✈️怒涛の緊迫感『非常宣言』│映画感想&非常宣言って何?
新年早々、痺れる作品を堪能してきました。
私ごとですが、週末フライト予定があるんですよね。
明らかに本作は飛行機に乗るのが怖くなる作品…
フライトが終わってからの鑑賞にすべきか…
と一瞬だけ悩みましたが、面白さの勝利。観て良かったです。
ということで、今回は『非常宣言』の感想です!
◾️作品概要
タイトル:非常宣言
監督:ハン・ジェリム
主要キャスト:ソン・ガンボ、イ・ビョンホン、チョン・ドヨン等
◾️鑑賞評価★&コメント
ということで、私との相性は良い作品でした!
リアリティとフィクション感がほどよく同居したエンターテイメント性抜群の作品です。
・安定した演技力のある俳優陣や脚本は言わずもがな
・コロナ禍を経験した私たちだから感じる恐怖を孕んでいること
・リアリティを追求するだけでなく、フィクションであることをポジティブに使っている
特に最後の点については、ドラマチックな後輩との出会い、だらけた夫だったソン・ガンホの刑事としてのキリついた表情への変貌、女性大臣が勇猛果敢に解決に向けて進む姿…と、数え出したらキリがないほど、これは現実ではない展開だよな、、、と思わされる点が間々あります。
といっても、リアリティの薄い点は狙ってのことでしょう。やや皮肉めいたところがエンターテイメントとして、よくできているなと。
本当に「よくできている」んですよね。
コントロールを失って360度回転する飛行機内を描くスリリングとリアリティの同居も素晴らしいです。
例えば、↓の画像がその瞬間です。機体が傾き、乗客たちも身体を振られるシーン。嘘がなく、観ている私も緊迫感に包まれました。
それもそのはず。
実際の飛行機(切抜き)に乗客役の人々を乗せ、機体を360°回転させるという荒技で表現しているのです。
CGが発達していない時代ならともかく、現代で実際に回転させるケースは多くないのではないでしょうか。
このての話で有名なのは、昔だと『2001年宇宙の旅』、比較的新しいところだと『インセプション』や『インターステラ』がよく挙がりますが、ダイナミックな表現はそれだけで心躍りますよね。
翻って本作ですが、このダイナミックな表現ももちろんですが、全体のディティールへのこだわりを感じます。
ぜひ、劇場で臨場感溢れる体験をしていただきたい作品です!
◾️実は身近にある"非常宣言"
『非常宣言』では、飛行機内でウイルス感染の恐怖が迫るだけではなく、正体不明のウイルス保菌者を自国に着陸させられない、と着陸拒否される場面があります。
それに伴い、迫る飛行機の燃料切れの恐怖。
感染者と非感染者が同居する機内で乗客同士も軋轢を生み、感染の恐怖、墜落の恐怖、空の上を恐怖を抱えながら漂う中で、最終手段として"非常宣言"を布告し、着陸を試みるも…という事態の連続です。
“非常宣言"とは、実際どういったものなのか? 映画の中でも解説はされていますが、ここからは"非常宣言"にフォーカスを当てていきたいと思います。
・非常宣言とは?
"非常宣言"と言われてもピンと来ない方も多いかもしれませんが、いわゆる"エマージェンシー宣言"のことですね。
映画冒頭でも↓の字幕が表示されますが、着陸の優先権を有するものです。本来なら…
この辺りも皮肉がかっているのが本作の魅力のひとつですね。そして、コロナ禍を経験している私たちにとって決して縁遠いものでもないという恐怖。
・飛行機の着陸優先順位
飛行機は基本的に、高度が低い方が先に着陸する優先権を有しています。
ただし、特例となるのが“非常宣言“を布告した機体です。
・あの時も…
海外だと頻繁に起こることなのか、と思って調べたところ、日本でも2021年11月にANAが布告していたりと、耳馴染みがないだけで空では起こり得る事態のようです。
私も飛行機には何度も乗っていますが、こういった事態に出会ったことはなく(出会いたくもないですが)、やはり自分ごとにならないと気にしないものですね。
そして、3.11の際にも“非常宣言(=緊急事態宣言)"が布告されていたもようです。
日本への着陸を予定していた14機もの飛行機が震災による空港閉鎖により発していたとのこと。おそらく、日本に着陸できなかった機体は近隣諸国の空港に優先的に着陸させてもらったのでしょう。
この時、もしも諸外国が着陸要請を断っていたとしたら、燃料切れの恐怖に乗客たちは苛まされていたと思うと、空の上というのは何か起こった際のリカバリーができない密室・・・怖いですね。。。
というところが、本作で遺憾なく発揮されています。
◾️おわりに
今回は、『非常宣言』の感想から、“非常宣言"を少し深ぼってみました。
ちなみに、本作パンフレットに寄稿している元機長によると、「本来なら、○○の○○という異常事態になったのだから、その時点で管制官に「非常宣言」を発出して最も近い空港へ緊急着陸するのが基本である」とのこと。
なるほど。確かにですね。
一方でやはり本作はそういった虚構に、圧倒的な演技、映像、演出によってリアリティを与えているのが印象的であり、私は没入感を得られたように思います。
近年の韓国映画はドラマ性だけでなく、資本も大量投入してリアリティを追求した作品が多くなってきていますね。今後への期待も高まります!
では、また次回!