我が家のイギリス旅行記#18 ロンドンのパブとビール
2024年の夏休み、家族で出かけたイギリス旅行の思い出をここに記す。
今回は、ロンドンで訪れたパブ、イギリスで呑んだビールについて記す。
パブめぐりが目当ての旅ではなく、家族旅行の行程の合間をみて行けるだけ行ったという感じなので、宿泊したホテル「シタディーヌ バービカン」周辺の店ばかり。
1.Bishops Finger
ビショップスフィンガー、スミスフィールド Shepherd's Neame 20AUG2024
ロンドンに着いて最初に訪問した店。
ちょっとさばけた感じの「おねえさん」とやさしい「おにいさん」のおかげで、パブ初訪問の緊張がほどけた。
平日の19時まえで、周辺のパブは立ち呑みでビール片手におしゃべりに興じる人たちが店の外まであふれていた。
いっぽうこの店は内外とも立ち呑みスペースがほとんどなく、席について食事とともにビールを楽しむのが主流な、レストランのような店だった。
ひとくちにパブといっても、どうやらいくつかジャンルがあるようだ。
私たち家族も、ロンドンで最初の夕食をゆったり楽しむことができた。
ビールは、SHEPHERD NEAME の SPITFIRE AMBER ALEをいただいた。
このパブはSHEPHERD NEAME というビールメーカーが経営している。
イギリスのビールメーカーは多くのパブを所有しており、多くのパブはどこからのビールメーカーの傘下にいる、ということらしい。
経営する、所有する、というのが直営のことを言っているのか、フランチャイズなのか、そのあたり詳しくはよくわからない。
店の名前はバラバラだし、看板やのれんが掲げられているわけでもないから目に見える統一感はない。
呑めるビールだけは明確に決められているのと、あとWebサイトは統合されている、という程度に思えた。
あるいは見えないところに厳しいレギュレーションなどあったりするのだろうか?
ちなみにSHEPHERD NEAMEは、イギリス最古のビール醸造所だそうだ。
2.Hands and Shears
ハンズアンドシアーズ、スミスフィールド 22AUG2024
事前リサーチでもっとも行きたかったお店。
スミスフィールド肉市場の南側の路地にある。
バービカン駅から歩いて3分、宿泊ホテルからは5分ほど。
正面から入るとカウンターがある。
訪れたのは21時すぎで、客足はやや落ち着いていた。
そのかわり滞在中のお客はそれぞれだいぶできあがっていて、店内外ともとても賑やかだった。
ハンドポンプに貼られた銘柄札のデザインから、当てずっぽうにビールを選んで指さし注文。
「LANDLORD」というビールをいただいた。
LANDLORDは2023年イギリスのカスク・エールビール販売額ランキング(飲食店チャネル)で2位となったメジャーブランドだった。
(当然、そのときは知らなかった)
イギリスのカスクエールビールでは「Sharp's Doom Bar」「Timothy Taylor's Landlord」「Greene King IPA」「Fuller's London Pride」が4巨頭のようで、2022年・2023年ともにベスト4を占めている。
TIMOTHY TAYLOR'S 醸造所についてはこちら。
食べものの提供はあまりなさそうだった。
カウンターに保温ケースが置かれていたくらい。
「BEERPIG」と書いてあり、豚肉の唐揚げみたいなやつが入っていた。
3.Westminster Arms
ウェストミンスター アーム、ウェストミンスター Shepherd's Neame 22AUG2024
ウェストミンスター寺院のすぐ目の前。
観光の合間の休憩をかねて入店した。
ここもSHEPHERD NEAMEのパブ。
ここでは「MASTER BREW」という銘柄をいただいた。
4.Ye Olde Mitre
ジ オールド マイター、ファリンドン Fuller's 23AUG2024
ここはガイドブックにも出ている有名店だ。
Farringdon 駅から西に5分ほど歩く。
HolbornとBarbicanとのちょうど中間点くらい。
明かりの少ない広い通りに、店に行くだけのためにある狭い路地の入口がひっそりとある。
路地の奥にたくさんの席が並び、少なからぬお客が静かに語らっていた。
店内も観光客らしきグループなどでそこそこの賑わい。
Fuller's のLONDON PRIDEをいただいた。
Fuller's のパブはイギリスの最大手チェーンと思われる。
The Churchill Arms、The Doveといった超有名店もこの系列になる。
そしてFuller's はアサヒビールが2019年に買収している。
そんなこんなを感じさせない、古き佳きロンドンのパブの雰囲気を味わうことができた。
8月のロンドンの夜は暑いでも寒いでもなく、路地に出て歴史ある建物から灯りがもれてくるのを愛でながらビールを呑むのは心地よかった。
5.Sutton Arms
サットンアームズ、クラーケンウェル 23AUG2024
Farringdon 駅の北側、地図で調べたが明確なエリア名がわからない。
ファリンドンでもなくバービカンでもなく、クラーケンウェルからも外れていそうな場所。
ロンドンは住所が通り名で記載されるが、明確に町名で区切るということはやっていないのだろうか?
