Stiff-Leg DeadliftとRDLの違い

今回は、テーマにあるようにStiff-Leg Deadlift(スティフレッグデッドリフト)とRomanian Deadlift(ルーマニアンデッドリフト:以下RDL)の違いについて、特に動作の違いについてNSCA[第4版](以下:エッセンシャル)を元に考えていきたいと思います。


Stiff-Leg DeadliftとRDLは名前が異なるのに動作が似てる。"何が違うのか?”そう考える人も多いいのではないかと思います。
また、明確にエクササイズ動作の違いを理解している人はどのくらいいるのだろうかと疑問に思いました。私も過去にこの違いについて質問されたことがあります。

「そんな名前なんてどっちでもいいだろ!」と考える人も少なくはないと思いますが、Plank(プランク)のように、Front Bridge、Prone Bridgeのようにただ名称が違うエクササイズではありません。エッセンシャルには明確に分かれて記載されています。

では実際に何が違うのか、また動作の違いによってどういう効果(適応)の違いがあるのか考えていきます。

ちなみにbe-LEGENDのサイトには、2つの違いは膝関節の角度の違いによってStiff-Leg Deadliftの方がハムストリングスに大きな刺激が入ると記載されてます。

これについては何か違う気がします。


それを踏まえて考えていきましょう!! 
Let's Go!!


1.Stiff-Leg Deadlift、RDLとはどういうエクササイズなのか

基本的な知識として、どちらのエクササイズも主にPosterior Kinetic Chain(ポステリアキネティックチェーン)といわれる人の体の後面(背部側)の筋群を動員するエクササイズです。

目的は様々ですが、股関節のヒンジ動作を獲得・学習させたり、障害予防(肉離れ予防など)の為に実施させることがあるエクササイズの一つです。私の経験上、Stiff-Leg Deadliftをエクササイズとして実施している指導者は少ない気がします。RDLは多く見かけますが、、、。

2.Stiff-Leg Deadliftの動作

【開始姿勢】
・デッドリフトの動作を行ってバーを床から上げたら、膝をやや屈曲〜中程度屈曲し、動作の間、この姿勢を維持する。
・1回ごとに、この姿勢から動作を開始する。

【降下局面】
・このエクササイズは、ニュートラルな脊柱の姿勢をとることによって初め、それから股関節を屈曲して、完全にコントロールしながら(訳注 :バーとウェイトの重量にまかせてしまうのではなく、伸張性筋活動を十分活用しておろしていく。この局面がこのエクササイズの最も重要な局面)、 床にむけてバーをゆっくりと下ろしていく。
・バーベルを下ろす間、膝は開始姿勢と同様にやや屈曲~中程度屈曲した状態を保ち、背中を伸ばすか、やや反らせて、肘を完全に伸ばす。
ウェイトプレー トが床につくまでバーを下げる。その前にニュートラルな姿勢が保持できなかったり、膝が伸びきったり、踵が床から浮いたりしたらその時点で止める。

【上昇局面】
・股関節を進展し、立位の開始姿勢に戻る。
・膝を軽く曲げたまま、体幹はニュートラルな脊柱の姿勢を保つ。
・体幹を後方へ動かしたり、肘を屈曲させない(訳注:この様な代償動作が起こるのは、技術的な問題、筋力に対して重量が重すぎるなどの原因が考えられる)。


3.RDLの動作

RDLはNSCA[第4版]から追加されたエクササイズです。
諸説あるようですが、1990年頃、ルーマニアの当時ウェイトリフターであるNicu VladとそのコーチのDragomir Cioroslanによって名付けられたエクササイズです。

【開始姿勢】
クリーングリップあるいはスナッチグリップを用いてバーをプロネイティッド(クローズド)の形で握る。
・デッドリフトの動作を行ってバーを床から上げたら、膝をやや屈曲~中程度屈曲し、動作の間、この姿勢を維持する。
• 1回ごとに、この姿勢から動作を開始する。

【降下局面】
・このエクササイズは、バーを大腿部に接触させたまま、(バーを脚に沿わせて下ろしていくときに )(身体全休のバランスをとるために)休幹は前方へ傾け、股関節を屈曲して腰を後方へ引くこと によ って始め流。
・股関節を屈曲させる際、両膝はやや屈曲を維持する。
・体幹をしっかりと保持し、脊柱をニュートラルにし、肩はバーベルが膝蓋腱の位置に並び、体幹が床と平行になるまでの間、(肩甲骨の)内転を維持する。(注意:もしスナ ッチグリップをこのエクササイズで用いる場合、選手の形態によって体幹は平行よ りやや下になる)(注意:もしスナッチグリップをこのエクササイズで用いる場合、選手の形態によって体幹は平行よりやや下になる)
・動作全体を通して、正常な前弯姿勢を維持する。

