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サンリオオンライン演劇『VIVA LA VALENTINE』が最高だった話

2月14日バレンタインデーに千秋楽を迎えたサンリオと劇団ノーミーツによるオンライン演劇『VIVA LA VALENTINE』、いや~~最高だった。

私(20代・社会人)はシナモンのオタクなので、配信を見るきっかけは2月7日のシナモンがチケットになってる公演でも見とくか!(配信はオンラインですが、紙チケが後日郵送される特典付のチケットを購入することもできる紙を欲しがちなオタクへのホスピタリティ。優しい)くらいの軽い気持ちだったんですけどね。こんなに胸を打たれ泣かされるとは思いもよらず、千秋楽も見届けさせていただきました。

3月14日ホワイトデーにリバイバル公演の発表もされたことだし、サンリオ好きでない方以外にも本当に本当に見て欲しくて、少しでもきっかけになったらと思ったので、感想を連ねます。

※ネタバレも大いに含んだ感想になるので、バレたくないよ!という方はこのままリバイバル配信のチケットを買ってください。頼む。


■閉館後のピューロランドから生配信でお届けされるワンカットショー『VIVA LA VALENTINE』

あらすじ(上記公式サイトより引用)

「大人の事情って、なあに?」
舞台はバレンタインを間近に控えた閉館後のピューロランド。 
ハローキティに素直な気持ちを伝えるショー『VIVA LA VALENTINE(ビバ ラ バレンタイン)』を成功させるため、演出家のディアダニエルを筆頭にみんなで張り切って準備中。
しかし、ショーのスポンサーであるバイアス製菓が本番3日前、突然ショーの内容について無慈悲な変更を言い渡すのでした…。
どうする、ディアダニエル。どうなる、バレンタイン。

チケット購入前、このキレキレなあらすじを見た時点で期待大だったんですけどね。流石サンリオ、キャラクターエンターテインメントとしてのエッジの効き方が鋭くて痺れちゃいます。

ここですごいのは、あらすじだけ見るとメタの強さに大人の事情を心得た我々はドキワクとしますが、鑑賞後はメタだとかそんなんじゃない、キティさんはじめ、サンリオキャラたちが完全に「いる」世界に胸を打たれてしまうんですよね……。


■サンリオキャラが「いる」世界、キャラも人もこれを見ているあなたも「一緒」な世界


このショーの登場人物は、それぞれがこのショーのキーワードである「素直な気持ち」を出したい、出せないの葛藤や悩み、辛さを抱えています。

それは普段のショーやパレードでは、完璧な姿を私たちに見せてくれるダニエルくんを始めとするキャラクターも例外なく。本当はこんなショーをやりたかった、こんな自分を見せたかった、と。

スポンサー側からの理不尽な変更にみんなが残念がる姿が見ていて辛い。この『VIVA LA VALENTINE』はまさしくあらすじ通りの時系列で進んでいたので、変更を言い渡される3日前まではTwitterで本番に向けて頑張るキャラたちの模様がお届けされていたのだ。

閉館後のやや薄暗いピューロで、たくさんの本やCDの資料に囲まれビートを刻むシナモンくん、ミシンをするクロミちゃん、鏡に向かって踊るプリンくん……。こんな一生懸命に頑張っていたんだからそりゃこうも言いたくなるわよね…と普段は絶対に見ることのない葛藤するみんなの姿が、親近感のような感情とともに胸にすっと入ってきます。

これは実はサンリオが好きで、いつか一緒にお仕事をすることを夢見ていた小室ちゃんの言葉にさらに後押しされます。

「…『いる』んだなあって…。なまじファンですと、変な話彼らのことを神格化しちゃうところがあるんですけど…ちゃんと考えたり、悩んだりしてるんだなあって」

ここの小室ちゃんが急に早口になるところがリアルオタクって感じですごく良い。アッ俺らだ、となります。それ私もさっきから感じてたよ!となり、それまでキャラ好き目線からすると憎きスポンサーだった小室ちゃんという人物像がグッと近付いてきます。

そして彼女自身も会社員としての立場と、自分自身の素直な気持ちとの板挟みで苦しんでいる。

キャストを務める鈴木くんも、本当は演者として舞台に立ちたいということ、素直な気持ちに蓋をしてしまっている。


私は代理店勤めでも、舞台人でもないので、この葛藤がダイレクトなものではないけれど、それでも共感を覚えるところはある。というか、大人なら多かれ少なかれ刺さる台詞が散りばめられている。鈴木くんの「毎日仕事で忙しくしていると本当にやりたいことを考える時間もない」みたいな言葉なんて、特別夢追い人ではないにしても毎日平均3.5時間残業していて「時間がない」を何かと言い訳にしがちな身にグサリときて少し泣いた。

序盤で吐露されていくみんなの素直な気持ちへの想い。そこにはキャラと人の境界線はなく、みんなが同じで、そしてこれを鑑賞している私たちも心のどこかに一緒の気持ちがあることに気付かされ当事者になっている。『VIVA LA VALENTINE』の織り成す世界に入り込みます。


