タイプロ5次審査 チーム松島「無理難題なSweet、手に入れられるかDestiny」の巻

年が明け、5次審査の配信が始まった。と同時に、番組の様相が明らかに変わった。
事あるごとに言及される「事務所」の伝統、次々と登場するビッグな先輩方、その方々が袖を通した貴重なステージ衣装。もはや推しがtimeleszに入れるかどうかだけの問題ではない。この事務所特有のカラーに、いちファンとしてあなた自身も染まることができますか、と覚悟を問われている。
鈴木凌というきれいな蝶々をただ夢中で追いかけていたら、地獄の門前に立っていたことに、今さらながら気づいて震える。あらためて、恐ろしいプログラムだ。

もちろん、このタイプロを真剣に見始めてからは、有識者の方々のご教示に従い、「Ride on Time」のセクゾ回でグループの波乱の歴史を学び、「Run」を涙なくしては聴けないほどにはなっていたし、ケンティー様や衣装をお借りしたJUMP兄さん、今回のSWEETチームの課題である「かわいい」のお手本になりそうな、なにわ男子さんの映像も片っ端から見て勉強した。本気を問う相手に、リスペクトと愛を持ってのぞみたかったし、準備は抜かりないつもりだった。

とはいえ、思春期以降ジャニーズはおろかアイドルにろくに触れてこなかった人間にとって、この事務所の衣装やステージは非日常そのものだし、ファンの方々の熱量も素晴らしく異次元レベルだ。その独特な流儀やセンスに時にうなり、目から鱗を落としながら、一方でうまくチューニングできずに眩暈がする日々。もはや不安しかない。頼れるのは鈴木凌という、自分が信じた絶対的なアイドルのみ。

その頼みの綱である「生まれながらのアイドル」鈴木凌が、ここから松島聡さんの手により「ジャニーズアイドル鈴木凌」へとトランスフォームしていく。総スパンコールのド派手な紫スーツ、髪色もそれに合わせた落ち着いたトーンへ。トレードマークだった金髪と、抜群の自己プロデュースを効かせた洗練された衣装、その飛車角落ちの状態で、鈴木凌はどう戦うのか。もう歌にかけるしかないのか。それならそれで望むところだ。

果たして、いくつかの試練を乗り越えて「SWEET」本番のステージに立った鈴木凌は、見事すぎて引くほどに「かわいい」を体現していた。これまでのアイドル鈴木凌の集大成を見ているようで、胸がいっぱいになった。そして泣いた。わたしにはスパンコールも数多の照明も眩しすぎたし、涙で鈴木凌の顔はよく見えなかった。ただ歌声だけはいつにも増して伸びやかに宙を駆け、衣装や照明の光すら吸収して、煌めく摩天楼のようにステージを華やかに制していた。聡ちゃんは正しかった。アイドル鈴木凌はまだまだとんでもない爆発力を秘めていたのだ。

気づいたら、わたしの知っている鈴木凌はもうそこにはいなかった。

いつも集団の中では不在がちか、いても隅っこで控えめに微笑んでいた。それでも弱っている人には自然と寄り添い、涙を流す仲間の肩を抱き、背中をさすって勇気付けてきた。自分がつらいときは多くは語らず、ひとりで必死に堪えていた。そんな強くて優しくて美しい孤高の人だった。今、審査を終えた鈴木凌は、泣き崩れる姿を隠そうともせず、信頼できる仲間たちに次々と抱かれながら、その愛を全身で享受している。ああ、良かった。これが本当の、ナチュラルなアイドル鈴木凌なのかもしれない。わたしの中で何かが静かに成仏した瞬間だった。

これは後にbehind映像で知ることになるが、鈴木凌はタイプロハウスで「姫」という揺るぎないポジションを手に入れ、輪の中心で誰からも愛され、輝きを放つ存在になっていた。なんだよ姫って。これまたジャニーズの伝統文化なのか。まだまだ勉強が足りないな。てか、いつからそんなキャピキャピきゃわいいキャラになったんだっけ? 確かに5次審査は最初から飛ばしてるな、テンション振り切ってきたなとは思ってた。「自信のなさ」を払拭しようと奮起した故の「入り過ぎた気合い」の表れなのかな、とも。でも待てよ、もしかしてこれが鈴木凌の本来の姿で、5次では今まで見せなかった素の部分を開示したってこと……?

推しておいて何だが、鈴木凌はこの事務所のカラーに染まれるのか、これまでの過程を見る限りではなかなか厳しい戦いになると思っていた。理想が高くて自分の中に確固たるアイドル像がありそうだったから。だから、お互い苦戦しそうだけど頑張って染まろうね!と、仲間意識さえ芽生えていた(一方的に)。ところがだ。蓋を開けてみれば、彼は自分をさらけ出すことでジャニーズに鮮やかにチューニングを合わせてきた。自分の生きるポジションもきちんと見つけて。さすがプロ。本当に、アイドルが天職なんだな。

こうしてあっけにとられている間にも、姫となったりょうちゃんは紫のハート型バルーンのついたスティックを無邪気に振りまわしながら、ハーメルンの笛吹のように大勢のファンをぞろぞろと連れてスキップで門の中へと進んでいく。やーだ、もう、はやく来ないと置いてっちゃうよおー。さあ、お前もこの門をくぐれるか? 今、わたしはひと足先にnew phaseへと突入した鈴木凌に試されている。

そんな姫ポジりょうちゃんをあっさりと受け入れられるほどの度量を、わたしはまだ持ちえていない。所詮1ヶ月そこらの付け焼き刃では、ジャニオタを名乗る資格すら得られない。時間が解決するかもしれないし、この先いつまでも門の外で金髪の貴公子すずりょうの亡霊としてひとりさまよい続けるのかもしれない。

ただひとつだけわがままを言えるのなら、あのanan撮影時のブルーを基調としたナチュラルなスタイリングで、「君に似た青空」の下、こじんまりとしたかわいい公園でチーム松島がパフォーマンスする姿も見てみたい。なんならわたしの頭の中ではそのMVのシナリオがもう完成している。どこからともなく飛んでくるシャボン玉や、色とりどりのバルーンが舞う中で、自然光に照らされて聡ちゃん含めた仲良し5兄弟がキラキラと楽しそうに戯れているso sweetな映像。それさえ見られるなら、迷いはないこのdecision、すべて投げ出してでも行くよ、たとえそこが魔境の入り口であろうとも。

♪So sweet, let’s go!

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