保証会社の代位弁済後も諦めない【住宅資金特別条項付き個人再生⑧】

  住宅ローンの支払いが滞った状態が継続すると、保証会社が住宅ローン会社に代位弁済をするということがあります。

 保証会社による代位弁済が行われた場合も、代位弁済後6か月以内に再生手続開始の申し立てをしたなど、諸要件を満たす場合には、住特条項付き個人再生が可能となりますので、あきらめないでください、というのが今回のテーマです。
 一定の要件を満たした場合に、代位弁済が無かったものとして取り扱われることになりますので、「巻戻し」と呼ばれています。

 なお、単純な住宅ローン滞納の場合や住宅ローン債権がサービサーに債権譲渡をされてしまった場合については、こちらの記事をご覧ください。

1 「巻戻し」の要件 

 巻戻しについては、民事再生法198条2項で、次のように定められています。

(住宅資金特別条項を定めることができる場合等)
第百九十八条 
2 保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合において、当該保証債務の全部を履行した日から六月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、第二百四条第一項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について、住宅資金特別条項を定めることができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

 ⑴ 要件1:保証会社による代位弁済であること

 代位弁済の主体は、保証会社でなければならず、親族等が代位弁済を行った場合は巻戻しは認められません。

 なお、ここでいう「保証会社」とは、債務の保証を業とする者に限られます(民事再生法196条3号)。

 ⑵ 要件2:代位弁済から6か月以内に再生手続開始申立を行うこと

 時間的制限がなく巻戻しが認められてしまうと、住宅ローン債権者や保証会社の法的地位がいつまでも不安定になってしまうからです。

2 「巻戻し」の効果

 巻戻しにより、保証会社の代位弁済によって消滅した保証債務が復活します。

 その結果、各関係者の関係は次のようになります。

 ⑴ 住宅ローン債権者と保証会社との関係

 保証会社の代位弁済が無かったことになりますので、住宅ローン債権者は、保証会社に対し、代位弁済時に受領した金銭等を返還(不当利得の返還)しなければならなくなります。

 ⑵ 保証会社と再生債務者との関係

 代位弁済が無かったことになり代位弁済前の状態が復活しますので、保証会社が再生債務者に対して取得した求償権が消滅し、保証会社は、再生債務者の保証人の立場に戻ることになります。

 ⑶ 住宅ローン債権者と再生債務者との関係

 代位弁済が無かったことになり代位弁済前の状態が復活しますので、住宅ローン債権者が再生債務者に対して住宅ローン債権を有することになります。

 この住宅ローン債権は、住特条項により権利変更を受けることになります。


 今回の記事は以上です。
 住宅ローンの支払いが滞り、保証会社が代位弁済をしてしまったとしても、素早く再生手続開始申立てをすることで、住宅を失わずに個人再生を行うことができる場合がありますので、あきらめずに弁護士に相談をしてみましょう。

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