住特条項付き個人再生が利用可能な建物の範囲は【住宅資金特別条項付き個人再生④】
建物には、店舗兼居宅や、一時的に他人に賃貸しているもの、二世帯住宅など、様々なバリエーションのものがあります。
住宅ローンを利用して購入し、一家族で居住しているというような、典型的な場面でなければ住特条項付き個人再生の対象とならないのでしょうか。
1 住特条項付き個人再生の対象となる「住宅」の要件
民事再生法196条1号では、住特条項付き個人再生の対象となる「住宅」の定義について、次のように定めています。
(定義)
第百九十六条 この章、第十二章及び第十三章において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 住宅 個人である再生債務者が所有し、自己の居住の用に供する建物であって、その床面積の二分の一以上に相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるものをいう。ただし、当該建物が二以上ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主として居住の用に供する一の建物に限る。
この条文では4つの要件が定められています。
① 個人である再生債務者が所有する建物であること
② 自己の居住の用に供する建物であること
住特条項付き個人再生は、個人の再生債務者が、生活の本拠である住宅を手放すことなく経済的再生を図るための手続きです。
そのため、再生債務者自身の居住用建物でなければなりません。
③ 建物の床面積の2分の1以上の相当する部分が専ら自己の居住の用に供されるもの
建物の一部が再生債務者自身の居住のため以外に利用されていた場合、一律に住特条項付き個人再生の対象外としてしまうと、住特条項付き個人再生の趣旨を全うできません。
住宅ローン減税を認める基準や、金融実務上住宅ローンとして取り扱われる基準を参考に、このような要件が設けられました。
④ ①~③の要件を満たす建物が複数ある場合には、債務者が主として居住の用に供する一の建物であること
生活の本拠である住宅を手放すことなく経済的再生を図るという住特条項付き個人再生の趣旨を全うするためには、主たる居住用建物1つについてのみ住特条項付き個人再生の適用対象とすれば足りるために定められた要件です。
以下、住特条項付き個人再生の対象となる建物かどうかの検討を行います。
2 店舗用建物(×)や店舗兼居宅(条件次第で〇)
専ら事業のために利用される店舗用建物は要件②満たさないため、住特条項付き個人再生の対象となりません。
他方、店舗兼居宅は、③の要件を満たしさえすれば、対象となります。
3 転勤中一時賃貸している物件(条件次第で〇)
要件②が問題となる場面です。
要件②は、「自己の居住の用に供する」と定めているだけで、「現に自己の居住の用に供している」とは定めていません。
転勤という一時的な事情により、住特条項付き個人再生の対象から除外されてしまうと、この制度の趣旨が全うできません。
そのため、他人への賃貸が転勤に伴う一時的なものであり、転勤終了後に自己の居住の用に供すると認められれば、住特条項付き個人再生の対象となります。
賃貸借契約書の記載内容などから、判断されるようです。
4 投資用物件(×)
要件②を満たさず、住特条項付き個人再生の対象となりません。
5 二世帯住宅(条件次第で〇)
二世帯住宅は、③の要件を満たしさえすれば、対象となります。
今回の記事は以上です。
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