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SansanPdMが実践するユーザビリティテストの紹介

こんにちは。
営業DXサービス「Sansan」のプロダクトマネジャー(以下、PdM)を担当している佐々木です。
今回はSansanのPdMが実践しているユーザビリティテストについて紹介いたします。

ユーザビリティテストとは?

ユーザビリティテストとは、プロダクトの使いやすさを評価するための手法です。具体的には想定利用者(以下ユーザー)にプロトタイプ(実際に操作できるプロダクトの試作品)を使ってもらい、その際の使用体験や問題点を観察・記録します。このテストを通じて、ユーザーがどのようにプロダクトを使い、どこで困難を感じるか理解し、改善点を見つけることが目的です。

なぜユーザビリティが重要なのか?

Sansanでは、ユーザビリティを重視しています。ユーザビリティが重要な理由は、ユーザーがプロダクトを簡単に、効率的に使えるようにするためです。そのため、私たちはユーザビリティテストを毎週行っており、そこで得られたインサイトをもとに、PRD(プロダクト要件仕様書)にフィードバックを反映させています。
当社の西場と川瀬が、ユーザビリティの考え方について別のインタビュー記事で説明していますので、ぜひそちらもご覧ください。

ユーザビリティテストのやり方

ここからは具体的なユーザビリティテストのやり方について説明します。全体の工程は以下の通りです:

目的設定
タスク設計
テスト設計
ロールプレイング
リクルーティング
テスト実施
振り返りと評価

目的設定

まず、テストの目的を明確にします。「このテストで何を知りたいのか」を具体的に決めることが重要です。なぜならこの目的が、後で行うインタビュー設計やタスク設計の内容を決める際の指針となるからです。また明確な目的があれば、テストの結果を正しく評価できます。

(例)デジタル名刺の送り返しに関して、新しいデザインを理解して操作できるか?

タスク設計

次に、被験者に具体的な指示を出すためのタスク設計を行います。ここでは、被験者がどのような状況(シーン)で、何をするべきか(タスク)を設定します。シーンとタスクは具体的である必要がありますが、操作方法を誘導しないように注意が必要です。
以下に良い例と悪い例を示します:

(良い例)
シーン:あなたは三三株式会社の購買部門の社員です。展示会で名刺交換した相手と初めてオンライン商談をすることになりました。商談中に相手からデジタル名刺のURLが送られてきました。
タスク:商談相手にあなたのデジタル名刺を送り返してください。

(悪い例)
シーン:デジタル名刺を受け取りました。
タスク:デジタル名刺を送り返すボタンを探してクリックしてください。

テスト設計

タスク設計が終わったら、テスト全体の流れを決めます。例えば、60分のテストでは次のような構成にしています:

  • アイスブレイク(5分):自己紹介やテストの注意点

  • インタビュー(15分):被験者の日常的な業務を確認

  • ユーザビリティテスト(30分):タスクの実行と観察

※残りの10分は予備時間です。
(例)テスト全体のフロー図:

※画像はマスキングしています。

インタビューを先に行う理由は、被験者の普段の状況とテストの設定が合っているかを確認するためです。例えば、オンライン商談時のデジタル名刺交換の体験をテストしたいと思っているが、被験者は実際にオンライン商談をやったことがあるのか、を確認します。
被験者の普段の状況とテストの設定が合っていないことが分かれば、テスト設計のシーンとタスクをより丁寧に説明し、具体的に想像してもらったうえでテストを実施できます。

ロールプレイング

テスト設計が終わったら、ロールプレイングをしてみることをおすすめします。ユーザビリティテストの工程でロールプレイングを行う方は少ないかもしれませんが、これがかなり効果的です。
ロールプレイングには以下の2つの利点があります:

  1. テスト設計の完全性を確認:抜け漏れや不整合を事前に発見できる。

  2. テストフローの整合性を検証:唐突にインタビュー内容が変わっていないか、インタビュー内容とテストの内容につながりがあるかを確認できる。

私の実体験ですが、テスト設計を進めるうちに、テスト実施者たちだけがテスト内容を深く理解してしまい、他の人と共有すべき前提条件を見落としがちです。この問題を解決するために、他案件を担当するPdMやデザイナーとロールプレイングをします。彼らから指摘をもらうことで、テストを円滑に進められます。

リクルーティング

ユーザビリティテストの参加者を募集します。テストの内容にもよりますが、私たちの場合、以下の条件を満たす方を社内外から選ぶことが多いです:

  • 自社サービスに慣れていない方(社内の場合は主に新入社員)

    • 理由:Sansanでは初めてプロダクトを使用する人にとっても分かりやすいUIを目指しているため、自社サービスに慣れていない方の視点から得るフィードバックが重要です。

  • タスク設計に類似した業務経験がある方

    • 理由:テストする機能が実際の業務に即した体験になっているかを確認するためです。業務経験者は業務の流れ全体を理解しているので、テストしている機能が業務プロセス全体に適しているかを評価してもらえます。

テスト実施

作成したプロトタイプを被験者に操作してもらい、その様子を観察します。テストを効果的に実施するために、以下の4つのポイントに注意します:

  1. 被験者が自由に意見を述べられる雰囲気を醸成する

    • テストに正解や不正解はないことを伝える

    • 被験者が感じたことや思ったことを自由に発言してほしい旨を伝える

  2. 被験者の思考プロセスを可視化する

    • 操作中の思考や感情を可能な限り口に出してもらうよう依頼する

  3. 客観的な観察に徹する

    • 操作中は被験者からの質問に原則答えない

    • テストのヒントになるような情報を提供しない

  4. 詳細な操作フローをメモする

    • マウスカーソルの動きやクリックしたボタンを具体的に記録する

    • 操作時の被験者の反応や発言を観察し、あとで確認したい点をメモする

振り返りと評価

テスト終了後、ユーザーのタスク達成度を評価します。評価基準はUXリサーチの道具箱Ⅱを参考に、以下の3段階で行っています:

  • 〇:ユーザーが自力でタスクを完了し、無駄な操作や迷いが少ない

  • △:ユーザーがタスクを完了したが、無駄な操作や迷いが多い

  • ×:ユーザーが自力でタスクを完了できない

しかし、〇△×の評価だけでは不十分です。なぜならこの評価は結果のみに焦点を当てているからです。そのためユーザーの行動や思考プロセスの詳細な情報も併せて分析します:

  1. 問題が発生した具体的な画面

  2. 問題の内容

  3. 問題の発生頻度

これらの分析を行うことで、以下のようなことに気付けます:

  • ユーザーが具体的に躓くポイント

  • 新たに発見した問題の重要度

例えば、△評価でタスクが完了していたとしても、無駄な操作が複数回発生していれば、優先的に改善すべき問題として認識できます。
このように、詳細な分析を加えることで、ユーザビリティを向上させるための具体的な改善ポイントが見つかります。

おわりに

今回はSansanのユーザビリティテストの具体的な手法に関して紹介しました。ユーザビリティテストを実施している方や、これから行おうとしている方にとってこの記事が参考になれば嬉しいです。また、この記事に対して他にアドバイスや意見があれば、ぜひ教えてください。

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