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#77 相模国分寺跡までの道標
相模国分寺跡周辺の、あちらこちらの道路の路面上に道標が現れた。海老名市教育委員会が国の補助金を使って工事をしたとのことで、足元表示というらしい。路面上に書かれているので景観を損ねていないのがいい。海老名市の史跡巡りがより楽しくなりそうだ。
この道標に従って歩いて行くと目的地の相模国分寺跡に辿り着く。しかし、辿り着いた人が真っ先に目にするのは、広々とした公園でもなく、奈良時代の史跡でもなく、高さ43メートルのコンクリートの塊であるとしたら、どうだろう。あまりにも哀しすぎないか。裏切られた期待。不釣り合いな光景から受ける違和感。清々しくて心地よい疲労感が、なんとも言いようのない虚脱感に変わる。
気持ちを持ち直して温故館(資料館)に入り、相模国分寺史跡の歴史的背景を学ぶ。海老名市がこの史跡を守ろうとして取り組んできた経緯も知る。相模国分寺史跡が実に多くの人たちに支えられていることを知る。満ち足りた気持ちになり温故館を出る。しかし、迎えてくれるのは再び高さ43メートルのコンクリートの塊だ。来館者の心は奈良時代を飛んでいたはずなのに撃墜され、またもや哀しい思いになる。
景観とは何か。景観を損ねるとはどういうことか。景観を損ねた業者の存在。住民無視の業者の存在。経済活動の自由とは何か。次世代に残さなくてはならないものは何か。
相模国分寺跡隣接地に高層マンションが建設されるようなことになれば、相模国分寺史跡が、このようなことを考え・学ぶ場となってしまうだろう。
(23.3.28)