前世
「また、あの夢だ、、、」
冷たい汗を洗い流すため、僕は洗面所に向かった
鏡に映る情けない顔
まるで、子犬に怯える子供だ
我ながら可笑しくなる
ふと、独り言が漏れる
『君は何をそんなに怯えているんだい?』
そして、心の中で続ける
" この平和で清潔で安全な日本で、"
蛇口をひねり、勢いよく水を流す
上水から下水へと僕の怯えも流されていく
不安も、恐れも、深い悲しみを帯びたあの灰色の夢も
そっと目を閉じて、蛇口の音に耳を澄ませる
上水から微かに声が聞こえる
『もういいかい?』
下水からも聞こえる
『まーだだよー』
寒気がして、また額から汗が吹き出す
そっと目蓋を開き、鏡の中の少年に尋ねる
「君は何をそんなに怯えているんだい?」
「君は何にそんなに怯えているんだい?」
”夢のようなこの国で、、、”
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?