#131 明和地所はなぜ建設を断念したのか? ③ 歴史認識不足
建設業者に言わせると、相模国分寺跡周辺の土地は喉から手が出るくらい欲しいものらしい。
相模国分寺跡南側隣接地には2棟のアパートが建っていた。それぞれの所有者から土地を買い取った業者が、その土地をまとめて売りに出した。一括にされて広くなったその土地に、大規模建設が可能だと明和地所が飛び付いた。高台で目の前には広々とした空間がある。ここに高層マンションを建設すれば注目を浴びて人気が出るであろうと。
明和地所は広々とした空間が相模国分寺跡であることは知っていた。しかし、相模国分寺跡がどれほどの歴史的価値があり、海老名市民と海老名市がどれだけ相模国分寺跡を守ろうとしているかを認識していなかった。「知っている」と「認識している」とは大きく異なる。
そのことが、3回にわたる住民説明会で明らかになった。全国に国分寺がいくつあるかも知らない明和地所の複数の担当者は、「温故館の見学はした」「史跡調査は必ずやる」と発言したのみだった。参加した住民・市民は、明和地所の担当者の、あまりの認識不足に言葉を失った。認識不足は担当者だけではあるまい。明和地所という企業そのものが認識不足だったのだ。
企業としての、相模国分寺跡に対する歴史認識不足を認めざるを得なくなり、明和地所は住民・市民の訴えに反論することができなくなった。これが、明和地所が建設を断念せざるを得なかった理由の一つであろう。
相模国分寺跡の歴史的価値、景観、市民、そして海老名市の取り組み、これらを十分把握し、相模国分寺跡の重要性を認識している企業であれば、相模国分寺跡周辺に大型建築物を計画することは今後もないであろう。
(24.3.14)