【上昇局面】
・股関節を進展し、体幹を上げて直立した開始姿勢に戻る。
・膝を軽く曲げたまま、体幹はニュートラルな脊柱の姿勢を保つ。
動作全体を通してバーベルが大腿部に、常に、接触していることを確認しながら行う
・背中を下進展したり肘を屈曲させない。


4.動作からの考察

2.3とエッセンシャルに記載されている動作をを紹介しました。
また、文言として異なる点、特に重要な点を太字にしています。

①開始ポジション
②降下・上昇局面の動作
③膝関節の違いによってハムストリングスへの刺激が変わっているのか
④②から目的別にエクササイズを選択する



①開始ポジション
「クリーングリップあるいはスナッチグリップを用いてバーをプロネイティッド(クローズド)の形で握る」とあるようにRDLは、Clean(以下:CL)、及びSnach(以下:SN)の習得・学習(分習法)またはそのポジションでの筋力強化のために考案されたエクササイズといえます。

②降下・上昇局面の動作
Stiff-Leg DeadliftとRDLの動作の文言の一番の違いは「バーを大腿部に接触させたまま」「動作全体を通してバーベルが大腿部に、常に、接触していることを確認しながら行う」という点です。この文言はRDLのみ記載されています。

①でも書きましたがRDLはCL、SNの為のエクササイズです。そのため、できるだけバーベルを体の近くを通さなければならないOlympic liftingに繋げるためにこのように記載されています。なぜ体の近くを通すようにしなければならないのかは別の機会に紹介したいと思います。

また、バーベルを大腿部の近くに通すということはモーメントアームも短くなるため、Stiff-Leg Deadliftより重量を扱うことができます。

③膝関節の違いによってハムストリングスへの刺激が変わっているのか
これについては半分"Yes"半分"No"と言ったところでしょうか。というのも、文言に膝関節の違いは記載されていないのでNoですが、Stiff-Leg DeadliftはRDLより、大腿部、脊柱のモーメントアームが長くなるのでeccentric(伸張性収縮)な筋活動がより強調されます。またはモーメントアームが長くなることで、膝関節の角度を保持できないが故に起こっているものだと考えられます。

④②から目的別にエクササイズを選択する
・Stiff-Leg Deadliftを選択する場合
③にも記載しましたが、Stiff-Leg DeadliftはRDLより、大腿部、脊柱のモーメントアームが長くなるのでeccentric(伸張性収縮)な筋活動がより強調されます。そのため、ハムストリングス、背部の筋肉へより仕事(刺激)を与えたい、筋力強化を図りたい場合は、Stiff-Leg Deadliftを選択すると良いと思います。またより刺激を高めるために下腿を後方(膝を引く)にさせる場合が多いです。

・RDLを選択する場合
Olympic liftingをエクササイズとして導入する、筋力が低い(初心者や女性)、ヒンジ動作を学習させるなどの場合はRDLを選択すると良いと思います。
Olympic liftingは鉛直方向へのパワー発揮を必要とするため、下腿は地面に対して垂直に保つように指導します。

5.結論

今回はStiff-Leg DeadliftとRDLの違いについて、動作の違いという観点から説明させてもらいました。Stiff-Leg DeadliftとRDLの両者の違いは、モーメントアームの違いです。ここまで書いておきながら、そこまで真面目に考えることではなかったのかなと思いますが、この2つの種目の違いがわからない指導者やトレーニーの方の参考になればと思います。また、指導者はエクササイズをただのエクササイズとしてなんとなく選択するのではなく、エクササイズをより理解した状態で対象者にアプローチしてほしいと思います。

6.余談

・その1
姿勢を保持に必要な背部(主に脊柱起立筋)を鍛えるために、Good morningというエクササイズが選択される場合がありますが、股関節からのモーメントアームが長いのため、重量のプログレッションが難しい種目といえます。同じバーベルを扱う種目を選択するのであればStiff-Leg Deadliftを選択する方が良いと思います。

・その2
Stiff-Legged DeadliftとStiff-Leg Deadlift、edがつくかつかないか。
どちらが良いのでしょうか。ちなみにエッセンシャルはedはつきません。
edがつく場合は、脚をStiff(硬く)した状態でというニュアンスが含まれているのではないかと考えられます。
ベーシックエクササイズくらい全世界で共通の名前にしたらいいのにと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

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