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住宅資金貸付債権がサービサーに譲渡されてしまっていてもリカバリーできるか【住宅資金特別条項付き個人再生⑥】

 住宅ローンの支払いが滞った状態が係属すると、住宅ローン債権者である金融機関がサービサーに債権譲渡する場合があります(下記リンクの「債権譲渡」に該当する場面です。)。

 このような状況に陥ってしまった後でも、債務者は住特条項付き個人再生を行い、自宅を残したまま他の再生債権を圧縮することが可能でしょうか。

 なお、単に住宅ローンの支払いが滞っただけで、債権譲渡や保証会社による代位弁済がなされていない場合については、こちらの記事をご覧ください。

1 保証会社が代位弁済した場合は原則リカバリー×

 類似の事案として、住宅ローンの支払いが滞ると、保証会社が住宅ローン債権者に対して代位弁済(簡単に言うと、本来の債務者の代わりに返済すること)をすることがあります。
 この場合、住宅ローン債権者が有していた債権は消滅し、保証会社が債務者に対して求償債権を有することになります。

 このような代位弁済の事案においては、民事再生法198条1項により、原則として住特条項付き個人再生を行うことはできないとされています。
 一括返済を求めることができる地位にある求償債権者に、住特条項による分割払いを強いることは酷であると考えられているためです。

(住宅資金特別条項を定めることができる場合等)
第百九十八条 住宅資金貸付債権(民法第四百九十九条の規定により住宅資金貸付債権を有する者に代位した再生債権者(弁済をするについて正当な利益を有していた者に限る。)が当該代位により有するものを除く。)については、再生計画において、住宅資金特別条項を定めることができる。ただし、住宅の上に第五十三条第一項に規定する担保権(第百九十六条第三号に規定する抵当権を除く。)が存するとき、又は住宅以外の不動産にも同号に規定する抵当権が設定されている場合において当該不動産の上に同項に規定する担保権で当該抵当権に後れるものが存するときは、この限りでない。

 ただし、保証会社が代位弁済をしていても、民事再生法198条2項所定の要件を満たせば例外的に、住特条項付き個人再生が認められます。これを「巻戻し」事案と呼びますが、「巻戻し」については、また別の機会に説明をしたいと思います。

2 保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合において、当該保証債務の全部を履行した日から六月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、第二百四条第一項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について、住宅資金特別条項を定めることができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

2 サービサーに債権譲渡をしていてもリカバリー〇

 民事再生法では、代位弁済の場合と異なり、債権譲渡の場合については特に定めはありません。
 そして、サービサーへの債権譲渡は、民事再生法198条1項にて定められている「民法第四百九十九条の規定により住宅資金貸付債権を有する者に代位した」場面には該当しません。

 そのため、住宅資金貸付債権がサービサーに債権譲渡されているだけであれば、住特条項付き個人再生を行うことは可能です。


 短かったですが、今回の記事は以上です。

 記事をご覧いただきありがとうございました。
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