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我が家のイギリス旅行記#12 クレイヴン・コテージでプレミアリーグ観戦

2024年の夏休み、家族で出かけたイギリス旅行の思い出をここに記す。
クレイヴン・コテージでプレミアリーグを観戦した話。


プレミアリーグを観てみたい

イギリスに行ったらなにかスポーツを観戦したいと考えていた。
ラグビーを観たかったけれど、8月ではプロリーグは開幕しておらず、テストマッチの日程とも合わなかった。
いっぽうサッカー、もといフットボールのほうはプレミアリーグがちょうど開幕するタイミングだ。
普段あまりフットボールは観ないけれど、せっかくなのでぜひ観てみたい。

プレミアリーグの2024/2025シーズンは8月17日に開幕。
滞在期間中の8月24日が第2節となる。
詳細な日程は2024年6月18日に発表された。
ロンドンで3試合が組まれていた。

  • トッテナム・ホットスパーSpurs(トッテナム・ホットスパースタジアム)vs エヴァートンEverton

  • クリスタル・パレスCrystal Palace(セルハーストパーク)vs ウェストハム・ユナイテッドWest Ham 

  • フラムFulham(クレイヴン・コテージ)vs レスター・シティLeicester

いずれもホーム開幕戦となる。
しかし、はっきり言って自分はフットボール大好き少年ではない。
プレミアリーグなどテレビでも一度も観たことがない。
どのチームを応援したいとか、どの試合が観たいとかもまったくない自分はこの3カードの中からどれを選べばよいのか。

どのチームが強いのか、誰か知っている選手が(日本人とか)いるのか、などいろいろな要素があったはずだが私は案外すんなりと、フラム vs レスター・シティ戦を観ることに決めた。
理由はただひとつ。
クレイヴン・コテージに行ってみたくなった。

クレイヴン・コテージに行ってみたい

インターネットで検索するとそれぞれのチーム、スタジアムに関するさまざまな情報にアクセスできた。
ヒットしたページの中で、「クレイヴン・コテージ」に関するものがいちばん、愛にあふれている気がした(笑)
そして、そのページに出ていたレンガ造りの外観の写真の美しさに、私は無性に惹かれた。

なんせクレイヴン・コテージは歴史がすごい。
各スタジアムの開場年をWikipediaから転記してみると

  • トッテナム・ホットスパー・スタジアム 2019年

  • セルハーストパーク 1924年

  • クレイヴン・コテージ 1896年(スタジアムとして)

と、クレイヴン・コテージが圧倒的に古い。
しかも(スタジアムとして)という注釈がついている。
Wikipediaには「起工 1780年(コテージとして)」という一行も付記されていたのだった。

名称の由来となったコテージは1780年に第6代クレイヴン男爵ウィリアム・クレイヴンにより建設された。現在は住宅地が広がっているこの地区は、当時はアン・ブーリンが所有する猟場や森が存在していた。

wikipedia

18世紀からフットボール場だった、ということではなさそうだけれど、とにかくここは由緒ある場所なのである。

チケット予約について

プレミアリーグのチケットは入手が困難らしい。
各クラブともファンクラブ会員が最優先で、もしチケットが余れば一般解放する、というくらいのスタンスのようだ。
結果的にめあての一戦のチケットはさほどの困難もなく入手できたわけだが、一連の「気苦労」についてはここに記録しておきたい。

6月中旬に試合日程が決まった時点ではチケットに関する情報は何もわからなかった。
フラムFCの公式Webサイトでもチケット関連の情報は更新されず、ただファンクラブへの入会を促すボタンが表示されているだけだった。


私はKlookという旅行サイトでチケットを予約・購入することにした。
Klookは旅行関連アクティビティ・現地ツアーなどをオンライン予約できるWebサービスで、日本人には比較的なじみのある大手旅行サイトだと思う。
私も別用途(海外SIMカード購入)で利用したことがありアカウントも持っていた。
そのKlookがプレミアリーグチケットも取り扱っていた。
おそらくチケット代行業者などを通じてチケットを入手できるルートを構築しているということだと思う。
当然手数料も取られるだろうけれど、手っ取り早くチケットを入手するにはやむを得ない、と考えた。

