感情と思考の記録 2025/02/12
最近、何かに対する『怒り』と『優しさ』が混ざり合いながら生活していると感じている。その影響か、苛立つまでの沸点が少し高くなった気がする。ただ穏やかに生きていたいという思いもあるが、ん?と感じてしまうことが立て続けに起こっていたからである。誰かを傷つけないという前提のものではあるが、自分を大切にするために僕の心を土足で上がろうとする人との関係性を、やむなく切る判断をした。
男性として生活していく中で感じる不安、その倍以上の不安を女性は感じている。それがさらに身に染みるように実感したのは、高野ひと深さんの『ジーンブライド』という漫画作品を読んでからだ。
近頃のテレビは、大きくひっくるめて『男』と『女』の問題がひっきりなしに報道されている。Xを開いてもほぼ同じような内容のことか、テレビで報道されるよりももっとリアルな現状が流れている。なんだか胸が張り裂けるような気持ちになりながら親指で流し、いやいや他人事ではないよなとも思う。
もう昔のようなちょっとした娯楽だったSNSとはかけ離れてしまった。今言った言葉でさえも平成の匂いがすると言われてしまうんだろうか。もう令和では何も許されなくなるんじゃないかと思う。
いつからこんな息苦しい世の中になったんだろうか。コロナウイルスが全世界を襲い、やっとマスクを外して生活できるようになったのに、その当時と何も変わっていないんじゃないかという気さえしてくる。間違いを正すことは絶対にした方が良いけれど、少しの失敗すらも許されないのだろうか。絶対的な完璧を世の中は欲している。
完璧じゃない人間たちが、完璧な人を欲している。
ジーンブライド/高野ひと深
この漫画作品を買おうと思った最初のきっかけは、ヤマシタトモコさんの『違国日記』を特集していた『ユリイカ』という雑誌の中で、ヤマシタさんと高野さんの対談を読んだからだ。高校生の頃、高野ひと深さんの漫画作品『orange』を全巻買って読んでいた。とても大好きな作品だから友人におすすめしていて、友人に貸したら借りパクされて返ってこなくなった。数年後に聞いたら間違って自分の漫画だと思って売ったらしい。許せないな…、今思い出して無性に腹立ってきたぞ…。返せよ…。(逸れました、ごめんなさい)
ユリイカの特集でも、ジーンブライド2巻の巻末対談でも、ヤマシタさんと高野さんは怒っていた。鬼のように怒り狂っている訳じゃなく、いつ沸騰してしまってもおかしくない温度を長い間ずっと保ち続けていた。それはジェンダー問題や女性蔑視、性差別など、主に女性が受けてきた被害、精神的な攻撃など、男性が受けるダメージの数十倍の傷に対して。
ジーンブライド1巻、73pの言葉が全てなような気がして、ここに載せることにする。
いいよね。あんたらはあんたらの事だけ考えてりゃいいんだから。
あたしらはあんたらの事まで考えておかないと、死ぬかもしれないっていうのに。
最初に読んで感じたことは、なんて僕は愚かなんだろうかと思った。この世に生を受けた時から男として育って生き、女性のことを何も知らなかったんだと実感した。まず前提として、男として生きていく中で、男しか分からない事や、男同士でしか理解できない事はある。逆も然り。
その上で、女性が普段の生活の中で何を感じながら、何を考えながら、何が危ないか、常にセンサーを張りながら生きているか。それを最初に知るきっかけになったのは恋人と一緒に住みだしてからだ。
恋人が女性として生きて理不尽に感じた事や、同年代の男性と女性との違いなど、事あるごとにそういった話を聞いて、その度に憤りを感じながら、胸が締め付けられる思いをする。例えば、電車に乗り込もうとした時、後ろからおじさんがわざと肩をぶつけてそそくさと電車に乗り込んだこと、丈の短いスカートを履いている時の向かい側から歩いてくる男性の視線、性の話やプライベートの話を軽々しく聞いてくることなど、数えてみればいくらだってあった。
一方で、そういった立場を利用し、武器にしながら上に登っていく女性もいる。東京で活躍している友人が実際にそう言っていたことも思い出したが、よほどの強さと覚悟がないとやってられないだろう。全ての女性が彼女のように強く生きられる訳じゃない。
フェミニズムの話題になると男女どちらも激しい主張を展開し、主語も大きく、切先の鋭い刀を振り回しながら自分の正義を貫いて戦っている。その光景を側から見ながら、他人事ではないと思っている。この話題も長い間続いて、同じ言い争いが何度も流れてきて、それぞれが主張して、責任を押し付け合って、なんだかもうこの世界が息苦しい。
このテーマを取り扱う時は、慎重にならなければならない。女性にも男性にも必ず傷があって、古傷が痛みだすようなことがあってはならないからだ。僕は女性からいじめられたこともあるし、嫌な事を言われたこともある、僕が受ける傷はどうなってもよいが、他の人にはそうなってほしくない。特にこれから社会に出ていく学生には。
男性として生きている僕が理解しなければいけないのは、女性は僕たち男性よりもずっと怖い思いをしているということだ。
ただ、男だからといって、何かあれば守れる訳じゃないし自衛出来る訳ではない。逃げ出す人もいるだろうし、突っ走って誰かを守ろうとする人もいるだろう。
女性が街を歩いている時、電車に乗っている時、お酒を飲んでいる時。全ての生活の中で感じていることは僕たち男性とは全く違うということを理解しなければいけない。もっと怖い思いをしているし、もっと気を張りながら生きている。
恋人が普段感じていることを教えてくれるたびに、これまでの自分の行動や言動を振り返っては猛省している。同時に、ただ自分の傷のことも忘れないようにしている。
個人的に一番大切だと思うのは、押し付けてはいけないことだと考えている。しかし、分かり合えないと思ってしまっては、また同じことがずっとこの先も続いてしまう。時には、諦めることも必要だとも思う。でもまた同じ目に遭ってしまうことはあってならない。
理解される為には理解しようとしなければいけない、お互いが尊重しあわなければいけない。そしてその為には、それぞれが学ばなければいけない。結果的にどうすればよいのか。何度も考えたけれど、模範解答は存在しない のだとも思う。なぜなら、男女それぞれが正しいことをしていたとしても、受け取る側によって変わってしまうから。必ずどこか穴を探して、足を引っ張ろうとする人がいる。言葉も行動も、全ては意味を成さない。根本的な恐怖も、根底にある怒りも、誰にも拭うことは出来ない。
もはや社会全体を変えなければいけないのかもしれない。全てを変えなければいけない。しかし変えた先でも同じことは起こり続ける可能性もある。
こうして書いてみたけれど、すごく難しい問題だ。この話題を見るたびに、僕は恋人を全力で守らなきゃなと思う。僕の身の回りに居てくれている人たち全てが、傷ついてほしくない。僕の手の届く範囲の人は全力で守りたいです。
自分という軸をしっかり持って生きていきたい。ただ押し付けてはいけない。最後にはいろいろ考えると人ってめんどくせえ…という結果になってしまう。そうならない為に、手が届く範囲の人は全力で守っていきたい。
ヤマシタトモコさんの新作読み切り漫画『死神』のリンクを貼って締めたいと思います。他人事で済ますような人にはならないように努めていきたい。
『2』の部分は特に。