申立ての準備(その1)【中小企業の自主再建型民事再生】
本稿では、自主再建型の民事再生手続の一連の流れを、
① 民事再生手続きを選択するに至るまで
② 民事再生申立ての準備
③ 民事再生手続開始決定
④ 財産評定・債権調査
⑤ 再生計画案を作成し認可されるまで
⑥ 再生計画の遂行・終結
の6つの場面に分けて解説しています。
今回から、②民事再生の申立ての準備について解説をします。
1 今回の内容
「②民事再生の申立ての準備について」では、法令上どのような資料の提出が求められているのかを確認し、そのうちいくつかの資料について、解説を加えていきます。
2 必要資料一覧
民事再生規則14条1項は、再生手続開始の申立書に添付する資料として、次の資料を求めています。
第14条 【再生手続開始の申立書の添付書面・法第二十一条】
1 再生手続開始の申立書には、次に掲げる書面を添付するものとする。
① 再生債務者が個人であるときは、その住民票の写し
② 再生債務者が法人であるときは、その定款又は寄附行為及び登記事項証明書
③ 債権者の氏名又は名称、住所、郵便番号及び電話番号(ファクシミリの番号を含む。)並びにその有する債権及び担保権の内容を記載した債権者の一覧表
④ 再生債務者の財産目録
⑤ 再生手続開始の申立ての日前三年以内に法令の規定に基づき作成された再生債務者の貸借対照表及び損益計算書
⑥ 再生債務者が事業を行っているときは、再生手続開始の申立ての日前一年間の再生債務者の資金繰りの実績を明らかにする書面及び再生手続開始の申立ての日以後六月間の再生債務者の資金繰りの見込みを明らかにする書面
⑦ 再生債務者が労働協約を締結し、又は就業規則を作成しているときは、当該労働協約又は就業規則
ですので、民事再生申立ての準備として、以上の資料が必要になります。
3 資金繰表
民事再生規則14条1項の資料の中で、最も重要な資料は資金繰表です。
資金繰表については、過去1年分の「資金繰実績表」と申立後6か月分の「資金繰予定表」を提出することになっています。
⑥ 再生債務者が事業を行っているときは、再生手続開始の申立ての日前一年間の再生債務者の資金繰りの実績を明らかにする書面及び再生手続開始の申立ての日以後六月間の再生債務者の資金繰りの見込みを明らかにする書面
「資金繰実績表」は、再生債務者(民事再生の対象となる債務者のことを「再生債務者」と呼びます)の通常のキャッシュフローを掴むために有用な書類です。
また、再生手続開始の申し立ては、資金がショートする前で、できるだけ現預金の残高が大きいタイミングで申し立てるのが良く、そのタイミングを計るためにも日繰りの資金繰実績表が有用な書類となります。
「資金繰予定表」は、民事再生手続を取った場合に、資金繰りが維持できるのかを裁判所や監督委員が確認するために必要な書類であり、極めて重要な書類です。
といいますのも、民事再生手続開始の申立てをすると、新規の融資は受けられなくなります。
また、信用不安によって取引を打ち切る顧客が出ますし、そうすれば、売り上げが減少します。
さらに、それまでのように掛けで仕入れをすることは難しく、現金で仕入れの支払いをしなければならないことが多くなります。支払の繰り延べによる資金ショートの回避もできません。
資金繰予定表は、このような民事再生申し立てにより生じるであろう売上減少や、仕入代金等の現金決済や支払いサイトの短縮などを考慮して作成します。
裁判所や監督委員は、このようにして作成された資金繰予定表により、申立後資金繰りが維持できるのかを判断します。
今回は、再生手続開始の申立書に添付する資料及び、その中で最も重要な資料である資金繰表について解説しました。
次回は、申立書に添付する資料のうち、債権者一覧表や非常貸借対照表・財産目録について解説をする予定です。
記事をご覧いただきありがとうございました。
私にご相談いただけるようであれば、下記リンクを通じてご連絡下さい。オンラインでのご相談も承っております。