中学受験でもピタゴラスの定理は使ってOK!

「算数」の指導において長年議論の争点となっていることがあります。「中学以降で学ぶ内容は、小学生だから使わせない方が良いのか?」です。
逆算ってなんなの?移項すれば?マイナスって使っちゃダメなの?式書いて連立方程式を解けばいいんじゃないの?三平方の定理使えば一発じゃん?


結論:中学以降の内容も使ってよい。

算数の知識で証明できるものばかりですし、もちろん使ってよいです。むしろ、使ってはいけない場合に理由が必要でしょう。ただし「正しく使える」ことが条件です。安全に自転車に乗れない人をバイクに乗せるような愚かな人は教育に関わってはいけません。3つほど例をあげます。

例①「移項」は、過不足算などで普通に使う。

「5x-6=3x+2」という式なら、小学生は「⑤-6=③+2」と書き、「②=8」を求められます。線分図を書いて整理することもありますが、移項と大きくは変わりません。
「使ってはいけない」という考えとしては、「難しくて使えない」「機械的で意味を理解しなくなる」「小学生の課程に無い」などありますが、それを言い始めるといろいろな中学の入試問題は不正ということになるでしょう。また、正直、移項の方が簡単です。

例②「負の数(マイナス)」はダメなんだよね…?

全然大丈夫です。先取りしていなくても、勝手に理解して使い始めます。
「正解すると5点もらえて、不正解だと3点引かれる」という条件を見て「1問間違えたら8点の差がつく」ことはもちろん理解できます。やや複雑な負の数も、理解が深い人は普通に使えますし、使えるとかなり便利です。

例③「平方根(ルート)」は?三平方の定理は?

 使えるなら使ってもいいでしょうが、さすがに平方根が途中に出てくる計算はレベルが高過ぎると感じます。ちなみに、2乗根、3乗根…はあまり多く見ませんが、2乗、3乗…を扱う入試問題は大量にあります。
 「三平方の定理(ピタゴラスの定理)」は、小学生の知識で充分に証明できるので利用してもよいでしょうが、平方根の計算ができないなら、「3:4:5」の直角三角形を覚えていたらちょっと便利なくらいで、無くても支障ありません。

そもそも論①:小学校で「円周率」を教えている

 円周率といえば「3.14」と認識されるようになって久しいですね。しかしその正体は小数が無限に続く「無理数」であり、中学からは一変して「π」と置きますね。小学校で「円」についての理解を進めるため、本来は扱わない無理数をねじ込んでいるという印象を受けます。
 中学入試でも、「円すいの体積は、底面積×高さ÷3とします」とか、「1辺1cmの正三角形の面積は0.43cm²とします」とか、「3辺の比が5:12:13となる三角形は直角三角形です」とか「2回かけ合わせると3になる数を③と書くことにします」とか…問題が解ける材料を無理やり入れてくることはごく普通です。

そもそも論②:中学受験算数ではいろいろ教える

順列の問題を解く際にはコンビネーションやパーミュテーションを使いますし、円周角の定理やパップスギュルダンの定理なんてものを教える先生も中にはいるでしょう。学校教育では中学以降だというだけで、小学生でも理解できるものはいくらでもあります。

楽しむためなら、ルールは必要

 「算数だからマイナスは禁止!」と言うのは、「4年生になるまでは小数は使っちゃダメ!」と言うのと同じです。8歳児が誤って小数を目にすると健康被害が出ますので、手の届かない所に保管してください、ということなのでしょう。
 ルールによってわざわざ制限を設けるといえば、パズルなどを楽しむためのことです。ルービックキューブだって本当に揃えたければシールを貼り替えればいいだけですが、それは本来の目的ではありませんね。

しかし例外・・・円の回転について

まとめると「難しい数学の理論でも、正しければ使ってOK」というのがここまでの主張なのですが、しかし・・・・・・自分で反例をあげておきます。

算数において「円が別の図形の周りを転がるとき、円自身が何回転したのか?」という典型的な問題があり、公務員試験などでも出題されるそうです。いくつか解法があるのですが、ズバリ、「円の回転数=円周÷中心の移動した距離」という公式があります。たしかに感覚的には正しいですが、しかし、なぜそう言えるのか?これこそ、問題文に公式を注意書きしておくべきではないのか?

…この話はこの後「公務員試験の参考書に書いてある公式は間違っている!」まで大きく展開するのですが、それはまた改めて。
2023年9月14日

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