カウンターでビールを注文すると、スタッフが「どちらが良いですか?」と、ふたつの容器を提示してくれた。
ひとつは他のパブで使われているようなタンブラーグラスで、もうひとつはゴツゴツしたジョッキだった。
なんとなく普通で良いかなと前者を選択したが、せっかくだからジョッキでも良かったかもしれない。
彼はビールを注ぎながら「どこから来ましたか?日本ですか、わたしはオーストラリア出身です」と話しかけてくれた。
パブのカウンターのスタッフで業務連絡以外の話をしてきたのはビショップスフィンガーのおじさんとこのお兄さんだけだった。
私は外に出て、また建物を愛でながらビールを呑んだ。
ここもまた、古くて美しい建物だった。
店の部分が赤く彩られ、花が飾られていたが、派手さはなくどことなく気品がある。
Anspach & Hobday という醸造所による、「the Sutton Session V2 」という名のビールをいただいた。
Anspach & Hobdayはロンドンにある創業10年くらいの小さな醸造所。
このパブとのコラボレーションでSutton Session が制作されたそうだ。
というわけで、ここはいわゆる「独立系」のパブである。
誰の制約も受けずビールのラインナップを決められることが、独立系パブの良いところだそうだ。
店内に戻り、カウンターの彼になにか食べ物があるかと聞いてみた。
すでに22時をすぎ厨房はもうしまっていたがカウンターの奥にクリスプの種類がたくさんあった。
どんな味があるかを彼が教えてくれたがやっぱり聞き取れず、最後に聞こえたソルト&ビネガー味を購入。
絨毯の敷かれた薄暗い店内には20人近いお客で賑わっていた。
といって騒々しいわけでもなく、みな穏やかに談笑している感じ。
なんとなく、伝統的なロンドンのパブという雰囲気を感じた。
この旅行で訪れたパブのなかでここがいちばん好きだと思った。
6.Fox and Anchor
フォックスアンドアンカー、ファリンドン 24AUG2024
この旅最後の晩餐は、Farringdon 駅近くのパブでいただいた。
このパブもどちらかといえばレストラン系のお店。
間口は狭いが奥行きがあった(奥のほうをちらっと覗いてみただけだが空席はなく、戻ってカウンター前の席にかけた)。
着席したらおねえさんが注文を取りに来てくれた。
なので、カウンターで当てずっぽうにカスクを指差して注文する楽しみは奪われてしまった(笑)
もちろん、銘柄を言ってくれるのでそのなかから選べばよいのだけれど、それは「聞き取ることができれば」の話でもある。
ここでは、GUINNESSをいただいた。
ここまで自然な感じで「カスク」という言葉を使ってきたけれど、ほんとうは今回の旅を機に「カスク」と「ケグ」のことを知った。
酒はビール一択、てゆうかビールしか呑めない、そんな私なのに恥ずかしながらどちらの言葉も知らなかった。
詳しいことは、こちらのサイトで学んだ。
とにかくロンドンではできるだけカスクビールを注文した。
たしかに「キンキンに冷えた」ビールではなかったが、「ぬるい」というほどでもなく、多少冷たさが足りないかなあという程度だった。
気候のせいか、旅先だったせいか、
ロンドンで呑むカスクビールはどれも美味しかった。
7.Rising Sun
ライジングサン、スミスフィールド Samuel Smith's 24AUG2024
最後の最後にもうひとパブだけ行った。
スミスフィールド肉市場の南側、Hands and Shearsのある路地にもう一軒、気になるパブがあり、その店がこの旅最後のパブになった。
旅行出発前、私は「行きたいパブリスト」を作成していた。
ここも早いうちにエントリーされていたが、次第に軒数がかさみ、あらかじめ優先順位をつけておく必要が生じた。
私はGoogle Mapのクチコミを熟読した。