クレイヴン・コテージの試合ではいくつかのカテゴリを選択できた。
そのなかでいちばんお安い「Putny Stand、P3もしくはP4ブロック」という席を選んだ。
スタジアム南側、アウェー席との緩衝地帯的なエリア(苦笑)だけれどちょうどゴール真裏あたりになる。

https://www.fulhamfc.com/tickets-and-hospitality/  より

代金は、1枚あたり11,116円。
予約した7月初旬の頃は£1=205円くらいだったから、約£54ということになる。
チケットはEチケットで、klook によると「試合の数日前にメールが届く」とのことだったが実際のところは8月23日、試合前日に届いた。
チケットは1枚ずつ入場者のスマホに取り込む必要があり、私はメールを転送してそれぞれのGoogleウォレット(もしくはiPhoneのそれに類するもの)に保存させた。

クラブ公式サイト

こうしてチケットは無事確保できたのだけれど、公式サイトでどうなるかはずっと気になっていた。
公式サイトでの一般向けチケット3週間前くらいに発売、というのが一般的な情報だったが、今回フラムの場合は8月9日(2週間前)に公式サイトで案内が掲示された。

開幕ホームゲームのチケットは、2024/25 メンバー向けに8 月 9 日金曜日午前 10 時から販売開始され (1 人あたり 2 枚)、その後、2024/25 シーズン チケット ホルダー向けに8 月 12 日月曜日 午前 10 時から追加席の購入が可能となります(1 人あたり 2 枚)。
8月13日火曜日午前10時に、
以前に予約履歴のあるサポーター向けに販売され (1人2枚)、必要に応じて、8月14日水曜日午前10時に一般販売*されます。

https://www.fulhamfc.com/news/2024/august/08/leicester-city-tickets/

8月14日、公式サイトでの販売が始まったので中を覗いてみた。
スタジアムの全席から1席単位で席を選んで購入することができた。
自分が確保したP3/P4ブロックにはまだけっこうな空席があり、4人並びでもチケットはゆうゆう取れた。

代金は、1枚£47。
Klookとの差額は£7程度だった。
旅行出発直前まで忍耐強く粘れば、4人で6,000円の節約だったということになる。
まあすべては結果論だし、今回は「安心料」だったと思うしかない。

フラムについて

さてフラム Fulham についても述べておきたい。
この地名についてはこれまでの生涯で少なくとも2度、耳にする機会があった。

1度は、稲本潤一選手がプレーしたチームとして。
当時たいへんな盛り上がりだった2002年日韓ワールドカップ、それと前後して稲本選手は海外にわたっていた。
ワールドカップで活躍した稲本選手がその後フラムでプレーしていたことは、それほどサッカー好きでないわたしでも認知していた。
ちなみに当時日本では「フルハム」と発音されていた気がする。

もう1度はもっと古くにさかのぼるが、三浦良枝さんの「フルハムロード」(正式にはフルハムロード・ヨシエ)だ。
いわゆる「ロス疑惑」が騒がれた当時私は中学生で、事件のことはよく覚えていないけれど、「フルハムロード」の名前はなぜか憶えている。

「フラム」が「フルハム」のことであり、ロンドンの地名であることは今回の旅行をきっかけに、初めて知った。

フットボールクラブとしての「フラム」については、予備知識ゼロだった。

プレミアリーグについてもまったく知らなかった私だったけれど、さすがに「プレミアリーグと言えば、三苫がブライトンだよね」くらいの知識だけでイギリスに乗り込むわけにはいかない。
私はX(旧Twitter)やフラムFCの公式サイトでしっかり予習をしておいた。
それにしても、リーグ開幕直前までレギュラークラスの選手が出て行ったり入ってきたりしているのは素人から見ると不思議な感じだった。

特に注目されていたのはエミール=スミス=ロウ選手。
アーセナル(アーセナルは地名ではない、というのも今回知った)の、というかイングランドの若きスターという位置づけのようだ。
フラム移籍に向けてX界隈はかなり盛り上がっていた。

