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#141 明和地所はなぜ建設を断念したのか? ⑬ 「住民エゴ論」では建設反対の声は消えなかった

 相模国分寺跡南側隣接地に明和地所が高層マンションを建設するという計画が発表された。相模国分寺跡がある国分南自治会で建設反対署名をとったら、相当数の反対署名が集まった。もっと行動を大きくしなければ建設されてしまう…と国分南自治会会長は、連合自治会に反対署名に取り組んでくれるよう要請した。自然の流れである。これは海老名市・神奈川県の問題である。相模国分寺跡がある連合自治会では当然、反対署名に取り組んでくれるだろうと私は思った。しかし、連合自治会は反対署名に取り組むことに消極的だった。自治会は自分達の住む地域のことに関して取り組む組織であり、他の自治会の問題に関わりたくないようだった。「その問題は国分南自治会の問題であり、我々には関係がない」という住民エゴ論も透けて見えた。連合自治会、そして自治会という組織の限界を感じた。
 住民エゴ、地域エゴとは、同じ土俵に乗らないこと。連合自治会の問題ではなく、そこに参加していた自治会会長たち個人の問題なのかもしれないが、高層マンション建設反対署名は国分南自治会の外で、組織的に取り組まれることはなかった。
 その頃だった。神奈川新聞、東京新聞、朝日新聞、読売新聞が相模国分寺跡隣接地高層マンション建設問題という切り口で報道を開始した。そして、この問題が国分南自治会の問題ではなく、海老名市、そして神奈川県、更には国の問題であるという認識が広まり、全国に知られることとなった。
 新聞の力は大きい。一地域の問題と捉えられて抹殺されそうだったことが全国的な関心事となった。東京の神宮外苑の問題とも重なり、ますます問題意識は高まっていった。
 明和地所は住民説明会の取材をしたいとの読売新聞の要請を断った。一地域のこととして事業を進めたかった明和地所にとって、計算外の展開となっていったのだ。

(24.6.18)

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