の正体です。
つまり「道のり÷タイヤの円周」が「自転」の数で「図形を何周するか」が「公転」の数となり、1+1=2回転と求まります。さらにまとめると「回転数=転がる道のり÷自分の周±転がる道のり÷地面の周」と表せます。回転の向きが逆の場合は引き算です。
これは算数のテキスト類でもあまり紹介されていません。
【疑問】で、どの解法がいいの?
どれなら早く解けるのかは、場合によります。また、算数として扱うことへの私見を書いておきます。
細かく調べる方法
簡単な図形において有利です。複雑な図形でも使えるものの、角度や長さや比についての理解が必要な場合があり、総合的に注意が必要な方法。
算数的なアプローチで、無理が無いです。
「センターラインの公式」
「道のり」ではなくただ「自分の移動距離」さえ分かれば使えることが便利。例えばでこぼこして触れない部分があっても問題ない。ただし「円」が転がる場合にしか使えない。
なぜこれで回転数が求まるのか、証明を探しましたがよろしいものが出てきません。現状、算数としては無理がある感じがします。そして、最も頻繁に用いられていることに疑問を感じます。
「自転+公転」法
周の長さが求まればすぐに計算ができる。ただし、触れずに飛び越えた部分がある場合には、触れたことにして回転数を補填する必要がある。また、自転と公転の回転の向きに注意が必要。
発想が算数らしく、理解ができると言えますが、知識として持っていない人にその場で思いつくことを求めるのはレベルが高過ぎると思います。
以上です。
それでは、「センターライン勢」を落とす問題をどうぞ。
2024年6月23日