それとイウォビ選手(ナイジェリア)。
彼のことはまったく知らなかったけれど「ジェイジェイオコチャの甥っ子」だそうだ。
ジェイジェイオコチャは聞いたことがある。
それこそ日韓ワールドカップあたりの、ナイジェリアが強かったときの主力選手だったはずだ。

そのほか、チームにはブラジル、スペイン、アメリカなど多彩な国の選手が集まっていた。
イギリスの選手のほうがむしろ少ないくらい。
ロンドンの下町?にあるクラブチームがこんなにも国際色豊かで、そしてそんな顔ぶれでもリーグでは中位、もしくは降格争い、くらいの下馬評。

そういうところがプレミアリーグのすごさなんだろうな、と思った。

クレイヴン・コテージにやってきた

2024年8月24日、当日は朝から雨だった。
私たち一家にとってはロンドン滞在の最終日。
ロンドン自然史博物館のあるSouth Kensingtonから74番のバスに乗ってFulhamにやってきた。

競技場が近づくにつれ地元のフットボールファンらしきおっさんや子供連れがバスに乗り込んできた。
とはいえKingswood Roadバス停で下車したのは10人ちょっと。
このバスはスタジアムへの主要アクセスではなかったようだ。

住宅街のなかを数分歩くと、目の前にレンガ造りの建物が現れた。
クレイヴン・コテージだ。

私はすっかり浮き足立ってしまった。
あわあわと写真を数枚撮って、入場ゲートに向かう。

カバンの持ち込みはA4サイズ以下のものに制限されている。
BAG LANEというところでチェックを受けてからゲートをくぐる。
そこで渡されるリストバンドがOKの証となる。

スタジアム内に入ると、スタンド下にたむろしているおびただしい数のイギリス人たちをかきわけるように、スタンドまであがった。

コンパクトというか、ぎゅっと凝縮された感じの、美しいスタジアムだ。
遠くジョニー・ヘインズスタンド後方に木製の座席があるのが見えた。

ただ、スタンドはまだ閑散としていた。
私たちはもう一度スタンド下に戻った。
アルコールはスタンドに持ち込めないとのこと(食べ物はOK)で、観客は試合開始までスタンド下でビール呑みながらおしゃべりを楽しんでいるのだ。
私たちもそれに倣うことにした。

Fulham's Signature Sausage Roll  6.50
Willy's Pies Minced Beef & Cheddar 7.00
Camden Hells 7.20 ⇒6.00
Total £19.50
※支払額は£21.00だった(謎)


雨は本ぶりで、おしゃべりエリアの3割くらい(外壁側、ビールや食べ物を置ける台が据え付けられているあたり)は雨ざらしになっていた。
そのぶん凝縮された混雑のなかで、試合開始前のひとときを楽しんだ。

そのとき、何人かの観客が手にしているA5サイズくらいの冊子に気づいた。
しまった、Matchday Programmeを購入するのを忘れていた。

慌ててスタンド下のエリアをうろついてみたが、どこにも売っていない。
皆スタジアムに入る前に入手しているようだ。
ゲート前まで行ってみたが、もう出られない。
今日クレイヴン・コテージに来た「証し」がほしい私にとって、プログラムは最上にして唯一のスーベニアなのに。。
私は途方に暮れた。

その後、ハーフタイム中に(私はトイレに行っていた)スタンド最前列でスタッフが手売りしていたとの家族の目撃情報もあったが、けっきょく入手することができないまま試合を観ることになった。

FULHAM 2-1 LEICESTER CITY

試合は、とても楽しかった。

試合内容についてくわしく語るのは「ぼろ」が出るので控えるが、一言でいえば「大接戦のすえ、ホームチームが勝利した」これに尽きる。
スポーツ観戦の印象など、けっきょく応援していたチームが勝つかどうかがすべてだと思う。

それにしてもゴール裏の席は、試合全体が手に取るように見えた。
スタンドとピッチが近く、スタジアム全体が凝縮されていて一体感がある。
素晴らしいスタジアム体験だった。

件のエミール・スミス・ロウ選手が目の前のゴールに向かってシュートを決めた瞬間の感激は、私たちのイギリス旅行の記憶としてたしかに胸に刻まれた。
イウォビ選手の決勝ゴールは対岸側へのゴールだったが、スタジアム全体の盛り上がりぶりがすごかった。
ラグビー選手のようなガタイのアダマ・トラオレも印象深い。
また、すぐ左側に陣取っていたレスター・シティサポーターの大応援、大歓声も記憶に残る。

