2019年5月7日火曜日、声で覚えてくれていたひと
ランチで1年半ぶりくらいに行ったお店。当時近くで働いていて、そのお店はオーナーさんが知り合いだったので、たまにご飯を食べに行っていた。
オーナーのAさんはもともと飲食をやりたい美容師さん兼美容室のオーナーで、私は髪を切ってもらっていた。Aさんは飲食店を出すために美容師仕事のかたわら飲食の修行もしていた。そして念願のカフェバーをオープンさせた。
カフェバーは少し辺鄙なところにあったけど、職場が近かったので時々通っていた。ちゃんとお客さんも入っていて、料理が美味しかった。夜行くと、サロンで仕事を終えたAさんも入っていてお話ししたりもした。
やりたいことに向かって本当に頑張っていたAさんは、しばらくして交通事故に巻き込まれ、意識が戻らないまま亡くなってしまった。
私もAさんが入院している間に転職してしまい、お店が残っている事は知りつつも疎遠になってしまっていた。
そこから1年半。ランチに行ったら、通っていた時から働いていたスタッフさんがいた。(多分Aさんの恋人だったんだと思う)時間もたっているし、それほど常連だったわけじゃなかったので、普通に同僚とランチを食べてお金を払おうとしたとき、声をかけられた。
「前も来ていただいてましたよね?Aさんのヘアサロンに通ってくださってて。私メッセンジャーでやりとりした**です(Aさんがなくなった時に代わりにfacebookで連絡をくれた)」
まさか覚えてくれているとは思わなかったので「そうです、覚えてくださっていてありがとうございます。」と答えたら「声が好きだったので、声で覚えてたんです」と教えてくれた。
予想外の答えにびっくりして、そして泣きそうになった。Aさんのことはそれ以上話さなかったけど、突然いなくなってからの毎日を、お店を守りながらどんな風に過ごしてきたんだろ。そして過ごしているんだろう。
私たちは普通に会話をして普通にお店を出たので、一緒にいた同僚は気づかなかったようだった。
でも私たちは、私たちだけに通じる話を、言葉の外でしたんだなと思う。