ついに出会えた! むかし家今松師匠の「笠碁」

・・・年の瀬にあわてて更新中・・・
今日は2023年6月の記録です

わたしが今松師匠を聴いてみたいと思ったきっかけの噺、「笠碁」。SNSを始めて数年来、とてもお世話になっている方が、馬石師匠の「笠碁」はおそらく今松師匠からだと教えてくださったのがきっかけでした。

へ〜そうなんですね〜なんて、ふんふん頷きながら、「今松……? 聞いたことないひとだ!!」と調べたのが最初の最初。そこからずっと師匠の「笠碁」を聴いてみたいと思っていて、ようやく今年、叶いました!

昨年、鈴本さんの主任興行の際にネタ出しも出されていたのだけど、日程が合わず伺えなくて。でも、ネタ出しめがけて出会いに行くより、偶然出会えた方が何倍も嬉しい。

この人を聞きたい(159回)今松ひとり会(その34)

柳家小もん 夏泥
むかし家今松 笠碁

今松 盃の殿様

20230610
新宿無何有

前方が小もんさんだったのも嬉しかったこの日。夏にはやっぱり、小里ん御一門の「夏泥」を聴かなくては!

https://twitter.com/akari__sano/status/1667486552057081861?ref_src=twsrc%5Etfw
今松師匠はほんとに目がおきれい、ですよねえ。


大好きな噺のひとつ「笠碁」。
仲直りしたいのに自分からは言い出せない、意地っぱりなご隠居さんたち。素直になれないだけで、肚のなかは同じ。互いに顔を合わせたら、あとはもう流れと勢いで仲直りできてしまうのが、たぶんこれまでわたしの観てきたスタンダード。

今松師匠版は「仲直りできなかったらどうしよう」という片側の不安も描かれるんだなあ……。
ヘボの旦那もザルの旦那も、互いの気持ちが同じであることは観客のわたしには見えているけれど、相手の気持ちなんて、本当のところは目には見えない。そっか、仲直りって本来カンタンなことじゃないよね、なんて当たり前のことを思い出す。大人になると、仲違いなんて錚々起こさないし、関係じたいを手放すことも多くなる。

たとえ仲直りできたとしても、許してくれたように見えて、もう二度と心を開いてもらえないこともあるし、深い関係になるほど、火種が気づかぬうちに大きくなっていて、仲直りどころか修復不可能になることもある。あの日の高座を思い返しながら、人と向き合うことの難しさにふと思いを馳せる。

当日の感想に、ザルの旦那のことを「菅笠の旦那」と書いているということは、おそらくヘボ(と言われてしまう方)の旦那が相手に「ザル」と言い返していなかったからだと思うんだけど。
わたしは、そこにも二人の人物の差が描かれているような気がして。

ヘボの旦那が「仲直りできるのかな、どうしよう」とじめじめ不安になっているのに対して、とりあえず飛び出してみちゃう菅笠の旦那。言葉を重ねて悶々してしまう側と、おおざっぱで、言葉よりもフットワーク軽く行動が先に出る側のデコボコ感も感じられたのも、可笑しかった。

いい年をしたお爺さんが世にも低レベルな諍いを繰り広げるこの噺のなかで、ふたりがある面では似たもの同士でありながらも、その性格の違いまで、さりげなく、けれども几帳面に描きだされた今松師匠の「笠碁」。もう幾度でも、出会いたい。

なにより、今松師匠版のヘボの旦那は、ケンカをするたびにきっと同じように不安になって思考が口から全部ダダ漏れていそうなところが、なんともチャーミング。師匠が演るから一層かわいくて、必死で謝る姿と「来てくれて嬉しい」と顔を綻ばせる様子に、こちらまでほくそ笑んじゃう。

「仲直りできてよかったね……!けどこいつら、絶対またすぐケンカするだろ!」という後味の「笠碁」は、とっても好みな「笠碁」です。病めるときも健やかなるときも、一生仲良くしてなさい!


今松師匠から受けとった馬石師匠の「笠碁」も聴いてみたいな。
そして、雲助師匠はやはり「笠碁」をおやりにならないから、折に触れて「初霜」をかけられているんだなぁ、これが雲助版「笠碁」なのかもしれない……などと思いました(憶測)。


* * *

「笠碁」は小里ん師匠版と白酒師匠版も、特に大好き!

《白酒師匠版》

《小里ん師匠版》は小三治師匠のエピソードしか残せていない……😭
Twitterのどこかに感想が眠っているはずなので、また聴く機会があったら改めて書き留めておきたい一席です。

おしまい。

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