クレイヴン・コテージは、プレミアリーグは、イギリス人たちの感情の発露、それがカタマリになって爆発するド迫力の場だった。

決勝ゴールを決めたイウォビ選手の豆粒姿

Sat 24 Aug 2024 Kick Off:15:00 
Fulham 2-1 Leicester City
18’ Emile Smith Rowe
38’ Wout Faes
70’ Alex Iwobi

Craven Cottage, London
Att: 25,401 Ref: Darren Bond
ハイライト(フラムFC) https://www.youtube.com/watch?v=jafBPCwCbfw

試合終了後はただちに次の観光スポットに移動する必要があったが、私は諦めきれなかった。
どうしてもOfficial Matchday Programme を手に入れたい。

スタンド最前列にいるスタッフに訊いてみたら、「外で手に入る※」と言われた。
スタジアム外に出てみたが、行くべきところがわからない。
出入口を見守る警備スタッフに訊ねても「おれにはわからない※」「中に入るな、入りたければ火曜日のスタジアムツアーに参加しろ※」と、取り付く島がない。
チケットオフィスに行ってみたが、プログラムは手に入らなかった。
しかしスタッフが「オフィシャルショップで売っている※」と教えてくれた。
それとて「おれらは関係ない、とりあえずどっか行け」という意味だったのかもしれないけれど、もうその情報にすがるしかない。

※これらの会話は私の脳内変換によるものであって、本当にそう言っていたかは今となってはわからない。

オフィシャルショップ前には絶望的に長い行列ができていた。
しかし、プログラムを手に入れる最後のチャンスはここにしかない。
私は家族に駄々をこね、彼女らを道連れにして行列に並んだ。

40分待って店内に入った。
店内も大混雑で、人をかきわけ歩きまわったがプログラムを見つけることはできなかった。
私はなかば諦めつつ、せっかくショップに入ったのでレプリカジャージを1枚買うことにして、今度はレジまでの大行列に並んだ。
ジャージに選手名と背番号をプリントしてくれるコーナーもあったが、そこも大行列でさすがに断念。
そしてようやくレジにたどり着いたとき、レジ横にプログラムが並べられているのを発見した。
プログラムは£4、合計£87也のお買い物を終え店の外に出た。
ちょうど18時で、試合終了からすでに1時間が過ぎていた。

今回の旅行中でもっとも時間を「浪費」したのはこのプログラム購入騒ぎだっただろう。
それでも私は大満足だった。

思い出の品

帰りは、最寄りのPutnyBridge駅まで20分弱歩いた。
今回の旅行中で最も強いゲリラ豪雨のような雨が降ってきた。

クレイヴン・コテージでよかった

やっぱりクレイヴン・コテージは素晴らしかった。

古き佳き部分を上手に残しつつも、古いものを古いまま使うだけではなく快適さもしっかり追求している。
日本でいうと阪神甲子園球場の印象に近い。
もちろん甲子園球場も、私の大好きなスタジアムだ。

ただトイレはびっくりした(笑)
ステンレスの流し台のような、「一体感のある」トイレはイギリスでは標準的かもしれないけれどやや抵抗感があった。
ただしそれは新しさ・古さとは関係なく、文化の問題だろう。

スタジアムは、ただ古びていれば良いわけではない。
人々は重要文化財的伝統建築を鑑賞しにきているのではなく、フットボールを観るためにここに来ているのだから。
そういう意味では間違いなく、クレイヴン・コテージは素晴らしいスタジアムだった。
さすがに超一流のプレミアリーグのスタジアムだと思った。

クレイヴン・コテージに来て良かった。

Putny Bridge Station

最後にこれだけは言っておきたい。
Putny Bridge駅は最高にかっこいい駅だった。
駅舎も素晴らしかったし、ホームに通じる階段も木製で素敵だった。

こんないい駅がロンドン中のいたるところにあるのだろうか?
だとしたら、ロンドンはなんと素敵な場所なのだろう!


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