この店には630件ほどの評価が寄せられていた。
ポイントは4.3と、それなりに高かった。
しかしながら、「裏通りにひっそりと佇む素敵な小さなパブ」「昔ながらのパブの雰囲気のある場所」「素晴らしい小さな隠れた宝石」といった好意的なコメントに混じって、ときおり極端に低い評価がついているのが気になっていた。
それでも私は「クチコミは文句を言いたい人がわざと悪しざまに書くものだ」と考えていた。
高評価のコメントと掲載されている写真が醸し出す伝統的なパブの雰囲気にも惹かれ、ここにはぜひ来ようと決めていた。
21時半を過ぎて入店した。
店内に先客は3組ほどで、全体的にひっそりした雰囲気だった。
BGMが流れていないことやTVがないこともその理由と思われた。
それは、このパブを経営するSamuel Smith 醸造所の考え方であるようだ。
カウンターで若い女性スタッフからビールを購入した。
SAMUEL SMITH EXTRA STOUT。
広い店内の中ほどにある大きめの6人掛けテーブル席の一隅についた。
歴史を感じさせるこげ茶色の世界を見渡しながら、私はビールを呑んだ。
ここも良いパブだな、と思った。
ふとみるとカウンターに並んだケグのランプが消えていた。
22時が近くなり、閉店作業が進んでいるようだった。
先ほどの彼女がカウンターを空にして片づけ作業に没頭していたが、やがてその作業範囲がホールにも及んできた。
彼女は客のいないテーブルの上に丸椅子をひっくり返して載せていく。
さすがに客のいるテーブルには手を出さないが、その隣の空きテーブルに対しては容赦ない。
さすがに居心地がわるくなってきた。
店に備えつけのゲームで遊んでいたカップルもやれやれという感じで顔を見合わせ、帰り支度をはじめていた。
ビールを一気に呑み終え、店を出た。
彼女こそ、クチコミで語られていた「ご本人」ではなかったかと思う。
もしそうだとしたら・・・ロンドンのパブの良い思い出ができたものだ。
居酒屋とパブとの違い
パブでの振る舞い方についてはガイドブック等でも書いてあるからここでは割愛するが、日本の居酒屋とロンドンのパブとの違いについて、2つ気づいたことを書いておく。
ひとつは、パブは酒を飲むための場所ではないということだった。
これもガイドブック等に書いてあることだが、実感した。
パブはおしゃべりをする場所であって、そのお供にビール(と、ときどき食べ物)がある。
しかし、おしゃべりのお供は必ずしもお酒でなくて良いのであって、ソフトドリンクの品ぞろえが豊富なだけでなく、ソフトドリンクを片手におしゃべりにふけることもまた当たり前、という雰囲気が確実にあった。
そのかわり、ロンドンの町には喫茶店的なものがあまりなかったように思う(Pret A Mangerは別として)。
もうひとつは、ある意味ひとつめと同じ意味だが、ひとりで酒を吞む場所ではないように感じた。
日本の居酒屋は「酒」を目的にひとりで訪れる人が多い気がするが、パブはやはり目的が違うのだ。
私はほぼすべてのパブをひとりでビールを呑むために訪れたが、そういうお客はあまり見かけなかった気がする。
その他のビール
La Bottega Bocca In Cielo
バービカン 22AUG2024
BIRRA MORETTI
イタリアンレストランなので、置いてあるビールもイタリアのものだった。
LONDON COLISEUM
WestEnd 21AUG2024
CAMDEN PALE ALE
Craven Cottage
Fulham 24AUG2024
CAMDEN HELLS LAGER
British Airways
20AUG2024 BA008 /25AUG2024 BA007
BREWDOG SPEEDBIRD OG
世界のどこでも、ビールはうまい。
そして、イギリスで呑むビールは最高にうまかった。
#19(完結編)につづく。