■「素直な気持ち」を助長するノスタルジー要素


これは演出の妙だなあとめちゃめちゃ関心した点なんですが、画面の至るところにノスタルジーを感じるんですよね。

舞台が閉館後のピューロランドということで、BGMもなく、照明も暗く、館内には締め作業をする従業員がぽつぽつといるだけの空間。

普段は目にすることのない館内はどこか魔法の解けたような物悲しさを纏っていて、なんだか幼少期に味わった「テーマパークを後にする瞬間」を思い起こさせました。閉園時間が訪れて、門をくぐるあの瞬間。夢から醒めてしまうような心持ちがして帰りたくない、と駄々をこね泣き出してしまいたくなるようなあの頃の気持ちがじんわりと押し寄せてきます。

完全にやられた、と思ったのがかの有名なポップコーンマシーンが登場するシーン。閉館後に響き渡るキティさんのポップコーンはいかが?にノスタルジーの波が襲い掛かる。記憶に強烈にこびりつくあのメロディは多くの人のこども時代を呼び醒ますのではないでしょうか。

(かの有名なポップコーンマシーン。これが公式動画なんだからサンリオはやめられない)


それで、そのノスタルジー要素が、先述した大人たちがどこかで抱えている「素直な気持ち」をより鮮やかに思い起こさせるんですよね。

このピューロランドという大きな舞台装置を最大限活かして、こどもの頃はこんな夢があった、こんな理想があった、大人の事情なんてしがらみとは無関係だった当時が、登場人物に共感する私の心に映し出されていくのには唸るしかなかった。


■キティさんという光


冒頭に書いた通り私はシナモンのオタクですが、毎度のことながらサンリオのショーパレにおけるキティさんの圧倒的光には心が震わされる。

今回、キティさんは真打ちよろしくここぞ!という場面で登場されるので、どの言葉も素敵で眩しくてハートに響くのですが、キティさんとお話をする小室ちゃんが泣きじゃくるシーンが、なんかもうハローキティという存在のアンサーのように思えたんですよね…。

やっぱり元の脚本でやらせてもらえないか、と懇願するダニエルくんに対して、それは無理だ、自分にも立場があるんだと声を荒げてしまって落ち込む小室ちゃんの前に現れるキティさん。それまで「ダニエルさん」「キティさん」とビジネススタイルを貫いていた小室ちゃんが、「キティちゃん~」と涙を流し、「自分は全然ダメだ」と拗ねたような口調で本音を話し、急にこどもみたいな姿を見せるこのシーンが大好きです。

どんな姿にも動揺せず真っ向から受け止め、否定せずにいてくれる彼女を前にすると、みんな「素直な気持ち」を隠せなくなってしまうんだと思った。圧倒的光を前にすると、人は甘えたくなってしまうし虚勢も張ることができなくなる。そのまぶしさに身を委ねたくなってしまう。

この小室ちゃんの姿が分かりすぎて私も泣いた。私もキティちゃんに一生懸命働いてるの見てたもの、とっても偉いわと言われたいし抱き締めて欲しすぎるもん。号泣だった。


キティさんのその超越した優しさ、サンリオを象徴する愛情は、無断で変更されたショーに激昂して怒鳴り散らす吉池ちゃんにも例外なく注がれます。

「本当の気持ちは、理由やイメージなんてあっという間に超えていくわ。吉池ちゃんの不安も吹っ飛んじゃうくらい素敵なショーにするから、心配しないでね!」

これ、今回わたしが一番大好きな言葉です。本当の気持ちは、バイアスのかかったイメージやステレオタイプな考え方も、あっという間に超えていってしまう。縛られる必要はないんだということ。他者の思惑や期待だったり懸念だったりを“壊す”や“打ち砕く”ではなくて、“超えていく”って表現が優しいサンリオの世界を現しているようですごくグッときた。

そして、吉池ちゃんの不安を吹き飛ばすって言うキティさん、現場までわざわざ赴いた彼がフードコートで発言していた「心配性でね」という言葉を回収して、彼の持つ不安も見抜いてるわけなんですよ。そのうえで、心配しないでね!と颯爽とステージへ上がっていく姿。そりゃあ吉池ちゃんも心打たれてまうわ!!

サンリオが世界に向けて提唱する広義な「カワイイ」がとても素敵だと思っている私ですが、キティさんの前では誰もが「カワイイ」になってしまうんだなあ…とボロボロ泣きながら最高のバレンタインデーを迎えました。ありがとうサンリオ。ありがとうビバラバ。



そんなわけで、キャラオタだから一層楽しかったというのも当然ありますが、それを抜きにしても良いもの見たな~!という多幸感でいっぱいでした。

少し日々に疲れてしまった大人や、自己肯定感が低くなってしまっている大人、圧倒的光を浴びたい大人、絶対にリバイバル公演を見て欲しい。



(シナモンラップ、みんなヒプノシナマイクって言うじゃん絶対と思ってTwitterで検索したら誰も言ってなくて解せなかった。(ミラギフのカワイイ!カワイイ!にシャラップ!するシナモンくん最高にかわいくてかっこよくて愛した)



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